マチネの終わりに

マチネの終わりに著者 平野啓一郎
出版社 毎日新聞出版

毎日新聞の連載小説だったそうだ。

王朝小説、教養小説、と、言う気配で、初めはなかなか読み進めるのに時間がかかる。天才ギタリストの男38歳と、海外の通信社勤務でイラクで取材活動をする女性40歳、の、恋。
うっかりすると、まあありがちな恋愛小説、ロマンス小説のような設定だけど、品格というものか。一度の出会いで惹かれあう二人。女性にはアメリカ人経済学者のフィアンセがいる。お互いが運命の出会いと感じながら、ちょっとしたすれ違いから突然の別れに至り。

私はクラシック音楽にも世界の歴史にもおよそ教養が欠けているのがまことに残念。「ヴェニスに死す」やリルケの「ドゥイノの悲歌」はギリギリ私の守備範囲のはずだが、我が家にあるような気がしていたリルケは見当たらない。ああ残念。

クロアチア人の有名な映画監督である父と、長崎出身の母との間に生まれ、コミュニケーションのためにいろいろな言語を身に着けることが必要だった洋子。その母が日本を飛び出し父と結婚することになった訳。背景が何層にも描かれていく。
スランプに陥っていたギタリスト、イラクで九死に一生を得、PTSDに苦しむジャーナリスト。

帯には、“結婚した相手は、人生最愛の人ですか?”とある。

例えば福永武彦のいくつかの小説とか、吉田健一が大人同士の恋愛を描いた小説(名前を忘れた)とか、ちょっと思い起こす。教養豊かな大人たちの恋愛。

ラストシーンは美しい、けれど、大人たちはその後に地味な様々をこなさなければならないよね。
まあ途中からぐんぐん読んでしまう小説でした。

 

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