銀の匙
出版社 小学館
中勘助のあの繊細な幼年期の思い出の、お話ではありませぬ。
八軒勇吾クン(進学校だった中学から北海道の農業高校に入学した)を主人公とする、土と労働と汗と糞と、いろんなものにまみれた高校生活物語。
机の上でのお勉強は、当然ほかの生徒よりできて、総合点ではトップなのだが、一つ一つの科目において、どれひとつとしてトップを取れない。つまり周りは皆、一つの道を目指してこの高校に入った、いわばすでにプロなので。魅力的な脇役たちがぞろぞろ。
父母の期待に応えられず、自分の道を見つけ出せず、というまことによくありそうなイマイチ優等生の、成長物語、であるらしいこれ、一巻を読んでケラケラ笑い、今出ている9巻中、7巻まで読んでしまった。2012年マンガ大賞、アニメになり、また、実写映画にもなるという。
北海道の農業高校だからなあ。鹿児島の農家と規模が違うからなあ。農家を継ぐ、という気持ち満々の、高校生たちの集団。酪農なんか、そりゃあ家族で作業するよなあ。
作者が実際に農家生まれの農業高校卒業生だそうだ。かつ、実体験を基にした『百姓貴族』というエッセイマンガも並行して書いているということだ。
で、なんで“銀の匙”なの?8巻まで読むとその由来がわかるらしい。
今では別宅庭でちょっとだけ芋とかタマネギとか育て、欅の大木から落ちた枯れ葉で庭一面がおおわれているのを見て、おお、こうやって自然に土が肥えてきた、と感動を覚えるわが身は、進学校落ちこぼれ出身である。むふふ、わかるぞ八軒クン。そしてすごくうらやましいぞ農高。だが、酪農家の家族が見るとそりゃあ全く納得のお話なんだろうなあ。
八軒、もう少し成長に時間をかけて、マンガを長続きさせてほしい、のだけど。
サボる はもはや外国語由来と知らない人がいそう。沖縄はもともとは母音が3個、って…