細い目

監督 ヤスミン・アフマド

出演 シャリファ・アマニ ン・チューセン

金城武が香港の映画スターとして認識されていた頃、と言うのは1995年頃から2000年頃か。その金城武のファンのマレー系少女オーキッドが、露店で香港映画VCDを売る華人少年ジェイソンと出会う。互いに一目惚れ。そこでオーキッドが買うVCDは『報告班長』だったが、これは台湾アイドルとして出演している台湾映画。オーキッドは『天使の涙』が大好きで、まだ『恋する惑星』は持っていなかった。追いかけてきて、『恋する惑星』VCDを渡すジェイソン。日本ではビデオテープだったけれど、中華圏ではVideoCD、荒い画面の海賊版が多かった。

デートするようになり、クローゼットの裏にたくさん貼っていた金城武のポスターや切り抜き(日本の雑誌からの物が多くて、私もだいたい目にしたことがあった)を外し、二人で撮った写真に替えるオーキッド。

マレーシアという多民族多言語の国の話は、日本人からすると驚きが多い。オーキッドとジェイソンは基本的に英語で会話する。中華系でも広東語圏の人が多いマレーシアだが、ジェイソンが声に出して読んでいるのが北京語、それは、インド人の詩人の詩を翻訳したものだった。それぞれの言語を、日常会話レベルなら聞き取ることはできるだろう。プラナカンと言う言葉があり、数世紀にわたって移住してきた中華系の移民の末裔を指すそうだ。そしてその多くは福建省からの移民だとかで、福建語も使われている。

本来の住人であるマレー人の方が、移民よりも恵まれた生活をしているようだ。民族、宗教以外に生活格差の問題もあり、異民族の交際や結婚には障害が多い。オーキッドの家は、お手伝いさんと母親が友達のように接している珍しい家庭であり、かなり理解があるのだが。

そのお母さんとお手伝いさんが、周潤發の『上海灘』のテーマ曲を歌ったり、香港映画好きにはなかなか楽しいシーンいくつか。

ロミオとジュリエット、ウエストサイドストーリー、日本では泥だらけの純情、まあその系列のお話じゃないか、と思うか、それはそうなんだけど、と思うか、分かれるだろうな。

2009年7月25日に急逝したマレーシアのヤスミン・アフマド監督、母方の祖母は日本人だと言う。『タレンタイム 優しい歌』の次回作としてその祖母をモデルとした企画があったそうだ。惜しいことだ。

 

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