十八の夏
双葉文庫
最初の『十八の夏』が桜、次の『ささやかな奇跡』は金木犀、それから、ヘリオトロープ、夾竹桃、と、花がモチーフになっている短編集。ジャンル分けするとミステリーということになるらしい。
夜、布団に入ってから眠たくなるまで読むのが子どものころからの習慣なので、二つの短編を読み、ああ、こんな気持ちいいミステリー作品があったんだなあ、と思って心地よく眠りについた。
たっぷり水を含ませた筆を走らせたような、淡い色の空。川面におずおずと戯れる日の光。向かい側の土手には五分咲きの桜並木、
と始まる『十八の夏』。浪人生の信也が、桜並木の反対側の土手でスケッチする女性の手から離れた画用紙を追いかけて拾う、ところから、その女性蘇芳紅美子と知り合うのだが。
作家は詩集や絵本、童話も書いている人だそうだ。
ひとひねりふたひねり、捻りの効いた展開。切なくも羨ましいぞ、と、青春の、ある時間。
で、次の晩に、残りの2編『兄貴の純情』『イノセント・デイズ』を読んだのだ。最後の作品が、サスペンスな痛ましい作品で(終わり方は救いのあるものとは言え)、変な夢を見て、変な時間に目覚めてしまった。