このあたりの人たち
著者 川上弘美・
文春文庫
川上弘美作品をどう紹介?解説?するか?。読後、要するに好きか全く興味が無い(さっぱりわからない)かどちらかになるのだろうと思う。
短編、ごく短い話ばかりの、最初の『ひみつ』は、欅の木の下に白い布が落ちていて、めくるとこどもが現れ…という話。こどもは大きな風呂敷ほどの布の下に住んでると言う。次の日にも会ったこどもが、成長しないこどものまま30年い続けている、という。こどもは変わらないが語り手は変わっていく。そういう、それだけの話。
時代がいつなのか、ちょっと混乱する。『スナック愛』では、朝の7時半から開いているその店にお客はほとんど来ない。オーナーのおばさんは「フランシーヌの場合」「白い蝶のサンバ」「ざんげの値打ちもない」を歌う。レトルト食品を出す店に、町の人たちは決して行かない。「蠅の王」ではこの町のギャンブルを丸じいという男が取り仕切っていて、十匹並べた豚にそれぞれ何匹の蠅がたかるかを競うのだ(私は昔々ゴールディングの“蠅の王”を読んだ記憶はあるが、蠅が群がる豚の頭が出てくる話だったことすら覚えていなかった)。『拷問』では政府が転覆。革命軍がNHKを占領し、革命軍の作ったビデオを流し続けるのでためしてガッテンもサラメシも見られない。このあたりでは時間は流れるのでなく跳ぶ、または飛ぶのか。
解説を作家の古川日出男が書いている、その中で『おばあちゃん』という話の中に語り手が小学校低学年だった時に、まだ40代半ばだった人をおばあちゃんと呼んでいて、その人の家には自分より年少の男の子がいるのを目にした、と語られていること、に、ついて。その男の子は白い布の子か?するとそこで語り手の交代が行われているのか?という考察がなされている。私はなーんにも気づかず読み過ごしてしもうたよ。
たまに読むたびこの作家の作品が好きだと思うが、その割に少ししか読んでいない。この妙な話を、もう少し読み込んでみよう。ふわっと読み進むだけでは気づかないことがまだあるだろう。
調べたことがすべて記憶に残るものなら…。今朝の新聞で、高校入試に、まさに茨木のり…