天上の花

監督 片嶋一貴

出演 東出昌大 入山法子

最低の男、最低の女の組み合わせ。東出昌大は芝居がとは言わないがセリフが下手だと思う。入山法子演じる、ひたすら美しいわがまま女は、次第になにかしら人間味を見せてくる。観客の私は時にクッと笑えてしまう。制作側の文学青年の香りを感じるのもなんだかである。萩原朔太郎、三好達治を描いて文学青年臭が漂うのは当たり前かもしれぬが。

と、久しぶりに、心が“ケッ”と言ってしまう映画を観てしまった。

『天上の花』という萩原葉子さんの小説は1996年に出版されている。私はおそらくすぐに読んだはずだ。ともかく原作を読み返してから、続きを書くことに、と思ったが、それが本棚に見つからない。三好達治の詩集も、萩原朔美のエッセーなんて3冊もあるのに。

そしてその朔美さんがどこかに出演しているはずなので注意していた、けれど全く分からなかった。で、なんだとー、あれがー!と、のちに知る。中年の頃までは何かの雑誌で写真を見たけれど。

どうやら評判の悪い作品ではないのです。熱演です。詩人・三好達治が、敬愛し師と仰ぐ萩原朔太郎の妹、慶子に恋し、とうとう3人目の夫となる。その後はストーカー、ドメスティックバイオレンスを絵に描いたような経緯。愛している 愛している そりゃ執着だ。朔太郎の妹でなかったら?ここまで?どうなんだろう。私がケッと思い時に笑ってしまうのは、かつてのどこかで出会った者(たち?)とのある時代などを想起し、それにケッと言いたいものでもありましょう。まあそれでも三好達治の詩を嫌いにはならない。今の季節だと、 あはれ花びらながれ をみなごにはなびらながれ  と始まる「甃のうへ」桜散るころにいつもそのフレーズを思うひとは少なくないだろう。改めて読み返してみることか。

追記 越前三国で暮らし、朔太郎の妹、本名をアイと言ったひとに捧げられたものであるらしい詩集『花筐』を読む。美しい4行詩たち。

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