紙の動物園

著者 ケン・リュウ
ハヤカワ文庫

11歳の時に家族と一緒にアメリカ合衆国に移住したという、1976年中国生まれの作家。ハーバードでは英文学を先行していた、でも現在は弁護士・プログラマーとしての顔も持つ、のだそうだ。

短編集、の中の表題作「紙の動物園」を好きな人は、この作家を追いかけることだろう。母親は、父親がカタログで選んでアメリカにやってきた中国人だった、という設定。英語が堪能な香港人であるとの触れ込みは大嘘だった。
母さんが折る折り紙の動物たちは、リビングを走り回った。
折り紙というと日本の物だと我々は勝手に思いこんでいるが、韓国のドラマや映画にも折り鶴は出てくるし、中国にもあるのだ。

で、折り紙の動物がリビングを走り回るのだよ。

ああ、これSFだった、と思うけれど、いやいやサイエンスはどこに?ファンタジーでしょう。

子どもは、普通の家庭、普通のおかあさんが好きなものだ。言葉がうまく話せず、違う文化のもとに生きている母親を疎ましく思う時期の男の子。

中国語で話すことを拒絶された母親が、その最後に息子に宛てた中国語の手紙、それも虎の折り紙に書いてあった、その文化大革命を挟んだ人生のこと、孤独な人生の中で、息子が生まれ、うれしかったこと、少し中国語を憶え夫婦の通訳してくれた頃のこと、中国語を拒絶され、得たものをもう一度失った思いだったこと。

そのほかの話も、アメリカでアジア人であることがベースにある物語。「太平洋横断海底トンネル」では、日本と中国の近代史の中で日本が別の選択をして、裕仁天皇がハーバート・フーヴァー大統領に太平洋横断海底トンネル構想を持ちかけた、という設定。

ファンタジーじゃないか、と思ったら、単行本で出版されたものから、文庫化にあたってファンタジー篇とSF篇に分けたのだという。

とても好きな作品、なのだけれど、私には読後がもの悲しい。せつない。わかりやすいものでもない。

SF篇「もののあはれ」も読みましょう。

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