ブラインドマッサージ

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監督 ロウ・イエ
出演 ホアン・シュアン チン・ハオ グオ・シャオトン メイ・ティン

交通事故で母と、自身の視力を奪われた男の子。いつか見えるようになると言われて育ったが、それが嘘だと知って割れた茶碗でのどを切る、という、ひどい場面が初めのほうに出てくる。命にかかわることは無く、盲学校に通い、マッサージ師になる。
その職場に新しく入ってくる盲目のカップルの性交シーン。

こりゃあ感想文なんか書けない作品か、と思っていましたよそのあたりでは。

その後も、そのカップルの片割れの女性に一方的に思いを、というより性的衝動の発露を、ぶつける主人公、とか、そういう主人公を性的サービス提供店に連れて行く同僚、その行為。とか。

目の見える客から、美人だと言われる一人の従業員。美しいとはどんなことか?見えないそれを知りたい気持ちからその美人に思いを寄せる男。自分では見えないのに美人と言われる、ことを嫌う女。

先天性の人もいる、途中からの人、完全に見えない人、うっすら見える人、今はいくらか見えているけれどいずれは全盲になると言われている人。出演者も、ロウ・イエ監督作品の常連の俳優もいるし、実際の盲人もいるのだそうだ。生々しい性交シーンを演じる女性は盲学校の生徒だったんだって。

誰かが誰かを思うこと、恋すると体を合わせたいこと、思いがかなわないつらさ、それは健常者でも障碍者でも同じく経験することだろう。映画の中に、健常者は上の人、障碍者との間には隔たりがある、と言ったようなセリフがでてくる。
見えない人は相手の美貌で目がくらむことは無いから、美人がむくわれないこともある。

この映画のポスターは、みんなで笑って写真を撮っているシーンからの物なので、もう少し笑いのある映画かと思っていた。まあロウ・イエ監督と言えば私には「ふたりの人魚」が印象深く、笑いの作品では無いことは知っていたけど。そのほか「パープルバタフライ」しか観ていないからなあ…。

全体に、はっきりとしない映像が混ざっている。閃光は見えるという主人公の視点を象徴しているのか、後半にボコボコに殴られたあとの映像の乱れは、殴られた脳への何かの影響で少し見えるようになったのか?どうなのか?幻視か?よくわからない。

みんなバラバラになり、それぞれの人生。最後にちょっと救いのあるシーン。

台湾金馬奨受賞作品。グイ、と踏み込んでくる生々しさへの抵抗はあれ、良い映画でありました。音楽がいい。最後に流れる『他妈的』という歌、歌詞がこの映画のために作られているようだけど、そもそも中国語で 他妈的 と言うのはいわゆるfuck youとかそういう罵倒語なのだが。

あれ?主人公を演じたホアン・シャオマーは、陳凱歌監督の「空海 KU-KAI」で染谷将太とともに主役に抜擢された、のだそうだ。

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