十年

http://www.tenyears-movie.com/
第1話『エキストラ』監督:クォック・ジョン(郭臻)
第2話『冬のセミ』監督:ウォン・フェイパン(黄飛鵬)
第3話『方言』監督:ジェヴォンズ・アウ(歐文傑)
第4話『焼身自殺者』監督:キウィ・チョウ(周冠威)
第5話『地元産の卵』監督:ン・ガーリョン(伍嘉良)

2025年の香港、という、ごく近い未来を舞台にした、短編5編からなる。2015年の香港亞洲電影節/ホンコン・アジアン・フィルム・フェスティバルにおいて、ひっそり上映されたインディペンデント映画だったという。2015年から10年後の香港を、5人の若い監督が描いた。
閉塞感に満ちた作品たち。
1997年にイギリスの植民地期間を終了、中国に返還されてから、いかに中国共産党からの支配に攻め込まれていると、住民が感じているか。
実際、この地味な作品が、香港に於いて大ヒットすることとなり、中国政府はこの作品の上映のみならず、ネットに上げることも禁止したという。

3話「方言」の主人公はタクシー運転手。1997年以前、香港では広東語が話せない大陸人は肩身が狭かったり田舎者扱いされたりした。2025年香港では、普通話(北京語)が話せない運転手は稼ぎが悪い。かつては英語が話せる運転手は稼ぎが良かったのだけれど。子どもの学校でも普通話教育である。4話「焼身自殺者」では雨傘運動と呼ばれた学生たちの民主主義を取り戻そうという動きを思わせる。5話「地元産の卵」には紅衛兵を思い起こさせる小学生たちが、反政府的表現を監視して回るというシーンがある。
この第5話の終わり方に、かすかな希望を感じる。

他人様の国のことじゃない、と、思う。希代の馬鹿総理がいて、どんどん戦争ができる国へと変えようとしていて、言論がどうにも不自由な気配が見えて、ネトウヨと呼ばれる頭の悪い若者たちもしくはおじさんが金でやとわれておかしなツイートを繰り返しているこの頃、うっかりするとぐにゃりとこの映画のような事態になる、可能性はいつでもある。

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