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ラスト、コーション

ファイル 80-1.jpghttp://www.wisepolicy.com/lust_caution/
監督 李安(アン・リー)
出演 トニー・レオン タン・ウェイ ワン・リーホン
 
 1940年前後、日本占領下の香港の大学生演劇サークルが、抗日運動に参加する。1942年の上海、女スパイとなって、日本軍に加担する特務機関の男に近づき・・・。
 もちろんその時代の大学生は現在とは比べ物にならない知性を持つはずである、が、いつの時代もどこでも、時代が大きく変化する時に学生が、ただ頭で考えて実行し、それを利用する大人がいるものだというようなことも頭をかすめ、ちょっと苦笑してしまうシーンがあったのは、全共闘と呼ばれる人々を知っている世代だからかも。
 なんだろう、何がそんなに二人を惹きつけた?何ということも無いよね、恋に落ちるときはお互いの魂が磁力を持つのだろう。失敗すれば死が待っているからこその高まりもあるだろう。ほとんど痛ましいほどの性愛のシーンが展開される、のでありますが、まるで淫らに感じる余裕もない緊張感を、久しぶりにお目にかかるボカシがむやみと。

 トニーさんよくここまで、と思いますが、ではトニーでなかったら誰か?考えても誰も浮かばない。女スパイを演じるタン・ウェイはいい女優です。王力宏(ワン・リーホン)が、歌手の芝居ではない、俳優になっています。

 エドワード・ヤン監督の映画によく出ていたクー・ユールンとか、あれえ、ドゥオ・ゾンファってそんなにおじさんになってたんだ、とか、脇に(台湾映画をよく見ている人なら)あとで気付いてびっくりの俳優さんが出ています。

 この映画、前売りを買ったら指輪が付いてきたんだよね、しかも色を選べるの。その意味が、なーるほど、でありました。
 Lust色欲です。Lastではないよ。

MOVIE
comment(0) 2008.02.03 22:52

精霊の守人 闇の守人 夢の守人

ファイル 79-1.jpg
作者 上橋菜穂子
新潮文庫

 『獣の奏者』と同じ上橋菜穂子による作品、精霊の守人はTVでアニメ化されているのでご存知の方も多いでしょう。

 たとえば、先にこの欄で紹介した小説『千年の祈り』は昨年日本で出版された文学の中で一番優れているものかも、と言うくらいの評価をしています。

 それはそれとして、私は、どちらかと言えば小説より物語が好きであり、こういうオリエンタルファンタジー系はもう大好きなんですよ。
 短槍使いの女バルサを主人公とするシリーズ。元々は児童文学として出版されているけれど、子供にだけ読ませておくなんてそーんなもったいない、いかに呪術師だの精霊だの出て来ようとも、これはどこの国にもありえた歴史、リアリティあるせつない物語です。この世には目に見える世界のほかに精霊の世界があり、呪術師はその両方をまたいで存在することが出来る、と言う設定。
 父王によって亡き者とされかかった新ヨゴ国皇太子チャグムを、バルサが救う「精霊の守人」、バルサを育ててくれたジグロに着せられた汚名を濯ぎ、故郷カンバル国を救う「闇の守人」、あまりにつらいことがあると夢の国に入り込んで目覚めなくなってしまう、肉体を花に乗っ取られる事態との戦い「夢の守人」までが文庫化されているが、単行本はまだまだ先があるのみならず、チャグムを主人公とする『~の旅人』シリーズもある…
むむむ。

BOOK
comment(0) 2008.01.27 23:41

ゆれる

ファイル 78-1.jpg
http://www.yureru.com/splash.html

監督 西川美和
出演 オダギリジョー 香川照之

 DVD鑑賞。
 ゆれる と言うタイトルが・・・吊り橋がゆれる、心が揺れる、記憶が、揺れる・・・のですよ。

 地元で地道に働く兄、都会でカメラマンとして華やかに暮らす弟。母の法事で帰郷した弟、幼馴染の智恵子と三人で渓谷に出かける。兄は高所恐怖症なのだ。吊り橋から智恵子が落ちる。その場から離れていた弟がその様子を目撃し・・・。
 
 女性を挟んで兄弟の心が、揺れる。女性を挟んで、兄弟の葛藤を挟んで、見たものが何だったか、そこにあったのはどんなことだったか、心がゆれ、確かなはずの記憶がゆれる。そして・・・。

 オダギリジョーと香川照之の、丁々発止の演技一番勝負、うーん、やっぱり香川照之の勝ちかな。
 きちんと誠実に作られた良い作品ですが、もう一度見かえすのはつらい。機会があるなら数年先にしたい。

 それにしても。あの最後のシーン、どうしただろう。あの兄は。

MOVIE
comment(0) 2008.01.27 22:59

靴に恋する人魚

ファイル 77-1.jpg
http://www.ffcjp.com/kutsu/index.html
監督 ロビン・リー
出演 ビビアン・スー ダンカン・チョウ

 日本版ホームページ可愛いよ!ちょっと重いかも。
 日本では、あーそんな子いたねー、と言う状態かな?ビビアン・スー主演、30過ぎて相変わらずとても可愛らしくチャーミング。

 足の悪いちいさな女の子がいました。絵本が好きなその子に、パパとママは「人魚姫」の絵本を見せたがらなかったのです。人魚姫は、足を得る代わりに声を失う悲しいお話だから。
 女の子は、手術して歩けるようになると、靴をたくさん集めるようになりました。靴が大好きでした。
 飛び出す絵本を作る出版社に勤めていたある日、歯医者に行き、それから歯医者さんと恋をして、結婚しました。そして・・・。

 『アメリ』に似た色彩。風変わりな人々。絵本のような映画。私は大好きですよ。本当に大切な物は?と言う作品。

 制作に参加しているアンディ・ラウがナレーション?気が付かなかった。

MOVIE
comment(0) 2008.01.23 21:36

我的中国

著者 リービ英雄
出版社 岩波書店

 アメリカ生まれ、父親が外交官で、台湾・香港・日本と暮らす。プリンストン大学と新宿を行ったり来たり・・・って!
 われてきちゅうごくファイル 76-1.jpgとわざわざルビを振ってある。ウオダチョンクオと中国語読みすれば私の中国と言う意味になるが、われてき には、今の若い日本人が使う“私的には”のようなニュアンスが強いのか?私の目から見た中国 のような。

 2004年発行だから、驚くべきスピードで発展変化している現在の中国とはすでに大きく違っているだろう。そのころでもかつての中国を知っている(外国人は1人で旅行できなかったようだ)人にとっては変化著しい中を、日本語で考えながら台湾での子供時代に憶えた中国語で会話し、時にインテリの中国人と英語で会話し、古都開封で、はるか昔ユダヤ人が住み着いて中国人になった跡を旅し(著者の両親はユダヤ系・ポーランド系)、西洋人が中国人となった歴史があると読者の目を開かせる。
 中国在住のアメリカ人、と自己紹介すると、大概はアメリカ人の部分にしか注目されないらしいが、アメリカ人であることと日本在住であることの両方が、かつての敵国とみなされることもある。

 中国人が英語で書いた小説「千年の祈り」中国で仕事をすることを綴った「日記2」に続いて、日本在住アメリカ人が日本語で書いた中国滞在記を読んでみました。さまざまな視点から、中国を、或いは日本を、感じますが・・・あー、それにしても、英語・中国語の両方を使いこなせる、使いこなせないまでも日常会話に問題は無い、というレベルの人が羨ましい。
 

BOOK
comment(0) 2008.01.20 14:27

ALWAYS続・3丁目の夕日

$FILE1ファイル 75-1.jpg
http://www.always3.jp/
監督 山崎貴
出演 堤真一 薬師丸ひろ子 吉岡秀隆 小雪 須賀健太

 冒頭、んなわけないじゃん、なゴジラ大暴れシーンに大笑いしてしまった。監督そんなんやりかった?

 まあねえ、やられてしまう、乗せられてしまう、うるうるしてしまうように出来ている、よーくできている、わかりやすい作品ですよね。前作以上に、そのCGによる昭和が楽しめる。看板とか、細かい商品名とか、昭和生まれには記憶を呼び覚まされる。

 なんというんでしょう、アクのない寅さん映画のようなつくりなんです、ですが、そういうのに乗せられたいときがあるんです。善人ばかりで、おせっかいで、お隣さん関係が緊密で、またそういうことが必要だった時代。いや、近所にも小悪人はいただろうし(この映画のように)、同じ時代、農村ではその害について知らされていない人たちが農薬を大量に使い始めていたでしょうが。

 で、あの茶川さんの芥川賞候補作品ですが・・・あれはちょっとね。まあいいか、読んだことないけどケータイ小説ってあんな感じなのかな、と思いましたね。いや、憶測です。すみません。

 
 


 

MOVIE
comment(0) 2008.01.18 23:46

日記2

副題 「鳳凰我が愛」中国滞在録
著者 中井貴一
出版社 キネマ旬報社
ファイル 74-1.jpg
 日記2と言うからにはまず日記1があったわけで、それは中井貴一が初めて中国映画『ヘブン・アンド・アース天と地』に出演した時の実に過酷な理不尽な状況を記したものだった。これは日本ではあまり話題に上らなかったけれど、中国の名優姜文を相手役に、決してひけをとらない存在感を見せた作品だった。映画自体はせっかくのすばらしいロケーションと役者を生かしきれないああもったいない…仕上がりだったけれど。

 で、コリもせず、過酷な状況を百も承知で、なおかつうまく乗せられた結果プロデューサーまでやりつつ、日中合作映画『鳳凰我が愛』http://www.ho-oh.jp/主演となるのである。もちろん台詞は中国語。
 まあ百も承知とは言え、いろいろ不可思議な中国の状況が出てくる。中国の交通事情のすさまじさは、私も一回だけ見たことがあるが、おいおい高速を逆行?物売りが渋滞した高速にやってくる?どこから?どうやって?ただそれだけでも想像を超える。

 まだまだ日本に対する悪い印象を持つ人が多い中国で、“日本”を背負って仕事をする中井貴一の姿を、見てやってください。
 
 私はこれを、「千年の祈り」を読む合間の正月明け、ぺろりと読みました。なぜかひとつ言葉の間違いを見っけ。喧々囂々(けんけんごうごう)侃々諤々(かんかんがくがく)だよね。喧々囂々にケンケンガクガクとルビを振ってある。これって出版社側の不注意と言う物だと思う。

 映画を見たらまた感想を述べますね。

 

BOOK
comment(0) 2008.01.13 11:15

千年の祈り

著者 イーユン・リー
新潮クレストブックス

ファイル 73-1.jpg
 1972年北京生まれ、96年渡米、アイオワ大学大学院で免疫学修士号取得の後、創作科修士号取得、と言う履歴の女性が、英語で書いたデビュー短編集。
 その短編のそれぞれが、見事な名作です。
 たとえば最初の作品「あまりもの」、51歳で林ばあさんと呼ばれる独身女性が、年寄りのヘルパー代わりのような縁談を世話される。アルツハイマーのその夫を風呂に入れているとき突然正気に戻った夫が暴れだし、バランスを失って倒れ、死んでしまう(認知症だったのに亡くなる前には正常な物言いをしたのが私の祖母、そんなことがあるらしい)。息子は義理の母に一銭も渡さず、代わりに全寮制の学校の仕事を紹介する。1人の小学生の面倒を見るうち恋にも似た思いを抱くようになる。不憫な子の変わった性癖を見逃してやる。ある日、その子が起こした事件が元で林ばあさんはクビになる。
 まあそんなようなストーリーの運びなのだが、一つ一つのエピソードはかなり厳しいものなのに、いわゆる自然主義的な描き方にならない。淡々とどこか日本昔話とか、寓話のような空気を帯びて、救いがある。
 かつて宦官を輩出した村を背景にした話や、そうかもちろん中国にだってゲイピープルはいるんだよね、いないことになってるから迫害されるけど、で、偽装結婚してアメリカにわたって、と言う話、中国四千年とも五千年とも言われるその歴史の、今に至るまで理不尽な問題は尽きないあの国を背負った、深さ。

 中国人が英語で書いて、ところどころ中国語の表記があって、それを日本語に翻訳する過程で、その英文の空気はかなり正しく伝わっているのか?英語でこのレベルの文学を読みこなす力があったらなあ・・・と思う。

 2007年の年末から2008年の年明けにかけて読みました。短編集なので少しずつ読んでも大丈夫。

BOOK
comment(0) 2008.01.13 00:55

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