2019年11月17日(日曜日)
著者 小野不由美
新潮文庫
十二国記シリーズ、2013年に刊行された文庫『丕緒の鳥』から約5年…本編という意味では2001年の『黄昏の岸 曉の天(そら)』から実に約17年ぶり!
だってさ。そーんなに長い時が経ったか。
私が初めてこのシリーズを知ったのは1996年刊の『図南の翼』なんですが(そして思い切りはまった)、もしもまだ十二国記を読んでいない、と言う方、読んでみたい方、『魔性の子』1991年からのほうがいいですよ。これは外伝だとは言え、この新作につながる最初のお話なので。
新刊は、しろがねのおかくろのつき と読むそうです。うう、そうか、驍宗の白髪、黒麒麟である泰麒の象徴、と今頃気づいた私。
そしてこの、久しぶりの新刊は長い!10月に前半2冊、11月に後半2冊でしたよ。前半は読んでも読んでも先が見えない、場所の名前、人の名前が読めない覚えられない、人間関係図を描きながら読み進むのだった、と後から思う。そもそもあまりに久しぶりだから、前の段階の経緯も記憶のかなたでかすんでいるし。
ですが、後半バリバリ展開、一気に読みました。
4巻解説にもあるのだけれど、そう、酒見賢一『後宮小説』1989年刊ぐらいから始まったのでした、中華世界風日本のファンタジー小説。すっかり遠い目をしてしまうよ。
そして、もちろん、優れたファンタジーと言うものは、今、私たちが生きているこの世界の問題と深くかかわっているもので。“魂魄”が抜かれた人間とかさあ。なんか政治方面の記者インタビューを受けてる誰かさんや誰かさん、抜けかけてる気が。
そしてこの物語は、果たして私の生存中に完結するのか?
読んでいない人には何の紹介にもなりませんね、ごめんね。12国記ファンのあなたは、このシリーズの出演者中、誰をごひいきですか?
2019年11月4日(月曜日)
監督 ユン・ジョンビン
出演 ファン。ジョンミン イ・ソンミン チョ・ジヌン チュ・ジフン
1990年代朝鮮半島。北の核開発の実態を調べるために、軍人だった男がスパイとして潜入する。コードネーム黒金星(ブラックヴィーナス)。
北京で、対外経済委員会に近い人物に近づく、そして李所長に、とつながり、南の情報を提供するよう求められ。
北朝鮮の風景の中で韓国のCMを撮る、と言う提案が実現に向けて動いていき。
韓国では金大中が政界に復帰。
男は自白剤を使われるなどありながら、権力の中枢へとつながり、金正日と面会するまでになる。
広告撮影の名のもと、ひそかに核の実態調査を始める。
金大中が大統領選に立候補。当選を阻止しようとする祖国と北朝鮮との裏取引で…。
結構な量の韓国映画を観てきたのだけれど、どうも隣国の政治状況がどこでどんな風に変化したかが頭に入っていないのです。予習しときゃあ良かったと思いましたよ。よくわかっていない人には予習をお勧めします。北京でいろいろ北の人物に会うと、いう話だけど、ロケ地は台北だったらしい。
これ、実話を元にした話なんだよね。どれほど脚色されているかわからないけれど、うっそー、と、途中で何度も思ってしまいましたね。軍人だったのが短期間でスパイになれるのか?そもそも。
最後のシーンでじんわりすることになります。
2019年11月1日(金曜日)
https://gaga.ne.jp/hotelmumbai/
監督 アンソニー・マラス
出演 デブ・パテル アーミー・ハマー ナザニン・ボニアディ
2008年、インドのムンバイで実際に起こった同時多発テロの現場の話。実際にはタージマハル・パレスホテルでの事だというが、そのホテルからの人質脱出の模様を描いたもの。
イスラム教徒の若い男たちが、リーダーの声のもと、宗教がそれを命じるものと信じてテロに及ぶ。
底に居合わせた者たちを、ホテルマンが決死の脱出へと導く。
よくできていて、面白いけれど。
インド映画、ではないのですね。監督はオーストラリア人だそうで、西洋の映画の作りですね。
いや、よくできているんですけど。嫌な奴だと思った男が、意外といいとこあるとか。
今一つ、私には何かが不足している感があったのでした。ま、いろんなところで★の数がたくさんついているので、これは私個人の感想でしょうが。
2019年10月28日(月曜日)
https://gaga.ne.jp/shinjitsu/
監督 是枝裕和
出演 カトリーヌ・ドヌーヴ ジュリエット・ビノシュ イーサン・ホーク
この『真実』というタイトルがねえ。
大女優が『真実』という自伝を出す、というが始まりにあり。で。どこが真実じゃ、と家族や長く仕えた人間は思う代物である、と。
すみません、私はカトリーヌ・ドヌーヴのファンだったことが無いのですが、まあ貫禄です。
貫禄の女優、生活が女優、人生が女優、の、あちこちで笑ってしまいました。
ジュリエット・ビノシュだっていかにも女優の女優さんだけれど地味に、ほとんど化粧もしていない、それだけ母と娘の距離をしめしてもいるのだろう姿も、良いです。
そうね、下品な人が出てきません。なかなかの会話もありつつ(って)。
で、のちのち明かされる母の思い娘の思いの・・・どこからどこまで真実でどこから芝居なのか?芝居の中に真実が潜り込んでいるのか?
マノン役の女優さんなかなか素敵、最後彼女にプレゼントする白い襟のワンピース、ドヌーヴの『昼顔』の貞淑な妻の時のとそっくり!よね?
この映画の中で、SF映画を撮影しているシーンと重なって進行するためでしょうか、終わってから年齢層の高かった観客の中から、最初意味が分からなかった、と言う声が聞こえましたが、それはきっとドヌーヴが懐かしくて観に来た人で、是枝監督の作品に慣れていなかったのかも。
2019年10月27日(日曜日)
監督 林雅行
『心の故郷』に続く、日本統治時代の台湾に生まれて少年少女期を過ごし、戦後に日本に渡った人たちを描くドキュメンタリ-。今では80代、90代になっている彼ら。
今回の、印象的な言葉。『泥棒する人たちが日本人だということに驚いた』。戦後の混乱の中では人のものを盗らなければ生活が危うい人間がたくさんいただろう。そして、台湾にあっては支配階級だったことを、特に意識もせず生活していたであろう彼ら。ほとんどの日本で生活している日本人よりも豊かに暮らしていた彼ら。
植民地というのは、そういうことなのだ。
そして、その時代を懐かしみ、第二の、ではなく、故郷と偲ぶ彼ら。
中に子供のころから回文を作って遊んでいた、そしてそれが高じて逆回転させるとちゃんとした歌になる、という歌い方まで身に着けた、と言う女性が出てきたが、その人のことは珍しい人を紹介するTV番組で見たことがあって。ああ、と声が出てしまったよ。
なぜでしょう、こういう、日本だった時代の台湾にいた、台湾人、日本人を描く映画を、いつもとても面白いと感じるのは、と、今回思うものでありました。
2019年10月20日(日曜日)
著者 閻連科
出版社 白水社
そんなに長くない小説なので、できれば一気に読むことをお勧め。
私自身は眠りにつく前の時間に少しずつ読む、といういつもの習慣のまま読んでしまったのですが。
ちょっと、ヘンな話なので、慣れるまで読みにくいけど。
ひどい干ばつが起こり、村人は水のある土地を求めてみんな出て行った。先じいは年寄りなので(と言っても70ちょっとだが)、あきらめて残った。畑に一本だけトウモロコシの苗が残っていたし。犬のメナシと一緒に。
寓話的なお話だからね、許そうと思うのだが、そのトウモロコシの苗を育てるために自分とメナシの小便を毎日かける、水分と肥料として、ってさあ、すぐ枯れるよお、煮えるじゃんよお、と、ちょっとした菜園やってる身は気になってしょうがない。ま、寓話だってば。
ネズミとわずかなトウモロコシの粒争奪戦をしたり、オオカミとにらみ合いしたり、そして、いよいよなにも無くなっていき…。
いのちをつなぐ、ということ、人間・動物・植物、というものが並立してつなぐ、物語。
中国語学習者なので、これ、原書と並べて読んでみたいと思いました。
2019年10月20日(日曜日)
著者 川上弘美
講談社文庫
連作の短編集。最初の『形見』で、・・・今まで見たことが無い種類の、怖さ、すごさ、ショック、のようなものを、それもふわりと、投げられ受け止める感。
ジャンルは、というとSFとなるだろう。SFファンタジーか。レイ・ブラッドベリでも森博嗣でも上田早夕里でも、未来の、人類が現在の在り様ではない姿を描いているけれど。工場で食料を作り、そして子供たちを作る、ということでもまあ似たような設定はあったけれども。
子供の由来はランダムで、牛由来・鯨由来・兎由来、いろいろ。夫の最初の妻は鼠由来、次の妻は馬由来、三番目はカンガルー由来だったって。
穏やかで、透明感に満ちて、怖い。
最後まで読むと、あれ?どこが始まり?ここは終わりの始まり?始まりの終わり?そして最初の『形見』のショックは何だった?
川上弘美はとても良い、ことは知っているが、たくさんは読んでいない。もう少し読も。このひとの異界は、形容できない。第44回泉鏡花賞受賞だって。なるほど。
2019年10月16日(水曜日)
監督 半野喜弘
政策顧問 余為彥
出演 妻夫木聡 豊川悦司 ニッキー・シエ
何か姿をくらます必要があって台湾に逃げてきて、地元のボスの世話になっているトヨエツ、彼が食べている店の同じテーブルに座ったチンピラにいちゃんがブッキー、俺の事覚えていないか、と聞く。
かつて同じ事件にかかわっていたことが次第にわかってくるのだが、その二人に台湾人の女の子が加わって、古典的なと言うか、よくあるよね、女の子一人に男二人のロードムーヴィーに。
関係性とか状況とか、なんだかあまり説明の無いまま話が進んでいく。そのやり方が成功してるんだかどうなんだか、というと、わかりにくいでしょう。が、私にはこの、ふた昔ぐらい前の香港映画とか台湾やくざ社会がらみ映画の色がなかなかに好ましい、もしくは懐かしい。90年代香港チンピラ映画、例えば『古惑仔』シリーズとか、狭いごちゃごちゃした路地の雰囲気。
そして、緑の濃さがむせるような台湾の田舎。
少し前に、トヨエツ若き日のドラマでの、あーこんなきれいな顔だったのか、という姿を見たところだった…。は、ともかく、台湾が好きなお方、どうぞ。
2019年10月15日(火曜日)
監督 林雅行
日本の統治下にあった時代の台湾に生まれた人のことを、湾生という。湾生の人たちに取材したドキュメンタリーは、前にも別のものを観ている。
今回この映画で、一番印象に残った言葉は、「日本では、ブルーカラーの仕事、労働を、日本人がやっていた」というもの。台湾で育った日本人は、とても恵まれた環境にあったのだ。
台湾北東部の蘇澳で生まれ、ずっとそこで育った女性と、蘇澳から基隆などへ移り住んだ男性が、長い時を経て偶然に日本で出会う。80歳を過ぎたその二人が蘇澳を訪問する時間を中心に、彼らの、日本人、台湾人両方の同級生との交友などを通して、彼らの戦前戦後、思いを描き出す。
もともとの育ち方のせいか、80歳過ぎた女性たちがとてもおしゃれだ。
学校での交流には差別など無かったのだろう。けれども日本人中学校に入ることができる台湾人はお金持ちである階級の人で、まずそこで選別されていたし。戦争で物資が少なくなってくると、配給される品物の量が違ったり。
そして、それでも不自由のない生活だった台湾から、荷物一つで渡ってきた日本では、物が無い厳しい生活が始まる。
台湾で生まれ育ったのだから、第二の故郷ではない、心の故郷。
日本人だと思って育ったのにある日中華民国人になった立場の人のドキュメンタリーも観たけれど、それぞれに視点が違って、興味深い。
2019年10月4日(金曜日)
著者 平野啓一郎
講談社現代新書
個人 とはindividualの翻訳語として生まれたものだそうだ。当然明治以降に日本に入ってきた概念なんだね。不可分、これ以上分けられない、と言う意味になる。
それを、自分とそれぞれの他者との関係において、誰に対しても同じ対応をしているということは無い、ある人とは儀礼の範囲を越すことは無く、趣味や信条を同じくする人とはその部分をより深く、さまざまに対応している、そのことを分人dividual分割できる人、として対応しているとしよう、と、まあ一言であらわすとそういう主張。
本当の自分とは?とか、自分探し、とか、青春と呼ばれる時期にはその種のおすすめ本に手を伸ばしたりする。その本当の自分なるものはそもそも分人の集合体なのであって、あなたのあの集団における評判と、この集団においての評価はまるで違ってもそれは当たり前のことである、と。
分人の分母はたくさんあって、全く別のものであったり、部分的に混ざり合ったり、それもいろいろである、と。
そしてそれはペルソナ・仮面、あるいは八方美人と言った概念とは別のことで。
今生きにくい状態にある人に読んでもらいたい。恋愛がややこしくなっている人も、誰と一緒にいるときの自分が好きか、と言う視点を持つと、行動を選びやすいかも。
もうあの爬虫類系の顔を見るのも嫌になって、これではいけないと思うものの。どうして…