トリカゴ

著者 辻堂ゆめ

創元推理文庫

蒲田署刑事課に勤務する森垣里穂子には、6歳の頃にテレビで見た幼い放置子二人の悲惨な状況に泣き出した記憶があった。

殺害未遂事件の犯人とみられる女性ハナと係わるうちに、無国籍の人々が暮らすコミュニティの存在を知る。

離婚した場合、女性に限り、半年は再婚できなかった法律が、離婚後100日に変わったのが平成28年6月、そして撤廃されたのは令和6年4月だって。出生した子どもの父親の推定が重複するのを避けるため、だったんだとさ。要するに半年以内に出生届を出すと、自動的に前夫が父親と認定される仕組み。で、DVなどで前の結婚から逃げた女性の場合、居場所を知られないために、子が生まれても出生届を出さない。戸籍の無い人間となる。或いは何かしらの事情で無戸籍だった者に子が生まれ、無戸籍2代目、3代目となる。公的機関の受付あたりの壁に、無戸籍の人に向けたポスターが貼ってあるのを見たことがある。ああ、このあたりにもいるかもしれないのだ、と思った。

羽山という匿名捜査対策室の刑事と共に捜査を続ける里穂子。かつてテレビで見た放置子の事件は、『鳥籠事件』と呼ばれていた。その事件と関連しているのではないか、という様相が現れてくる。コロナ禍の時期の話なので、何かと捜査が進まないこともある。

2004年の是枝監督の映画『誰も知らない』で広く認識されるようになった放置子、無国籍子。作家はきちんと細かい調査をして取り組んでいることがわかる。第24回大藪春彦賞受賞。

 

 

 

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