シアター・プノンペン
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監督 ソト・クォーリーカー
出演 マー・リネット ディ・サヴェット ソク・ソトゥン
女性監督によるカンボジア映画。
日本の昭和20年代後半~30年代初めあたりの映画にある街の雰囲気。いかにもチンピラな若い男(ピストルを持っている)、夜遊びする女子大生。横暴な父親、病んでいる母親。
ある日、駐輪場として使われている古ぼけた映画館に入りこむ。スクリーンに写る自分によく似た美しい女優は、若いころの母親だった。
映写していた男と知り合い、その男を監督と思う娘。結末の部分が無くなって観られないというその映画を、自分が主役を演じてその部分を完成させたいと願う。
それはポル・ポト率いるクメール・ルージュによってカンボジアが支配される前年に作られた映画だった。そして、1975年から4年間の、映画人、文化人、知識人の粛清を始め、一般人を巻き込んだ暗黒の圧制時代があった。
映画の出来としては、粗い感じがあるのだが。
不覚にも、ラスト近くでうるうる。
踏みつけられた側はもちろん、踏みつけた側にも深く傷を残していることがある。
仇やおろそかにカンボジアに観光旅行になんて行けません、と思った映画。母親役の女優は、現実に1960年代からの女優で、’75年にフランスに亡命、93年に帰国したのだそうだ。
エッセイのような、散文詩のような、私小説のような、物語。これの前に『少年が来る』…