エゴン・シーレ死と乙女

http://egonschiele-movie.com/
監督・脚本 ディーター・ベルナー
出演 ノア・サーベトラ マレシ・リーグナー フェレリエ・ペヒナー

20世紀初頭、オーストリア・ウィーンで活動し、若くして亡くなった画家、エゴン・シーレ。
性器もあらわな裸体画、決して肉感的というわけではない、骨格が見えるような裸体、性交や死を思わせる捩じれたポーズ。かつての私はその絵が好きだった。いつのことだったか、東京での展覧会を見たことがある。

今の、老年に一歩踏み込んだ年齢の私の眼にはどう映るのか、危惧もありつつ。
美形すぎるけれど、ヘアスタイルが若いシーレに似せてあるからか雰囲気はこんな感じだったのかな、と思わせるシーレ役のノア・サーベトラ。モデル出身だという。まあオーストリアの俳優ってほとんど知らないよね、クリムトから紹介されたモデル、 ヴァリ役の女優フェレリエ・ペヒナーが、なんだか見覚えがあるような誰かに似ているような気がする、のだが気がするだけか。いい女優さんだと思う。私がこの役柄に最も共感を覚えるからか。
こういう裸体画モデルというのは、その時代、まあ今で言うならAV女優みたいな感覚なのだろうか。初めは妹をモデルに描いていたし、もっと年若い娘を描いて幼児性愛者の嫌疑をかけられたりもする。その後、長くパートナーでもあったヴァリを捨てて、良家の娘と結婚、しかもその娘の姉とも肉体関係があったようだし、ヴァリとの関係もそのまま続ることを望もうという画家。

才能というのは生まれ持ったものだろうし才能を生まれ持つというのは身の内に有り余る毒のようなものを持ちそれを吐き出さずにいられないということだろうだからそんなやつに普通をもとめたらいけない、ものだろうけれどどいつもこいつも才能のあるやつってものは!

と、思ってしまうさ。ベッドに入っていざ、という瞬間にそのポーズのまま、と言われてスケッチされてしまう。モデルの立場なら良い、妻にしてみればその結果が絵画作品として世に出ることは不愉快なことさ。だけどアーティストと結婚するってそういうことさ。

シーレの作品は評価が上がってくるが、第一次世界大戦勃発、従軍看護婦になったヴァリは猩紅熱で死に、大流行したスペイン風邪によって夫婦二人とも無くなる。その時シーレ28歳。

私がかつて大きな展覧会で観たことがあるせいか、スキャンダラスな雰囲気の絵画はそんなに出てこなかった気がする。そしてあんな不自然なポーズをとらされるモデルはしんどいことだろう。

とにかく凡庸な人間に生まれたことをありがたく思うものである。

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