街とその不確かな壁

著者 村上春樹

新潮社

村上春樹ファンではないので、必ず読んでいるファンの方々には失礼申し上げそうでござるよ。初めに謝っておこう。

とは言え、この作品についてはとても好きですよ。きみ と呼ばれる16歳の少女が見る夢の世界、本当の自分がいるという世界の表現、ごく初めの方のそのあたりから、美しい、と思い、読み進むにつれ、うまーい!と思った、ってのがまた失礼でありますね、世界のムラカミだっての。

壁 に閉ざされた世界に、影を持たない(影と引き離された)人が住んでいて、人のほかには短角獣がいるだけ、という世界の夢を繰り返し見ていた少女。いつしかその壁の中に入り込んだ男。図書館に勤めて、人の夢を読む仕事に就くことになる。男が17歳の時に出会った少女が、成長した姿でそこにいるのだが、彼女にはその別世界での記憶は無い。

留め置かれている場所で、少しずつ弱っていく自分の影。瘦せこけた影と脱走しようとして、最後の最後に影だけを別世界に帰す。

はずだった、のに、男の実体が、現実世界に戻っているところから、第二部。それまでの仕事を辞め、地方の図書館に職を求める。元の館長は、70代半ばでベレーをかぶり、なぜかスカートをはいている男性だった。あれこれ教えを請いながら館長としての役割をこなしていく。が、元館長の子易さんは、もう死んでいる人だった。自分と、以前から務めている司書の女性と、もう一人、サヴァン症候群かと思われるいつも図書館に来てあらゆるジャンルの書物を読んでいる少年だけに、その姿が見えている。少年が神隠しのように突然姿を消す。子易さんの墓前でひとり壁の向こうの世界の話をしていた時に、それを聞いていて、そこの地図を描いた少年。イエローサブマリンのヨットパーカーを着て。

そして第三部。

私とは?時間とは?みたいなことなんだろうなあ…ということぐらいしか、その内容、テーマのようなものはわからないままだが、それはそれとして、良い小説だ。と、思ったムラカミ素人のわたくしでした。そのうち、関連があるという『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』も読もうと思っています。

コメント (2)

atcon2023年6月14日(水曜日) at 10:50 AM

村上春樹の初期の頃エッセイを数冊読んで、それは面白かったのだけど、、、
面白いのに村上春樹のファンにはなりませんでした。
その後「ノルウェーの森」を読んで、それが好きになれなくて、以来関心をなくしてしまったのですが、、、
「街とその不確かな壁」は美しいと思える表現があるって聞くと、ちょっと興味惹かれます。
Amazonお気に入りに入れます!

aar2023年6月14日(水曜日) at 8:45 PM

私は「1Q86」で、世の中には絶対悪というものがある、みたいな話を私が読まなくていい、と思ってしまったのでしたが。
『パパラギ』なんて本の名前が出てきて、あったなー、など思う同世代なのでありました。

コメントをどうぞ

コメント(*必須)

CAPTCHA


*