ゆうじょこう

著者 村田喜代子

新潮文庫

明治36年、鹿児島の硫黄島から熊本の遊郭・東雲楼に売られてきた15歳の少女イチ。やってきた娘はまず、肥えた男から股を割られ、性器を入れられ、10数えて引き抜かれ、評価される。

それぞれに新しい名前を 与えられ、寝床における性技を始め、女紅場と呼ばれる娼妓の学校で修身・読書・習字・作文・活け花・裁縫を習う。

小鹿という源氏名を与えられたイチは、鹿児島弁をしゃべる。「こけー、けー」はここへ来い、「こー、けー」は飯をこの茶碗によそってくれと言う意味。けー は来いと言う意味のほか、食えと言う意味にもなる。九州でも熊本と鹿児島では方言はだいぶ違う。で、私が小学校6年で転校した薩摩半島の南端ぐらいの小学校の校歌に、硫黄島 と言う歌詞が出てきたのだが、開聞岳のどっち側のどのあたりに目を向けるとそれが見えたのか、知らないまま卒業したなあ。地続きのその南端の地区でも、鹿児島市の方言とはずいぶんと違った。島だと、もっと違うんじゃないか、と鹿児島育ちならではの疑問がよぎる。まあ、薩摩硫黄島出身の知り合いはいないので確かめようがないのだが。

経血を自力で止める方法を習うシーンがあるのだが、それはまことでござりましょうか?

天は人の上に人を造らず と説いたはずの福沢諭吉が、芸妓などについては人外としてさげすむ文章を書いていることに、女紅場の教師、鐵子さんは激しく欺瞞を覚える。士族に生まれながらこの世界に入ることとなった鐵子さんであった。

がんばって人より働いて、体を壊して亡くなる女、親に転売され、よその廓に移る女、花魁なのに子を宿して、稼業をやめる道を選ぶ女。そうは言っても、東雲楼は環境の良い方なのだろうと察せられる。

16の春、イチはほかの女郎たちと脱走、小舟で海へ出る。薩摩の女3人は済州島を目指す、海女になるために。

福岡生まれの作家による、骨太な九州女たちの物語。表紙が、ゆうじょこう と言うひらがなのタイトルに対して、なんだ?と思われたが、読み終わるとまあ合わないでもない気がする。

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