台湾アイデンティティー

台湾アイデンティティ監督 酒井充子

出演 高菊花(日本名:矢多喜久子/ツオウ族名:パイツ・ヤタウヨガナ) 黄茂己(日本名:春田茂正) 鄭茂李(日本名:手島義矩、ツオウ族名:アワイ・テアキアナ) 呉正男(日本名:大山正男) 宮原永治(台湾名:李柏青、インドネシア名:ウマル・ハルトノ) 張幹男(日本名:高木幹男)

1922年~1932年生まれの、台湾日本語世代の人々が語る、日本植民地時代の戦争中、そして戦後の蒋介石統治時代の生活。『台湾人生』に続く酒井監督のドキュメンタリー。

台湾では原住民という言葉は差別語ではない。正式な用語である。日本統治時代に、原住民の総称として高砂族と呼ばれることになったが、その種類は多く、それぞれに言語が違う。対岸の福建省から漢民族がやってきて住みつく以前から台湾に棲んでいた。そのひとつ、ツオウ族(顔立ちが西洋的)の、その時代少数民族出身の中では超エリートだったのでは?と思われる、中国語名・高一男さんという父親の娘、菊花さん。ピアノを弾き、ベートーベンが好きだった一男さんは、台南師範学校を出て教師や警官をしていた。戦後、原住民の自治を主張していたことにより、国民党から要注意人物として逮捕され、1954年、銃殺。菊花さんも、その後何年も当局に呼び出され、意味もなく追及される。

「蒋介石の政治が民主主義だなんて、おへそがお茶を沸かすよ」と言った出演者がいた。4人というのをよつたりと言いかけてよにんと言いなおした人がいた。母親は和服を着て生活していた、と言った人がいた。私の親ぐらいの世代なのだが、語り口が、祖父を思い出す。

私からみても懐かしく感じられる日本語で語られる、それぞれの生活。東京の中学に進学、陸軍に志願し、中央アジアで抑留生活を終えたのち、日本で暮らすことになった人、インドネシアで終戦、インドネシアの独立運動で戦い、そのままインドネシアで(日本名で)生活している人、台湾人の父と日本人の母を持って生れ、戦後、政治犯収容所で8年間過ごした人。

火焼島 という政治犯収容所のある島の名前には覚えがあった。ジャッキー・チェン主演の『炎の大捜査線』の原題、そして『炎の大捜査線2』では金城武・ニッキ―・ウ―主演、どちらもさしてお薦めはしません。そうか、監獄ものだったなあ。政治犯収容所だったんだ。

彼らが“中国人”と言う時、ある種の差別視がある。自分たちは台湾人である、という誇り。戦後に蒋介石とともにやってきた彼ら(外省人)を、侵略者とする。

今では外省人と本省人の混血もすすんでいる。若い世代とのギャップはあるだろう。今、大陸との交流が無くてはほとんどの事業が成り立たない。が、台湾独立を主張する人がまだまだいる。海外で台湾が中国の一部だと思っている人はまずいない。そのことを大陸の住民の多くは知らない。

さて、このあと、マルヤガーデンズシネマでは、原住民が日本軍統治に対して立ち上がり、戦いを挑む内容の映画『セデック・バリ』が上映される。そうでなくてはね。中国の前、日本が、侵略者であったのは事実だから。

 

 

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