我らが少女A

著者 高村薫
出版社 毎日新聞出版

この作品で合田雄一郎は57歳、警察大学校教授になっていた。
久しぶりに高村薫を読み始めて、緻密だなあ、うまいなあ、と、思っている。初期のものだって、何だろうこの銃の取り扱いについての詳しさ、とか、思った記憶があるが。うまいなあ、なんぞ一介の読者から言われる筋合いはなかろうけれど。

上田朱美という女性が殺された。同棲していた男が出頭する。朱美が使い古しの絵の具のチューブを持っていたエピソードが、供述の中で出る。前に野川公園で殺された人が持っていたものだと言っていたと。

コールドケースを扱う特命捜査対策室(って実在する?虚構?)に連絡が行き、当時担当していた合田へとつながる。

長身、ショートカットで女優志望と言っていた上田朱美、その中学高校時代の同級生たち、それぞれの視点で当時の思い出が描かれる。同級生の母たちや合田の記憶もまた。そして忘れていたこと、改めて知ったこと、少しずつ繋がって焦点を結んでいく先に。

それぞれ登場人物の嫌な部分も描かれるが、中でも一番最低な奴は、高校時代の朱美と付き合っていたらしい今では電通マンの玉置悠一だね。会田誠愛を自負するスノッブ変態男。東京高裁判事となっている加納祐介が澁澤龍彦など好きでも、それはさもありなむ感はあれど汚さは感じない。その加納祐介は、悪性リンパ腫を患い治療中。

収斂の先の結論は描かれない。推測を任される。
ADHDの男子同級生が、うーん……。それにしても薬の名前までしっかり調査して書くんだね。府中・三鷹・調布、武蔵野界隈をよく知る人には店の名前なども懐かしかったりするのだろう。

だいぶ前にactonさんもブログで紹介している『われらが少女A』、遅れ馳せの感想文?でした。ああ、高村薫サンは私と同学年という年齢だと思いますが、67歳の元美術教師・栂野節子を、老婆として扱っているね。だから何だって?いやいや。
直木賞作家だけれど、直木賞と芥川賞の違いは?を、問いたくなる作家の一人です。

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