Poetry Dogs ポエトリー・ドッグス

著者 斎藤倫

出版社 講談社

「いらっしゃいませ」 グラスを、ふいている手が、ふさふさしていた。  バーテンダーは、いぬだった。

という書き出しで、第一夜が始まる。ふらりと入ったバーに、犬のバーテンダーがいて、突き出しに詩を提供する。その夜最初の詩は、T・S・エリオットの『アルフレッド・ブルーフロックの恋歌』。

T・S・エリオットをまともに読んだことはない。田村隆一という詩人はT・S・エリオットの影響を受けている、と何かで読んで、そうなのかと思っている程度。恋歌というタイトルだが、恋歌?この小説の中での紹介は端折ってあるので特に。で、突き出しその2が大岡信の『倫敦懸崖』、その、エリオットと、妻のことを書いたもの。

と、いう具合に、いつもだいたい3軒めぐらいにこのバーに入ると、つきだしとして詩を出され。

これ、“ラジオ深夜便”というNHKラジオの番組で紹介されて、いずれ見つけたら買う気でいた。気になるでしょう、大昔の高校生時代、文芸部員だった私としてはさ。

第2夜から、この店の客である主人公が、犬の話題を口にする。バーテンが犬なんだけど、自分の飼い犬の話していいのか?と、なんだか軸が揺らぐ気がするこちら読み手である。そして次第に、語り手がなにやら病んでいる、より病んでいく気配が見えてくる。

よーく知っている詩は、富岡多恵子の『身上話』ぐらい、読んだことがあるものが少し、それぞれ出典が記してあるので、ゆっくり図書館で探してみたいものだ。

ゆっくり、ゆっくりとしか読めない。途中から、これは結局どう着地するのか?と思う。

読み終わり、おお、そうですか、と思い、改めて読み返した。ら、まず巻頭に、次に来る波をむかえにゆきなさい尾を高くしてわたしのけもの と、村上きわみさんという人の短歌があるのだった。そうでしたか。

犬飼っている人、飼っていたひと、お薦めします。著者も詩人で、以前ここで紹介した『えーえんとくちから』の編集にも関わったと、著者紹介にありました。表紙を外すと、内側の装丁も楽しい。

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