ハンチバック

著者 市川沙央

出版社 文芸春秋

第169回芥川賞受賞作。hunchback せむし。

18禁TL小説、というものの市場があるんだなあ、ティーンズラブったってバージョンは幅広いんだと知る。ともかくそういうものなどを書くことで収入を得ている、湾曲した背骨を持つ井沢釈華。インセルって?=異性との交際が長期間無く、経済的事情などで結婚をあきらめた結果としての独身。involuntary celibate。スパダリ=スーパーダーリン、ナ-ロッパ=ファンタジー創作、『小説家になろう』界隈で使われる中世欧州圏風世界。ヴィラン=敵役、悪役、villan。かなり刺激的な内容の中に知らない言葉が次々出てくるので、スマホで調べながら読むことになる。

筋疾患先天性ミオパチーにより症候性側弯症を罹患し人工呼吸器と電動車椅子を常用する、という作家のその姿が、受賞挨拶をしているのを見た。紙の本を読むことが困難であること、障碍者の受賞が初めてであることについて考えてほしいこと、などを聞いた。妙なユーモアセンスとともに。是非読みたいと思った。今までのところ健常者として生きている私は、紙の本のほうに慣れている。目が見えてもそんな風に紙の本を読むことの困難を抱える人のことなど何も気づかなかった。作家と同じ症状と思われる主人公は、iPad miniを使い、WordPressにテキストを打ち込む。こたつ記事=直接取材することなくウェブサイトやテレビ番組やそんなものから拾った情報のみによる記事、とか、実体験無しでの性描写とか。

100頁に満たない短い小説なので、関心がある人は読んでください。最後の方で、え?となるのだけれど、その受け止め方はそれぞれでよいのでは、と思う。

この作家の次回作品は、やはり障碍者の視点によるものか、どうなんだろう。

コメントをどうぞ

コメント(*必須)

CAPTCHA


*