文庫化で再読。できるだけ同じ作家の作品は取り上げないよう心がけたいのですが、柴田よしき作品感想文2作目です。
RIKOシリーズ・花咲探偵シリーズの読者ならKOされてしまったに違いない、山内練、と麻生龍太郎の、冤罪に始まる出逢いからの物語。
よく出来ているんですよこの物語。緑子や花ちゃんを知らなくても、この物語だけで成立しています。伏線の張られ具合は、あの香港映画『インファナルアフェア無間道』並(すみません、知ってる人しかわからないお話で)。やくざ・警察・男と女・男と男・男妾・恋愛・情事・冤罪・・・。
山内練、朝日に透けると金髪に見える柔らかい癖毛を持つ見事に美しく恐ろしく酷薄な経済やくざ、に、まだなりきっていない、時期の物語。育ちのいい少年がなぜそうなっていったかが明かされる物語。そこに何重もの異なる人々の思惑が絡んでいた…。マイノリティに生まれついた人間たちの物語。
再読でいっそう酔わされました。山内、麻生、それに初めに殺害されて発見される韮崎ほか、実在の俳優でキャスティングを考えることが大変難しい、けれどもつい考えてしまう、深く捩れてしかも魅力的な男たち女たちの造形です。