菜食主義者

著者 ハン・ガン

出版社 クオン

ハン・ガンを今まで3冊かな、読んできたが、4作目…う、何?

ブラジャーを着けたがらない、ということはあったが、夫にとってごく平凡な、良い妻だった。ある日、夢を見た、と言って、一切の肉料理を放棄するようになった。血塗られた夢たち。眠ると血まみれの夢を見るから眠らなくなる。

無理やりに娘の口に肉を詰め込もうとする父親。家族。

野菜しか食べられなくなった、植物になりたいと思う女の『菜食主義者』、その義兄である舞台?映像?の演出家であるらしい男が主役の『蒙古斑』、演出家の妻、菜食主義者の妹による『木の花火』の連作。

阿部公房を思い出すような世界の飛び方。だがある種の韓国映画の世界でもあるなあ。

なるほどこの作家はノーベル賞受賞者なのだ、と。

儒教的家父長制の残る韓国、その抑圧、無理解、などで説明してもあまり意味は無いかもしれない。

『蒙古斑』の話の中で、ある意味救われそうになる。バタバタと叩き壊されていくが。私にはこの話が一番、何がしかわかる気がした。

作家の後書きに、これを書いていた頃のメモが紹介されている。慰めや情け容赦もなく、引き裂かれたまま最後まで、目を見開いて底まで降りて行きたかった。もうここからは違う方向に進みたい。

作家の父親も韓国では著名な文学者・漢勝源であり、中上健次と親しかった、のだそうだ。なんと中上健次。

 

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