図書室の魔法 上・下
創元SF文庫。
双子の妹を失い、“魔女”である母から逃れて、父のもとに引き取られるが、伯母たちにより、寄宿女学校に入れられるモリ。顔も知らない父親だったが、SFファンという共通の趣味を持っていた。
モリにはフェアリーが見える。フェアリーは、人の姿をしているとは限らない。植物のようだったり、奇怪だったり、様々な姿をしている。ヒトの言葉を流暢に話すとも限らない。
のだけれど、解説にもあるが、これがファンタジーなのかSFなのか、実は母親の虐待から逃れて生きるための方法として魔法やフェアリーという姿を借りた物語なのか?好きな読み方をしてかまわない、だろう。
私は学校の図書室にかなり入り浸っていた方だと思う。が、このモリの(必ずしもSFばかりではない)読書量にはそりゃかなわない。トールキンやル・グィン初め、カート・ヴォネガット・ジュニア、ハインライン、アン・マキャフリーとかはともかく、T・S・エリオット、プラトン!はあ、プラトンの『饗宴』とル・グィンの『ゲド戦記』だけでも読もうと思ったわたくしです。
ちょっと 普通の人々 から浮いている感 を持ちながら生活していた高校生だった あなた なら、わかる気がするかもしれない。どうして同じ言葉で話せないんだろう?どうして、あっちに投げた言葉をそっちから返してくるんだろう?と、よく、思っていたあなたなら。
下巻に至って、なんだか笑えた。悩める若者を主人公にした中高生向きの本…ドラッグ、理解のない両親、セックスしか求めないボーイフレンド、アイルランドでのつらい生活――こういう本がわたしは一番嫌いだ。
というあたりとか。そしてどの主人公も、最後には必ず問題を克服し、世の中の仕組みをより深く理解したうえで、大人への階段を上っていく。 とか。わはは。
ロシア人を皆殺しにするための核兵器を造るお金があるなら、全国の図書館に回せばいいのである。図書館を充実させることに比べたら、イギリス独自の核抑止力なんてどれほどの価値があろう。とか。わははは。
言葉がちゃんと通じるSF仲間ができる。そして。
着地点が…まあ、そこしかないか。
ジョー・ウォルトンという名前の著者だが、若草物語のジョーのように、女性作家だろう。SF好きのお方、モリの日記の中で綴られる作品の感想に対してどう思うか、一読お勧め。