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鹿児島学

ファイル 240-1.jpg著者 岩中祥史
出版社 草思社

県民性研究の第一人者だそうだ、この著者。

県外に住む弟が、この本を面白がっていたので、手に取ってみた。
山形屋は、なぜ山形屋という屋号なのか?初代が山形県出身だったらしい。何故渋谷でおはら祭りをやっているのか?かつて渋谷には薩摩藩の屋敷があった。で、その時代よりずっと前、鎌倉時代、相模国を領有していた渋谷氏が、北薩摩の地頭職を得た。とか。
で、おはら節と東京音頭の前走はほとんど同じとか。で、東京音頭の作詞は西條八十、作曲は中山晋平、種子島生まれの芸者・喜代治という人がおりましたとさ。中山晋平が喜代治をいたく気に入りまして・・・なんだかんだ。

まあこんな調子で、知ーらなかったわー、ないろいろが学べます。氷白熊の起源について、“むじゃき”と“セイカ食品”は全然別の主張をしているらしいよ。

鹿児島の住民の皆さん、ちょっと郷土の雑学仕込んでみませんか?広馬場通りの住民なんて、悔しがると思うよお、あっちに市電が通っていたら!って。

BOOK
comment(0) 2013.02.15 15:20

ライフ・オブ・パイ 虎と漂流した225日

ファイル 239-1.jpghttp://www.foxmovies.jp/lifeofpi/
監督 アン・リー
出演 スラージ・ジャルマ イルファン・カーン タブー ライフ・スポール

このタイトルを見て、どんなストーリーを想像するか?例えばターザンとか、少年向け冒険物語?

冒頭あたりと最後の方に流れるインド音楽(女性ボーカル)が美しい。

創作に行き詰まった作家が、ひとりのインド人男性パイのもとを訪れる。彼が体験した話を聞くために。ヒンドゥー教徒で、クリスチャンで、イスラム教徒でもある(!)男が、なぜパイ“π”と呼ばれるようになったか。そして、インドで経営していた動物園と共にカナダに移住しようと、家族で日本の船に乗り込む。嵐に襲われる。

救命ボートには、パイのほかにシマウマ、ハイエナ、オランウータン、ベンガルトラが乗っていた。やがて、ベンガルトラのリチャード・パーカーとパイだけが残される。肉食獣である虎。
救命ボートだから、非常食や水は積んであった。が、自らが食べられる状況を阻止するためには、虎の食料を捕獲しなければならない。

映画館で、3Dで、見て欲しい。水中の(幻想の)シーンだけでも、見た甲斐がある。

ラストの展開が、え?え?え?そういうこと?え?と。

台湾出身の李安監督、私にとっては「ウェディング・バンケット」「恋人たちの食卓」「グリーン・デスティニー」など、そして「ラスト、コーション」などがすぐに浮かぶが、「ハルク」や「ブロークバック・マウンテン」ほか、今や世界の名監督、その舞台は地球上のどこに広がっていくか。

本作の撮影はインドと台湾で行われ、台湾の、元空港だった場所に巨大なタンクを作って海の撮影をしたという。そうだったのか。どうやって撮影したんだろうと思いながら見ていた。

宗教的な、大人の冒険物語です。子供が見るなという意味ではなく。

MOVIE
comment(2) 2013.02.12 09:03

桃さんのしあわせ

ファイル 238-1.jpghttp://taosan.net/
監督 アン・ホイ(許鞍華)
出演 ディニー・イップ アンディ・ラウ チン・ハイルー

久しぶりに広東語の香港映画を見た。あー懐かしい!
そしてまたなんと豪華キャストであることよ!香港映画ファンなら、お、わ、と声が出てしまうはず。

映画界でプロデューサーとして活動している独身男ロジャー、その家に少女の頃から60年メイドとして働いてきた桃さん。雇い主だった家族は世界のあちこちに移住して、残るはロジャーのみ。綺麗好き、料理上手の桃さんだ。
ある日、桃さんが脳梗塞で倒れる。不自由にはなったが、重症ではない桃さんは、老人ホームに入るという。ロジャーの知人(黄秋生)が経営しているホームに入る。個室とは言え、入口はカーテン、辛うじて最低限のプライバシーを守られた部屋。土地自体が狭い香港では、こんな感じなのだろうなあ。清潔好きの桃さんにはきびしい環境。

ロジャーはしばしば中国に出かける。事実、現在の香港映画界は、中国資本に頼っていて、ほとんど北京語であるという状況だ。あれ?ツイ・ハーク監督?こっちは?顔が見えたら、サモ・ハンだー!その二人が中国の映画関係出資者の前で喧嘩を始めるシーン、実は予算を出させる演技という設定。

ロジャーは忙しく飛び回る中でも桃さんを訪ねてくる。息子と思われるほどに。
桃さんも、次第にホームに慣れて何かと入居者に手を貸す。その桃さんにちょっとした金を借りに来るじいさんキンさん役は、チョン・プイ、これもヤクザな映画やいろいろ見かける昔からのスターさん。この、女好きのじいさんが、最後に泣かせる。

映画のプレミア上映に桃さんを伴って出かけるそのシーンには、本物の映画関係者がたくさん出ているらしい。あーそれがすぐわかるまでの香港映画通ではないのが残念。
医者の役でちょっと出てくるチャップマン・トーとか、大女優さんが本物だとか、は、わかるけど。

許鞍華監督は、日本人のお母さんを持ち、マギー・チャン主演で日本を訪れる自伝的な作品『客途秋恨』がある。私は『女人四十』という秀作でファンになった。
主役ノディニー・イップは、70年代〜80年代にかけて歌手だった人。

ところで、桃さんと書いてタオさんと読ませている。しかし広東語読みではトーさんになる。原題桃姐、映画の中でもトーチェ、と呼びかけていた。

ロジャーの立場も、桃さんの立場としても、今の私には身にしみる、かつての香港映画らしい香港映画でした。

MOVIE
comment(0) 2013.01.18 10:56

アナザー・ワールド 王国その4

ファイル 237-1.jpg

著者 よしもとばなな
新潮文庫

アリシア・ベイ・ローレルの『地球の上に生きる』は、二十歳頃の私のバイブルのような本だった。いわゆるヒッピー生活、自分で手作りする、大地と主に生きる生活。当時実際に周りにいたヒッピー的な人たちの仲間になりたいと思ったことは全く無いけれど。

そのアリシア・ベイ・ローレルが表紙の絵を書いている。・・・ってすごい。

『王国』という3部作は、薬草茶を作る名人だったおばあちゃんと山で暮らしていた雫石という名前を持つ女の子が、都会へ移り住み・・・という物語。占い師でゲイの目が不自由な男・楓のアシスタントになって、少し浮世離れした少しカルトな展開、守る、守られる関係。

で、本作は、その雫石の娘、ノニの物語である。ノニの父は楓、そのパパは亡くなり、パパを愛していたパパ2がいる。
舞台はミコノス島。そこで運命の出会い。

こんな説明に意味がない物語なのですよ。
実は、王国3部作には今ひとつノレない私であった。が、ノニのこの物語はすっと読めて、うん、おいしいお水、という感じ。

私の周りの奄美がルーツという人の中には、ちょっとした超常現象、スピリチュアル体験が身近に起こっている、ということがさほど珍しくない。霊の存在を感じるとか。
沖縄や台湾も舞台になるこの物語の、ファンタジーな展開は、その場所、その人の資質によっては、ありえなくはない気がしてしまうのです。

好きな人、わからない面白くないという人、分かれてしまうでしょう。

まあ、だからアリシアのあの手書き文字の本を読んでなにかその中の手作りを試したことのある人なら、この物語(全然どこにもたどり着いていない話だけど、今のところ)が好きなのではないかと思います。

自分の人生を生きる、とは?という話、かな。

BOOK
comment(0) 2013.01.15 10:29

レ・ミゼラブル

ファイル 236-1.jpghttp://www.lesmiserables-movie.jp/
監督 トム・フーパー
出演 ヒュー・ジャックマン ラッセル・クロウ アン・ハサウェイ

2時間50分が全然長くなかった。
以上、感想文終わり。としたいところだ。

ヴィクトル・ユゴーの名作を、キャメロン・マッキントッシュが優れたミュージカルにし、私は舞台を見る機会はなかったけれど、日本でもレミゼと省略されるこの作品のメロディはよく知っている。島田歌穂サンの歌とかで。

「ああ無情」という翻訳タイトルの、小中学生版しか読んでいなかったらしい私は、そうかこんな時代背景だったか、と今更に知る。フランス革命・ナポレオン・王政復古。
詳しい時代背景はこちらをどうぞ。http://www.d9.dion.ne.jp/~natsukon/haikei.htm

ヒュー・ジャックマンといえばX-メンしか知らない方(私のことですが)、彼を始め、みんな歌ってるよ、どうぞ劇場へ!

MOVIE
comment(0) 2013.01.09 13:24

有りがたうさん

ファイル 235-1.jpg監督 清水 宏
出演 上原謙 桑野通子

1936年、昭和11年作品。
録画しておいた、NHKBS山田洋次が選ぶ映画の一本。

バスの運転手・上原謙が、道を避けてくれた人に必ず「ありがとう」と声をかけていくからあだ名がありがとうさん。ありがとー と平版に言う。
まことにのんびりと語る客たち。その頃の伊豆の山の中ではこんなにゆっくりと喋っていたのか?演出か?とにかくゆーっくりと話す。うまいとも思われない。

客にはそれぞれ事情があることがその会話の端々からわかってくる。娘が都会に売られていくところだったり、いかにも水商売風の女がいたり、口ひげの傲慢な態度の男が、実は夢見た事業に失敗して娘を売ったことが知られたり。まあ、個人情報の保護されないことこの上ない話だ。

そして、バスに乗らない客たちもいる。ただ運転手に伝言を事付ける。なんだろうこの白い衣装の女たちは、と思ったら朝鮮人労働者で、そこの道路工事が終わったら、そこを歩くことなくまた次の現場に行くから、父親の墓に参って欲しいと頼む。

なーんとなく、運転手が、売られていく娘のことを気にかけている様子がうかがわれる。運転手は、中古のバスを買って独立するために金を貯めていることを、すぐ後ろの席の水商売女に語っている。

女が運転手に囁く。「ここを出て行って帰ってくる女はいないんだろ?その金で娘さんを自由にして嫁にしてやりなよ」

帰り道は、なにやらほのぼのなのでした。

シュールなまでにのどかな、おとぎ話なような、でもその時代が見える様々なことたち。あーびっくり、な、2・26事件の直後に公開されたというロードムービー、機会があったら見てください。

MOVIE
comment(2) 2013.01.05 11:44

あなたも奔放な女と呼ばれよう

ファイル 234-1.jpg著者 内田春菊
講談社文庫

新年の初感想文に、こんなタイトルも何ですが、まあ2013年初めに買った2冊の漫画と一冊のミステリーのうちの一冊がこれでしたんで。

内田春菊さんというマンガ家・歌手・女優・小説家さんに、なんだかややこしい関係のお子さんたちがいることは知っていたが、これを読んでもすらっと分かることもない、くらいだ。それぞれ父親が違う、一緒に暮らしていた男ではない男の子ども、3度目の離婚をした年下の男との間にも子ども二人、で、その男とまだ同居している(今現在の情報では同居解消したらしい、もっと若い恋人がいるらしい)。

うーん、でもねえ、男の趣味良くないというか、DVマザコンヒモ、そんなのばかりを引き寄せてしまうあなた・・・と、言いたくもなる。そんなのが別れるとなると莫大な慰謝料請求するのか。別れるよね、そりゃ。別れる前にほかの男がいて、ややこしくなってるだけだけど。

女が浮気することがすごく珍しいと言われる、が、親に愛されなかった私にとっては病気の人が他の医者をセカンドオピニオンとして求めるくらい切実な問題

戸籍制度は日本と台湾と韓国にしかないらしく、韓国は2008年1月に廃止された
おお、あの、二世代三世代同居が当たり前であるらしい(韓流ドラマによれば)、儒教国韓国で廃止されたのか!

フランスでは書類上では婚姻していないいわゆる事実婚が多い ということは有名だよね、ゴクミとジャン・アレジもそうだし。それで、権利などの差別は何もない。2006年時点で婚外子の割合が50.5%というお国。同年で日本では2.3%だって!05年の数字でスウェーデン55%、イギリス43%、アメリカ37%とのこと。ユニオン・リーブル自由な結合と言うそうです、書類上で結婚してないカップルのことを。で、25歳〜49歳の女性の80%以上が働いているそうです。

斎藤学さんという人の言葉として出てくるこの言葉、「仕事しているのが珍しい(結婚後)」ということは、社会保障としての結婚が多いということですよ
結婚は何のためにあるのか 離婚しにくくするためですよ 恋愛は恥かくことの連続ですから

恥かくことの連続しかしてない、婚姻したことのない私は、別に奔放のススメなんてするつもりはないけど、選択は自由であって欲しい。男は、とか女は、とかいまだに言いたがる人がいるけれど、そう言う人同士がカップルになるなら何も問題はない。いろんな形が有りうることを認めて、制度を整えて欲しい。だって、現実にいろんな人がいるんだもの。

あ、深い愛で結ばれた人たちのエピソードもありましたよ、結婚を全否定しているものではありませぬ。

BOOK
comment(0) 2013.01.03 12:54

神去なあなあ日常

ファイル 233-1.jpg著者 三浦しをん
徳間文庫

高校を出たら、まあ適当にフリーターで食っていこうと思っていた、平野勇気。卒業式を終えたら、担任から就職先を決めたと告げられ、行き先は三重県の山の中、林業の現場だった。
山仕事の天才ヨキや、広大な山林の地主清一や、美女直紀など、都会では出会うことのない人々に囲まれて、成長していく勇気くんであります。

と、話はそんなようなことですが、森林を守ることとは実に大変な作業です。かつては当たり前に行われたであろう事事を今につないで作業して行かなくては、森林として育たないのであり。
そんな中では、山の神様だか女神さまだかが出現しても不思議はないかもしれず。神隠しとてありえなくもないかもしれず。

たまたま、自宅から車で30分足らずの場所にあるちょっとした坂上の無人の家・庭を管理する身となってから、大きな樹木に惹かれるという個人的事情がありまして、ストーリーよりはそこに描かれるまさに日常に、ささやかな共感を覚えたりするのであります。私はまだヒルやダニに出会ってはいないけれど、蛇やムカデやヤスデさんにはよくお目にかかる。私は高所恐怖症で脚立の類は好まなかったが、梅の大木のためには、そこそこ大きな脚立に登って高枝バサミで実をちぎる。いや、杉や檜の枝打ちの話と比べ物にはなりませぬが。チェーンソーの目立て?教わりたい。
あー、その家に住んでいた伯母が、どこそこには仏像(だかなんだか)が埋まっていて近づいてはいけなかったのに掘り返して作業した人達が次々病の床に着いたとか、タヌキさんに騙されたとか、いろんな話をしてたのになあ、まともに聞かなかったなあ、惜しいことしたなあ・・・。

都会育ちの林業見習いが短期間にそんなに成長するのか?そこを見抜いた担任だったのか?まあ細かいことは許しましょう。続編“神去なあなあ夜話”読みたい私です。

BOOK
comment(2) 2012.12.16 13:15

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