チューリップの誕生日

%e3%83%81%e3%83%a5%e3%82%a6%e3%83%aa%e3%83%83%e3%83%97%e3%81%ae%e8%aa%95%e7%94%9f%e6%97%a5著者 楡井亜木子
ピュアフル文庫

作家の名前もこんな小説もこんな文庫も知らなかった。友人から回ってきたヤングアダルト。

時は1990年バンドブームの頃、ライブハウス「キューリとミカン」に13歳から出入りしていたユーリに、オーナーの三原さんは、バンドをやってみろ、ユーリにはベースが向いてるな、と言う。中三の夏の終わり。
一人ベースの練習を始めて半年、チェルシーというガールズバンドがベースを募集しているから行けと、また三原さんに言われ、高校生にしてベーシスト生活を送ることとなる。

その文章のあちこちに、とても新鮮な表現がある。例えば、軽く小さなふわふわとした洋菓子のような彼の声は、私の耳元までやっと届いたと思うと、力尽きてぽとりと肩の上に落ちた。とか。学生時代にミスのタイトルを二度手にしているという美貌の母親を形容するのに、重箱に入った正月料理のように由緒正しい顔だち とか。「よく覚えとくんだよ。どんな男でも、好きな男は好きな男だよ」と言う、実はみんな高学歴のバンド仲間、エミさんの言葉とか。どうしようもない、という言葉が、波に打ち上げられた海草のようにあたしの頭に放り投げられた。あたしはその海草を拾い上げた。とか。

煙草もお酒も恋人も手にしている、でも高校生でもある。危ういけれどピーンと張った糸のような何かが身内にあると見えるユーリ、そして、周りにいる正しくないけれども汚くならない大人たち。

もしもこれを読んでいいなと思ったら、続編「夜が闇の内に」もどうぞ。ある種のおとぎ話ではあるだろうけれど。そして、そのあと3冊目を読んだら?な感じだったのだけど。私はユーリの2冊はとても好きでした。

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