LOVELESSラブレス

ラブレス著者 桜木紫乃

出版社 新潮社

友人から貸し出されたもの。表紙・タイトル・作家名、そして帯には“突然愛を伝えたくなる本大賞”とあるところも、書店で見かけても私は避けて通ったかと思われる。が。

45歳の小夜子と従妹の理恵、小夜子の母・里美、理恵の母・百合江、さらに百合江と里美の母・ハギ。始まりは、久しぶりに百合江の家を訪ねると、百合江は位牌を手にして病の床についていたところから。そこには有名な女性演歌歌手のCDが積み重なっていた。

3代の女性の生き方が、現在と過去の時点を行き帰して描かれるので、しばらくその人間関係がつかみにくい。

一気に読める。歌がうまかった百合江は、地方回りの一座の歌手になる。昭和のキャバレー全盛時代。

先日、タイガースメンバー全員そろって40数年ぶり再結成、2013年12月27日、東京ドームでコンサート、を、BSで放映したものを見た。法事で帰ってきていた妹とともに。ジュリー沢田研二はますます横幅が増しているが、明らかに今のほうが艶も幅もある歌声で、うまい。前回の再結成時にはいなかったトッポ加橋かつみの高音が入って、ああタイガースだと思う。長く人見豊という一般人、学者だったピー瞳みのるが、走り回って歌う。一人若々しいけれど、この人は大きな病気を二度しているのだ。車椅子の岸部四郎も登場。森本太郎作詞作曲の歌が昔からあったのか。かつてサリー岸部おさみだった岸部一徳と沢田研二がすっと第一線で活動しているからこれだけのことができるのだろう。

百合江がャバレーで歌った歌の中に出てくる。ザ・ピーナッツや沢田研二の曲が。

一座の女形との間に女の子を産んだ百合江の人生。

70過ぎで老衰と判断されるような人生。その、人生の最後が近いであろう時が、なんと幸せに満ちているか。

作家になっている理恵が、その祖母や母の人生を書こうとしているシーンがある。そしてその結果がこの小説になった、というしくみなのだろう。

2013年『ホテルローヤル』で直木賞受賞というこの作家、父親が釧路で実際にホテルローヤルというラブホテルを経営していたのだそうだ。

私事だが、今日が母の四十九日。ひとり片付け事をしていると、あちこちから古い思い出が現れる。老いた親戚が今の私よりも若かったころ、正月に集まった写真とか。個人の事情も絡まって、真夜中に最後はびいと泣いた本でした。

 

コメント (2)

atcon2014年1月28日(火曜日) at 11:08 PM

ザ・タイガースの東京ドームコンサート、BSでやっているのを録画しようかどうしょうか、迷ったけれど結局観なかった。ジュリーの変貌やトッポの登場や、中高生の頃聴いた歌とか–そんなの観たら、ちょっと辛くなる気がして。
ジュリーは、スリムな頃より、うまくなっているのですね?体に比例して歌にも幅が出たのかと思うと、それもまた泣けてくる。

aar2014年1月29日(水曜日) at 8:49 AM

我が家では、録画しつつ金曜夜に妹と見、次の夜は妹は友達と外で夕食、弟夫婦と家で夕食中に、見たいというのでまた見ました。
この年齢で、コンサートの間歌い続け、声がこれだけ出ている、と、いうだけですごい。仏像みたいな顔だけど許す。

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