鉄の枷
創元推理文庫
資産家の老女が亡くなる。睡眠薬を飲んだ上、浴室で手首を切り、頭に昔の責め具(スコウルズ・ブライドル)をはめられ、そこにはイラクサと野菊が挿してあった。
最近書き変えられた遺言により、遺産は主治医のセアラに残されたことがわかる。セアラは困惑し、老女マチルダの娘と孫は怒る。気位高く嫌われ者だったマチルダは、自殺か?殺されたのか?
イギリスの作品だなあ、と思う。
あーれー、こんな面白いものを敬遠していた!と思いながら読み進んだ。読み進むほどに、マチルダの日記により明かされていく事実。それぞれの人物の造型が、一筋縄ではない。いや、人ってそういうものよね、表層でわかったような気になってしまうことの不遜、でございますよね。
DVなどという言葉が無かった時代にも、おぞましいことが行われており、そのことによって損なわれる人生。そこにあっても芯の輝きを失わなかったことを見抜く画家。この、セアラの夫であるややこしい画家、初めはやなやつの姿で出てくるんだ、ありがちだよねえ、と苦笑するような(一般にはあまりいないかもね、私には心当たりがちらちらあるけど)。それから、なんだかすぐれた洞察力・感性を身に備えている(若くなくカッコ良くも無い)警察官。
決して最後のページだけは先に読まないでください。
積んどいたM・ウォルターズを読むこと2作目、友人のものをいつから借りてるんだか、2002年刊。老人介護していたときには読めない(時間的心理的に)本だった。
これもリストに入れることにします。
読むのは何時になるかは分からないけど・・・
ただ今、“破壊者”にかかっています。今点検したら、驚いたことに、M・ウォルターズだけでもあと5冊友人から借りたまま。まあ、向こうの家にも私の蔵書であるべきものが何冊あるんだか、なのですが。