鹿の王
出版社 角川書店
忙しかった時期に読み始めた。帯には一気に読んだなど書いてあったが、それは無理なことで、少しずつ読み進んだ。
私は上橋菜穂子ファンである。
が、なかなか読み進むことができない。面白くないんじゃないよ。物語の構成がすごい。主人公が二人、それぞれに話が進んで行き、交差する。理解がついていかないのさ、なかなか。脳の老化をしみじみ実感。
ヴァンという男がいる。「独角」と呼ばれる捨身で戦う戦士の頭だったが、大国・東乎瑠との戦いに敗れ、岩塩鉱で奴隷となっていた。そこを犬の群れに襲われ、咬まれた者はすべて病んで死んでいき、一人生き残って逃げ出す。その途中、やはり生き残っていた小さな女の子を助ける。
もう一人の主人公ホッサルは、天才的な医術師である。
国が違えば、医学も異なる。西洋医学と東洋医学の違い、に、近い考え方の相違。あるいは宗教の違い、生活条件の違いにより、異なる考え・習慣を持つ者たちを、大国の力がまとめようとする時に起こる祖語、敵意。
今、イスラム国を名乗る集団がいる。かつて、日本が大東亜共栄圏構想のもとに自分たちの流儀を押し付けた過去があり、そのために今に至っても隣国と軋轢がある。
そして、現在、エボラ出血熱という病に確実な治療法が見つかっていない。
犬に咬まれて生き残ったヴァンは、嗅覚など特殊な能力を持ち、時に裏返る(身に入り込んだウィルスに支配され、狂犬のようになる)。
今、私たちの生きている現実世界に存在しているものと、ファンタジーの言語が混在しているので、一つ一つを、これはつまりウィルス、これは免疫のこと、などと読みながら翻訳しているのも、すらすら読み進むことができない理由の一つでもある。
身体の中で起こっている病毒と体の抵抗力との戦い、それと国と国の戦い、が、ほぼ同じようなものとして考えられている。
あまりに複雑に大きな物語が紡がれ、私はこの上下巻の物語をもう一度読み返した。医学・歴史・政治・親と子。
変質していく身体に意志によって抵抗しながら、その身体を使って希望へつなごうとするヴァン、その娘(血はつながらないが)ユナ、仲間たち。
後書きによると、人は身体の内でも、外でも、共生と葛藤を繰り返しながら生きているわけか、と思ったときにこの物語が強烈立ち上がってきた、そうだ。
地図に強いとか、視覚的に立体的に全体像を捉える能力に優れている人だと、この物語を読みやすいかもしれない。系図とか地図とか付けてくれよ、と思ってしまったよ。
サボる はもはや外国語由来と知らない人がいそう。沖縄はもともとは母音が3個、って…