MOVIE+BOOK              

Log

砂漠で溺れるわけには行かない

ファイル 72-1.jpg

著者 ドン・ウィンズロウ
創元推理文庫

 推理小説が好きな人だったら、お気に入りの探偵さんが何人かいるでしょう?たとえば80年代にはパーカースペンサーがいて、それまでの飲んだくれの探偵と違って肉体の管理をきちんとして料理も自分でして恋人スーザンに作ってやる男だった。『初秋』と言う傑作を、その後越えられないまま、なんだかスーザンと別れる?え?というあたりから私は読まなくなってしまったけど、ファン多かったよね。
 で、90年代に『ストリート・キッズ』で出てきたのがドン・ウィンズロウ描くニール・ケアリー。タイトルどおりヤク中売春婦の母を持ツストリート・チルドレン。11歳の時にスリを働こうとした相手ジョー・グレアムによって、探偵として育てられ・・・。
 それが『仏陀の鏡への道』『高く孤独な道を行け』と続いて、たった三作だったけど、中国が舞台になったりするなども私好みで、でも99年に出た三作目で、止まったのかと思っていた、ら、大きな本屋さんでその後の二作を見つけ、あらびっくり。会いたかったよニール!
 『ウォータースライドをのぼれ』では恋人カレンと穏やかに暮らし、いつか大学で英文学を教えるという夢を抱いている。がそこへ簡単な仕事だ、と頼まれて、有名人のセックススキャンダルに巻き込まれることとなる。
 シリーズ最終作『砂漠で溺れるわけには行かない』では、ニールはカレンとの結婚を間近に控えているが、子供を欲しがるカレンに、及び腰になっている。実の父を知らないニールだから。途中からはジョー・グレアムを父さんと呼んでいるけれど。そこへラスベガスへ行ったきりの老人を探しに行けと命令が下る。さてこのジイサン手ごわくて・・・。

 ところで、このニールは、最終作でも20代なのだけれど、推定年齢実は1953年頃の生まれ。今や50代のオジサンだ。カレンと仲よく暮らしている?子供できた?英文学教えて学生に煙たがられてる?どうなんだろう。
 

BOOK
comment(5) 2007.12.09 14:39

ア・ソング・フォー・ユー

ファイル 71-1.jpg
著者 柴田よしき
出版社 実業之日本

 ハナちゃんこと花咲慎一郎探偵(新宿2丁目の無認可保育園長兼業)が「ブルーライト・ヨコハマ」「アカシアの雨」「プレイバックPART3」「骨まで愛して」知る人には懐かしいタイトルのもと、活躍を見せてくれます。花ちゃんシリーズ第4弾ですが、短編集で、それぞれ今までの人間関係を説明してくれていて、初めての人でも大丈夫ですよ。

 ですが。
 RIKOシリーズに出てくる美しきインテリやくざ山内が、ちょっと名前だけの出演かと思いきや、たっぷり出てきてくれるし、最後の方には名前は出ないけど麻生のことが・・・うふん。なんてね、柴田よしき作品に詳しいと・・・読書の悦楽にひたります。読書のもたらす妄想世界に。
 RIKO物に出てくるときと山内のキャラはちょっと違う感じ。時系列で言うと?RIKOの途中のどこか、だれかコアなファンがそういうことを調べてくれていそう。
  
 いや、子供に対するまなざしの優しい、素敵な探偵さんなんですよ、花ちゃんは。読んでみてね。

 
 
 
 

BOOK
comment(0) 2007.12.02 23:06

サウスバウンド

ファイル 70-1.jpg
小説
奥田英明 著
角川文庫 上下巻

映画http://southbound-movie.com/
監督 森田芳光
出演 豊川悦史 天海祐希

 管理人actonさまお勧めの奥田英明「サウスバウンド」です。小説については、読み始めこそ父親語る全共闘世代言語が嫌いな私にはつらいものがありましたが、いや、面白かったです。ただの過激派バカ(こんな言葉はありませんが)ではない、最近の環境問題をテーマとするさまざまな動きについて時に胡散臭く感じられたりすることなどがきちんととらえられた、作品でありました。
 元過激派で破天荒な父親を持った子供たち、実はお嬢様だったのだがこれまた実は元活動家であった母親。世の流れになあなあで同調することの無い父親の故郷である、沖縄の西表島に移住することとなる。そしてそこでも開発業者や政治家相手に戦う日々となり・・・。最後のシーンが、なかなかファンタジーな匂いである。これ、『ティファニーで朝食を』は、カポーティの原作によると主人公ホリー・ゴライトリーはどうやらアフリカに行ったり“旅行中”の生活を送っているらしい結末になっている、ということを連想させる(のは私だけかも)。
 
 で、映画ですが。
 森田芳光監督作品は、佳作と駄作の波が大きい。で、佳作ではない。が・・・駄作と言うより、中途半端。
 予告編を見た時の違和感が、そのまま当てはまってしまった。まずここは、トヨエツ、ではない。破天荒だけれど彼なりに筋が通っていて、豊かであるからこの妻や子供が付いてくる、というキャラクターをやるのにほかに誰が?と思うとたとえばいにしえの坂東妻三郎、緒形拳、原田芳雄、うーん、松田優作・・・今の40代の男では?50代だけれど三浦友和なんて良いかもしれない。父性が見えそう。40代・・・佐藤浩市では?
 で、肝心な台詞が無い。その島が琉球に支配された歴史を持つこと、環境問題を高らかに口にすることでろくに仕事をしない言い訳にしている人間、など。だからただのやかましい全共闘オヤジにしか見えない。脚本の問題。

 とても良いのが島の警官役の松山ケンイチ。それと上原家が移り住んだ島の家はセットだそうだ。すごい。

 かつて豊川悦史・天海祐希・金城武で『ミスティー』という失敗作ありけり。この組み合わせがいけないのか?最後のシーンも、ニライカナイ求めて旅立つような風を感じない・・・。

MOVIE+BOOK
comment(2) 2007.10.27 00:05

韓流シネマフェスティバル「卑劣な街」「レストレス中天」

http://www.cinemart.co.jp/han-fes2007/movies/movie01.html
ファイル 69-1.jpg
卑劣な街
監督 ユ・ハ
出演 チョ・インソン ナム・グンミン

 ドラマ『バリでの出来事』での訳のわからんお金持ちファッションの憎めない御曹司や、日本のCMでのさわやかな姿を期待して見た韓流ファンにはお気の毒なほどの、本格ヤクザ映画。
 
 いささか地味な暴力団の、兄貴分に恵まれないNo,2の男。黒幕の親分のためにその兄貴分を殺す。映画監督になっている同級生との出会い、そしてかつて思いを寄せていた女性との再会。心鬱屈して泥酔した日、同級生への気の緩みで殺人を話してしまう。
 裏切り、のし上がり、裏切られ、刃物でえぐられる卑劣な下克上の世界。ヤクザって実はこんなものなんだろうな、と思われる。が、ふと気付くと映画やドラマの古典的なテーマである。ビジネスの世界や映画界(『イブの総て』とか)や、さまざまな世界で親しく可愛がっていた後輩にいつか座を乗っ取られるという姿が描かれてきた。

 カラオケのシーンが何度か出てくる。ド演歌を歌うチョ・インソンなかなかうまい。日本のヤクザ社会とシステムが違うらしい(多分)のが、ヤクザがスポンサーを見つける、と言う話。
 いろんな意味でえげつないが、うーん、そんなもんかも。それにしてもあの映画監督の行く末もなかなか・・・。

レストレス中天
監督 チョ・ドンオ
出演 チョン・ウソン キム・テヒ
衣裳 ワダエミ
 現世とあの世の間に“中天”があり、死者が天国に行く準備をするところであるらしい。時は新羅の末期であるのだが、死後に悪鬼となって昇天できずにいる(らしい)生き物が現世を跋扈している。それを退治する退魔師がいる。退魔師のボスに誘われ悪霊退治の処容隊に入るチョン・ウソン。ある日、まだ生きている身ながら中天に迷い込む。
 
 『無極プロミス』とか小野不由美原作『十二国記』とかはたまたオーラの泉とか、『英雄ヒーロー』のジェット・リーのシーンとか、いろんな作品を思い起こさせ、またこれが体から鎖が何本も生えてバーンと飛び出すのよ斬新だがあんまりだ…がしかし。
 輝ける愛の物語でもある。戦い、きっとまたいつか会える と言って死を迎える恋人たち。
 今の私には心地よく感じられる映画でありました。チョン・ウソンによく似合う役柄だと思います。

MOVIE
comment(0) 2007.10.25 22:35

ソーネチカ

ファイル 68-1.jpg
作 リュドミラ・ウリツカヤ
訳 沼野恭子
新潮クレストブックス

 赤ちゃんなのか子供なのかわからないような幼い時からソーネチカは本の虫だった というのがこの本の最初の部分である。いかにもそういう子供だった私としては、どうにもやはり読んでみたくなるのであった。

 ソーネチカは、図書館の司書という幸せな職を得、広大な書物の海を泳ぎながらその価値を見定めることが出来るようになる。
 ある日、第二次世界大戦が始まる。疎開した地でも図書館の地下書庫と言う憩いの場所を見つける。そこで、有名な画家ロベルト・ヴィクトロヴィチと出会い、見た目のぱっとしない女の子だったにもかかわらず唐突にプロポーズされる。
 年の離れた夫であり、反体制的な芸術家である年の離れた夫との結婚生活は、貧しいながらも幸せだった。一人娘が大きくなり、やがてヤーシャという美人の友達を連れてくる。 

 それから、その後の展開(とても静かな、大きな)、ソーネチカの対応、それをもし男性作家が書いていたとしたら、血が通ってないうそ臭い女の姿になっただろう。はー、男の理想ねー、勝手になさい、みたいな。
 女性がその姿を生み出すと、そんな人がいたのだ、なんと自然にそう生きる人が、と、静かに受け止めてしまう。

 あまり長くない小説である。その中に、ソビエト時代の社会に対する批判的な視線もありつつ、心鎮められる。

 新潮クレストブックスにはほかにこんなものがあります。http://www.shinchosha.co.jp/crest/さて次はどれにするかな?

BOOK
comment(0) 2007.10.05 20:54

めがね

ファイル 67-1.jpg
http://www.megane-movie.com/index02.html
監督 荻上直子
出演 小林聡子 もたいまさこ 三石研 市川実日子 加瀬亮

 去年の映画『かもめ食堂』の監督。
 一人旅、春の南の島にやってきた女性小林聡子、宿の主人三石研、宿に泊まって次の朝、ふと気配に目覚めると傍らに地味な中年女性の姿、にこやかに「朝ですよ」。でも起き上がらずにまだ寝入ると、なにやら音楽が流れて、その元を探して歩いていくと、海岸でゆるーい体操をしている人々がいる・・・。朝ですよ、の主もたいまさこが前に立って模範の形でゆらゆらうごいている。
 そのメルシー体操という名の脱力ゆるゆる体操が、実は大変よく出来ています。ヨガ教師の私の言うことだから信じてください(?)。珍しいキノコ舞踊団の人が振り付けした体操だそうです、大概知らないだろうけど、そういうダンス集団があるんですよ。

 で、観光したい、どこかお勧めは?と聞くと、そんな場所なんかありませんよ。ではここに来た人は何を?返ってきた答えは“たそがれる?”

 こないだうち日本テレビ系朝番組「スッキリ!」の終わりごろ『朝のたそがれ』という矛盾したタイトルのコーナーがあったのはこれの前振りだったのねー!
 
 もうほとんど初めからクスクス笑いながら見ていました。朝ですよ、とかそういう雰囲気に辟易した主人公が別の宿“マリンパレス”を訪ねるとそこでは宿泊客も裏の野菜畑で労働して汗を流して育てた物を食べる、そういうコンセプトなの!と言う薬師丸ひろ子さんのお姿なんていかにもありそうでケラケラ笑いになってしまった。

 ゆるりと無為に風に吹かれている・・・なんて時間は、充分大人になってしまうとそれは夢のように手に入らないものです。しばしの夢の時間を、ふうわりゆうらり過ごしている、おそらくはそれぞれの人になにかしらの事情があることは表に出てこないまま。・・・しかしこの期間が実は何日間だったかわからないけれど、この人たちの職業は?まあいいけど。

 私にとっての今年の日本映画第一位が、もう決まりました。あと二ヶ月の2007年にどんな映画が来たとしても、これ以上ではないと思います。時間が無い、或いは時間はあるけれどなにがしか目を配って神経を使っていなければならない大人へ、しばらくの理想郷をお届けする映画です。
 

MOVIE
comment(0) 2007.10.01 18:02

夜の上海

http://www.yorunoshanghai.com/
ファイル 66-1.jpg
監督 張一白
出演 本木雅弘 趙微(ヴィッキ・チャオ) 西田尚美 竹中直人

 原題「夜。上海」。近頃中華圏の映画タイトルには句読点の入ったものが多いのはなぜだか。『色、戒』『野。良犬』etc。
 さてこの映画、タイトルからは思いもよらぬコメディーです。竹中直人そこまでやるか?それ必要か?毎度の竹中直人だけど。
 カリスマへアメイクアーティストのモックン、私的生活にはそれなりの問題を抱えています。上海の音楽祭にヘアメイクとして呼ばれ、仕事の後町を散歩して歩いている内に暴走タクシーにぶつかって(その直後のモックンのあのふらふらへろへろはそういう演出?なんだあ?と思ったらやっぱりアドリブを拾われたらしい)…。女性運転手は中国初のアイドルと言われた趙微、小汚い造形だけれど、そういうわけだから結末は想像付く次第。
 脇に出てくるのが香港のサム・リー(日本映画『ピンポン』にも出たことがある)、台湾の“もこみち”ことディラン・クオ。あと塚本高史とか和田聡宏とか、お好みはどちら?みたいなキャスティング。

 で、お財布も携帯も持たずに出かけて事故に会い、勢いでタクシーに乗せられ、しゃべれる中国語は“真漂亮(とっても綺麗)”のみ、もちろん日本語まったく話せない運転手趙微、その彼女の片思いの成り行き、その他もろもろ絡んで勘違いの一方通行のかかわりが次第に少しずつ変化していく。

 チャーミングで私は好きですよ、でもね、西田尚美さんの気持は?そういう具合にすっきりいく?それだけひっかかった私であります。理恵役の女の子、大塚しのぶサンは中国の演劇学校に留学したことがあるんだって。

MOVIE
comment(0) 2007.09.27 12:38

スキヤキウエスタンジャンゴ

http://www.sonypictures.jp/movies/sukiyakiwesterndjango/index.html
ファイル 65-1.jpg
監督 三池崇史
出演 伊藤英明 佐藤浩市 伊勢谷友介 安藤政信 香川照之 桃井かおり 木村佳乃 

 なんとまあかくも豪華なキャスティングをもってこーんなとんでもない映画を作っちゃうもんかい三池監督・・・。
 のっけから風呂屋?みたいな書割をバックにクエンティン・タランティーノさんじゃあありませんか、何やってんの?と、いう間もなく(そういえば慎吾ちゃんも出てたな)源義経という名の男率いるにーちゃんたちと平清盛という名の男率いるにーちゃんたちがお宝探して山奥の村で対立してたら一人のガンマンが流れてくるのさ。で、死屍累々の騒ぎになるのですよ。なぜか全編(ごく一部を除き)英語の台詞。大概の人は英語へたくそ。
 
 予備知識無しに見に来たらしい年配のご夫婦が途中で退場なさっていました。無理も無い・・・。

 なんだかんだ過去の映画や役者のパクリで遊んでいる、その中で香川照之がやっているのが『ロードオヴザリング』の二重人格の狂言回しの生き物、名前何といったっけ?の明らかなパクリ。その香川と、木村佳乃サンと桃井かおりサンを、見に行きましょう。見る気がある方はね。木村佳乃サンの英語はほとんどネイティヴ。最後のあたりもひょっとして自閉していた少年が“シェーン、カムバーック”と叫ぶかと思ったけれどさすがにそれはしなかった、が、伊藤英明の存在はほぼそんな感じ。で、少年は後にイタリアに行ってジャンゴと呼ばれる男になったんですとさ。わかる?マカロニウエスタン『荒野の用心棒』。

 うーん、まあ、ワースト系の作品ですが、北島三郎さんの歌『ジャンゴ』耳に残りましたね。むかーし聞いた歌ではジャンゴウー、と歌っていた、北島さんは、ジャンーゴと発音するんだなあなど思って。

MOVIE
comment(0) 2007.09.22 22:58

move