吸血鬼と精神分析

著者 笠井潔
光文社文庫

矢吹駆シリーズ第6弾。
第1作目の「バイバイ、エンジェル」は1979年に角川から出版されているそうだが、私が初めて知ったのは、初期の3作をまとめた作品社「薔薇・黙示・天使」1990年版。分厚い。その後の作品もずっと、分厚い。読みにくい。そして、第6作の本作まで、作品の中の時代設定は2年かそこらしか経っていない。

読みにくい、と個人的に思うのはベースに現象学というものがあるせいで、短大生だった昔、現象学のカケラもわからずに講義を受けていたのだった。哲学系のことに知識の深い方には、問題ないのかも。

そうは言っても、書店でこのシリーズが目に入ると、買って読んでしまう。何故?矢吹駆探偵のファンなのさ。好きに理由は無いのさ。東洋の貴公子のような顔だち、だということになっている。

パリのアパルトマンで死体(屍体と表記されている)が発見される。傍らにDRACと血文字が書かれて。ドラキュラを連想するが、ルーマニア語では竜の意味だという。亡くなったのはルーマニアからの亡命将校だとわかる。
その後、女性の全身の血が抜かれて発見される連続猟奇殺人事件が起こる。
矢吹駆は、その一連の殺人事件に、動物の「徴」(シーニュと振り仮名、〔記号の意〕 言語学者ソシュールの用語。シニフィエとシニフィアンの恣意的関係によって成立する記号。言語学・記号学で用いられる。 → シニフィエ ・ シニフィアン by大辞林)を認める。

ほらね、読みにくいでしょ、シニフィエ・シニフィアンって?と普通思うよね。まあ知識の薄い読み手としては何度も行ったり来たりしながら読むことになる。おまけに、ワトソン的存在であるナディアが、この前作の『オイディプス症候群』事件で、トラウマを負い、鏡を見ることができないPTSD症状を呈している(のだが、私はこれを上巻しか手に入れていないので、その後のナディアに何が起こったかまだ知らないし)。

そしてナディアは、友人の勧めで精神分析医を訪れ、そこでルーマニア人女性から妙な頼み事をされる。

えーと、精神分析界では有名なんだって、ジャック・ラカンという人をモデルにした造型があるらしい。パリとフランス語と哲学と精神分析に詳しい人ならもっといろんな部分を楽しめるんだろう。残念な次第であります。あ、本格推理小説に詳しいと、エラリー・クイーンを取り込んでいることもわかるそうで。ああ、まず聖書の知識が必要だなあ。

たいそう苦労しながら読み終えると、うん、なかなか面白かった、という感想になるのだ。浅学の私でも。

ニコライ・イリイチってシリーズ最初から出てきたんだったっけ?バイバイ、エンジェルを読み返してみることか?

 

 

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