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桃色東京塔

ファイル 232-1.jpg著者 柴田よしき
文春文庫

捜査中に容疑者を死なせてしまい、出世の道を閉ざされた警視庁捜査一課の刑事・黒田岳彦、そして過疎の村にあって県警捜査課係長の小倉日菜子は、検問中に暴走する車にはねられて夫を亡くしている。
ある事件の捜査を通じて知り合った二人。
少しずつ恋愛になるようなならないような微妙さで、東京で、あるいはどうやら茨城の限界集落であるらしいどこかで、事件が起こる、互いを知っていく。
それぞれのバックグラウンド、東京近郊のベッドタウンで故郷というほどのものを持たずに育った男、過疎の村で育ち、そこで勤務している女、事件を起こした人間にもそれぞれに背景があり。

帯に遠距離恋愛警察小説とあって、それに違いはないのだが、丁寧な、細やかな、視点、描き方が、私にはやはり好ましい。

まあそんなにいわゆるハッピーエンドな恋愛とは行かないのが、今までジェンダーの問題などを小説の中に取り上げてきた柴田よしきらしいところで。

東京の刑事さんはスニーカーを履いているのか?と問うシーンがあったのは、あれは合田刑事のことだよね、高村薫の。

ピンクリボンデー(乳癌撲滅の)には東京タワーがピンクにライトアップされるんだって。そういうタイトル。

BOOK
comment(0) 2012.11.28 18:27

三匹のおっさん

ファイル 231-1.jpg著者 有川浩
文春文庫

還暦を迎えて退職、再就職先はゲームセンター・・・と言わずアミューズメントパークであり、剣道の道場持ちのおっさん1→清一、赤提灯『酔いどれ鯨』の前店主で柔道歴が長いおっさん2→重雄、小さな工場をやっていて、実はスタンガンその他身に付けているおっさん3→規夫、が、その三匹である。
還暦の祝いに今どき赤いちゃんちゃんこ・赤い帽子のセットを送って気が利いてるつもりの嫁なんぞのお相手をしなきゃならないわけね、大変だ。

さて、その三匹が私設町内見回り隊を結成、小さな町内にも実は犯罪は隠れているのですな。痴漢(というよりはもっとひどいが)、カツアゲ、詐欺、動物虐待、表立つことなく撃退していく。表立ったら困るのだ、三人の中で一番細っこい規夫が普段からどんな道具を身につけて生活しているかバレちゃあ大変。

キヨの孫・祐希やノリの娘・早苗や、周りの人間たちの生き方にも次第に影響を及ぼすことになっていく。あ、その前におっさんのファッションに多大な改良が。

実はつい先日そのカンレキ別名華甲を迎えたワタクシに、義妹がプレゼントしてくれたのは、朱色と柿茶色をブレンドしたような、いい秋色のロングベストでした。

続編『三匹のおっさんふたたび』も、とっくに出ている。読みますよ、そりゃ。
あ、ただ、剣道5段の父と6段の弟を持つ身としては、剣道がそうそう実戦に役立つとは思えまへんな。

BOOK
comment(0) 2012.11.25 13:57

ロード&ゴー

ファイル 230-1.jpg著者 日明恩
双葉文庫

たちもりめぐみ と、うぶかたとう はいつも書店でその名を見かけると頭の中でつぶやいてしまう。間違っていないよね?と自分に問いかけると申しますか。

救急車のお話。救急車出動、帰りに口から血を流して倒れる男を目撃、収容した途端、その男に救急車ジャックされ。
救急車を運転している生田は元暴走族、同乗しているのは救急救命士の森栄利子、隊長筒井。
子供が泣き出すご面相の生田が、実は誠にカッコいい!脇役たちも例えば生田の妻、こわもての消防隊員、いい!
救急車に外から指示する男がいる、ジャックした男はその指示者に脅されているのだという。止まると遠隔操作で救急車を爆破すると。

受け入れてくれる病院がなくてたらい回しにされ、挙句に手遅れになる、という類の新聞記事などを目にすることがある。逆に、救急車をタクシー代わりに使う不届きな人の話もある。

救急医療に関わる様々な問題。

無線を傍受している女の子。犯人からの電話をいたずらだと思って無視してしまった放送局員。

一気に読み進んだ。いずれ映画化されるだろう。非常に映像的、例えばあの「スピード」を文字で追いかけているような作品であり、且つ、直接には無関係な人間の人生にも深く影響する部分も描かれ、面白い。

「鎮火報」「埋み火」という日明恩の消防シリーズの、スピンオフ作品。再度読み返してみたい(見事忘れ去っているので・・・)。

BOOK
comment(0) 2012.10.16 12:37

王朝の陰謀

ファイル 229-1.jpg

http://www.dee-movie.com/
監督 ツイ・ハーク
出演 アンディ・ラウ リー・ピンピン ダン・チャオ レオン・カーフェイ カリーナ・ラウ

インディ・ジョーンズと指輪物語が合体したかいな、という映像で、唐王朝の時代が描かれる。則天武后の顔を模した巨大な仏塔の建立、そのさなか、人体発火事件勃発。体の内部から発火しているのだ。
投獄されていたディー判事が、則天武后の命により捜査にあたる。則天武后の側近である男装の麗人チンアル、そしてペイ・ドンライと共に。

地下の国(裏社会)があったり長い針を数本刺して顔を変えたり鹿が喋ったり、ひゅんひゅん空中を飛ぶくらいは中華なアクション映画の常識だし、人体だって発火してなにか問題あるか?な、お話であるが、そこは権力争いの世界、犯人を探さねば。

則天武后を演じるカリーナが、美空ひばりサンによく似ている。ように思える。
麗しのリー・ピンピンは、このところの尖閣騒ぎで、反日の態度を見せたのだが、あー思い出した、昔、F4の誰かと共演、恋の噂が立ったが、当時台湾在住日本人タレントのGFが騒いで元サヤ、とかそんなスキャンダルに見舞われたんだったっけ、そりゃあそんな経緯があれば反日感情だって湧くってもんかも。

アクション監督はサモハン。
ディー判事は実在の人物だそうだが、オランダ人作家によりシリーズ化されている探偵小説、日本でも出版されているらしい。

謎解きは・・・あー、そういうこと、なんだが、まあとんでもないスペクタクルぶりは、前日にホラーに近いきびしい作品を見た身にはスッキリ楽しめました。
米タイム誌が選ぶ2011年ベストムービー第3位だそうです。

MOVIE
comment(0) 2012.09.21 12:59

少年は残酷な弓を射る

ファイル 228-1.jpghttp://shonen-yumi.com/
監督 リン・ラムジー
出演 ティルダ・スウィントン ジョン・C・ライリー エズラ・ミラー

子育てストレスの悪夢に満ちた悪い遊園地にいるような作品。妊娠中の女性には決してお薦めしない。中途半端に反抗期の息子に手を焼いているお母さんだったら、むしろうちはまだマシだと安心できるかもしれない。

息子ケヴィンは、幼い頃から母親エヴァにだけ反抗する。
あまりにクソな態度に、観客としては笑ってしまうほどだ。なんだろう、極端なマザコンの姿とも見えなくもない。

父親が弓のおもちゃを与える。

今と過去を跳びつつ映画は進んでいく、何があったの?と、途中つぶやいてしまっていた私(観客が少なくてよかった、少なすぎたけど)。
そして、事件の日へと向かう。

映画のタイトルが、私を映画館に引っ張っていったのだが(atconさんのブログ「整形前夜」穂村弘の項参照、と言いたい)、最後に、細い細い一筋の救いが・・・あるようにも思える。
どうして?答えの出ない問いを、私も問いたい。原題は“We need to talk about Kevin”

音楽がいい。レディオヘッドのジョニー・グリーンウッドによる。

蛇足・アジアでリメイクするなら、ケヴィンはチャン・グンソク、と、こんな恐ろしい映画を見ながら、イメージしていた。

MOVIE
comment(2) 2012.09.19 20:35

さらば復讐の狼たちよ

ファイル 227-1.jpghttp://saraba-ookami.jp/top.html
監督 姜文
出演 姜文 周潤發 葛優 カリーナ・ラウ 陳坤

誰だよこんな日本語タイトル付けたやつ・・・!香港アクション映画みたいなもんだと思って見に行った人もいるだろね、
原題“譲弾子飛”は、はじめの方で馬列車を襲ったシーンで姜文が答えるシーンでは、確か「まあ見てろ」と字幕が出ていたが、もう少し文字通りにかつ意訳すると、好きにタマに飛ばせてみろ ぐらいかな。

大陸の二大名優、姜文・葛優、そして香港スターにしてハリウッド俳優の周潤發。このメンツにして、なんと中国でもこんなマカロニウエスタンみたいな作品を作(れ)るようになったもんだ。
詐欺師やらせりゃ天下一品の葛優が、県知事として(金で買った地位である)妻カリーナ・ラウと書記とともに鵝城に向かう馬列車の中で食事中である。姜文率いる盗賊達が襲う。
で、詐欺師葛優は、亡くなったのは県知事だと言い、姜文に、県知事になれば金儲けできるとそそのかす。鵝城では周潤發が街を牛耳っている。

丁々発止。悪役だが周潤發もいい。ハリウッドではこの人を生かしてくれない。が、そりゃ監督だもの、姜文ダンナが一番カッコいい役柄となっていて。

実は鵝城の県知事じゃなくて康城の県知事の発令だったとわかるシーンがある。カンヌのことを大陸では康城と書きますな。カンヌ映画祭で姜文はグランプリを取っていますな、『鬼が来た』で。そういう遊びでしょうか?
『鬼が来た』は、確か今でも大陸では上映禁止作品のはずですが、今回の作品ではスレスレの遊びを試みていらっしゃる姜文監督。住民たちの描き方とか。馬列車と書いてマーリエチャーに近い発音をするのだが、馬列主義と書くとマーリエチューイと読み、つまりマルクスレーニン主義だそうで。

なんぼ中国で大ヒットしたといってもまあ日本ではそうそう人は入らないのは、まあ当然ですが、それにしたって、平日の昼間だったからって、天文館シネパラ、一人で見ました。こんな時、昔だったらPノニカのNカヤマさんが前の席にいたりしたなあ、などと思い出しつつ。
そして一人、面白かった、と呟きました。

MOVIE
comment(0) 2012.09.12 21:02

蒼林堂古書店へようこそ

ファイル 226-1.jpg著者 乾くるみ
徳間文庫

ライトミステリー界では古書店ものが流行り?

ビブリア古書堂と違って、こちら蒼林堂はミステリー専門。店主は書評家でもある林雅賀、百円以上の売買をすると珈琲サービスがあるこの店の常連、バツイチの大村龍雄・高校生柴田五葉・小学校(美人)教師茅原しのぶ、途中から加わる木梨潤一が、ちょっとした日常の謎(北村薫の円紫さんでおなじみの)の謎解きを楽しむ。といっても大概の謎は店主によって解かれるが。

ま、そこでの話はささやかな謎解き。大学のミステリー研究会のメンバーってこんな話をしているのかな?ようそんなたくさんの小説をご存知で。各章の終りには、林雅賀名義で「本とも」掲載とする書評?書物案内?があって、例えばヒッチコック映画の原作、そしてヒッチコックの影響を受けて書かれたミステリー、などが紹介される。そこが面白い。近所のツタヤでお薦め本になっていたのも頷ける。次これ読んでみたい、とつい思うもの。

で、最後あたりには、茅原しのぶサンの行動を注意深く観察していた人にはわかるか?わからないと思うよ、ひとつ謎解きされます。

昔から同じミステリーを何度でも読める私だった、しばらくたつとコロっと忘れるから。さすがに“Yの悲劇”はなんとなく覚えているが、“Xの悲劇”って?というほどのひどさである。読み返したいものもたくさん出てきたが、私がまず次に読んでみたいのは、戸板康二著・中村雅楽探偵全集5『松風の記憶』創元推理文庫かな。

で、乾くるみサンを読んだのは初めてなのだが、林四兄弟ものというのがあるそうで、雅賀サンは次男だって。マサカさんではない、マサヨシさん。
マサヨシさんは元文部省勤務で、副業を持つことを禁じている公務員としては不都合なこともあって、やめちゃった、ことになっている。
元文部省で、ピンク映画(懐かしの死語)中心に映画評していた、ゆとり教育の方、映画評、映画本は副業では?連想してしまった。

BOOK
comment(0) 2012.08.21 09:07

レッドデータガール はじめてのお使い

ファイル 225-1.jpg著者 荻原規子
角川文庫

小野不由美、上橋菜穂子と並んで日本女流ファンタジー作家3羽鴉と、誰だか言ったらしい。小野不由美、上橋菜穂子は大好きな作家なのだが荻原さんの『空色勾玉』には心動かされず、勾玉三部もその後読んでいなかった。
ちょっと軽い読み物を、という気分で探しているときに出会ったこれ。

レッドデータブックを知らない方、http://www.biodic.go.jp/rdb/rdb_f.htmlをどうぞ。まあ絶滅危惧種を集めたものですね。
で、主人公は絶滅危惧ガールである泉水子(いずみこ)。世界遺産である熊野古道、玉倉山の玉倉神社育ち。中学三年まで山の麓の中学校と家の往復だけの生活を送るが・・・。
腰までの長い三つ編み、現代の、普通の、とろい女の子。が、なぜ絶滅危惧種であるか?

東京への修学旅行中に、姫神憑き!になり・・・。目覚めて何も覚えていない。姫神って何?そもそも、基本的には警視庁勤めである母に、それはついているものであるらしい。そして事件。

幼馴染の生意気な男の子、深行は、山伏の修行をしていたり。
一巻はなんとも消化不良に終わる。

第二巻“はじめてのお化粧”は東京の鳳城学園に進学してからのお話だが、ここには陰陽師の末裔がいたり。

アニメ化企画進行中!と帯にあるが、いかにもだなあ、と思われる。
でもね、なんというか、とても、現実の政治の世界を思わせる世界なのですよ。簡単に読めますが、そうピンクの綿菓子のようなものではありません。
どうやら大長編になりそう。第三巻も文庫化されたようなので、探してみましょう。

BOOK
comment(0) 2012.08.18 13:32

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