長いお別れ

著者 中島京子
文春文庫

フィリップ・マーロウ「ロング・グッドバイ」じゃなくて、アメリカで認知症がゆっくりと進んで行く様子をlong goodbyeと言うのだそうだ。
認知症を描いた小説やドラマはいろいろあるけれど、しばしば、それは違う、と思う。、わかってない、と思う。が、この小説には、そうそう、と共感しながら、時に笑い出しながら読み進んだ。ゆっくり、ゆっくりと進んでいて、ある時、急に何を言っているかわからなくなる。会話が成り立たなくなる。そうだったよ。

かつて教師で校長や図書館長をつとめた東昇平は、しばらく前から認知症になっている。同窓会にたどり着けなかった日から、これは、と、物忘れ外来に連れて行かれ、アルツハイマーと診断された。

妻と二人暮らし、娘3人の中にはサンフランシスコで夫や子供たちと暮らしている者もいる。それぞれ父や母のことをちゃんと気にかけている。

私は母を在宅介護していたが、入れ歯行方不明、排泄の問題、よく似たことが起こっていたのだった。夜に洗濯機を回したよ、私も。

今現在介護中の人は、なかなか読書の時間さえ作れない状況だろうけれど、ちょっと暇を見つけられたら、読んでみてください。共感できるし、安心できると思う。帰りたがるよね、どこかに。家にいるのに帰ると言うよね。ここではないどこかに帰りたがるのはなぜなんだろうね。みんな、そうみたいだよ。

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