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狙った恋の落とし方

2008年 中国映画 中国原題:「非誠勿擾」
hファイル 160-1.jpgttp://nerakoi.com/
監督 馮小剛(フォン・シャオガン)
出演 葛優 舒淇 方中信

原題は、誠実なお付き合いができる方のみ、冷やかしお断り、というような意味になるらしい。インターネットで結婚相手募集広告を出した男が主人公。これは別に珍しいことではない(と思う)。中国の新聞広告で見かけた。そういう婚活の最後の決まり文句だという。

外国帰りだけどさほど成功したわけではなく(と本人は言っていても妙な発明でかなり金持ちではあるようだ)、学位をとったわけでもなく、普通の中年男。お見合い場所に昔の知り合いがゲイになってやってきたり、お墓のセールスだったり、妊娠していて父親が欲しかったり(この役が最近また日本で活動を始めたビビアン・スー、日本でアイドルしている時と全く違う発声で出てくる)、或いは、航空会社の客室乗務員の美女だけれど不倫に苦しんでいる女性だったり・・・この舒淇演じる女性に、恋をする葛優。

お正月映画だから、中国でも杭州、海南など観光地が出てきて行きたくなる。この映画の後半の舞台が北海道であり、中国で大ヒット(正月映画歴代一位)したせいで中国人の北海道旅行が突然増えたと、ニュースにも取り上げられたものだった。

馮小剛監督映画の常連である葛優が、うまい役者であるのは知っていたが。この監督にありがちなベタな笑いではない、いいコメディ風味の、佳作に仕上がっているのはひとえに葛優の味わいにかかっていた、ことで。

あーこの日本語タイトルってば全く・・・せっかくの佳作に何ご無体な!であります。

MOVIE
comment(0) 2010.12.01 16:19

シティホール

ファイル 159-1.jpg2009年 韓国ドラマ 全20話
出演 キム・ソナ チャ・スンウォン 

すみません、突然ドラマです。
陶壺展の時に韓国ドラマフリークの友人がDVDを持ってきてくれて、そーんな20話も見る暇は・・・と思った、が、陶壺展終わって、見始めたところ、先へ先へと進みましたよ。
『私の名前はキム・サムスン』のキム・ソナが、お茶くみ下級公務員から、ミス・イワシコンテスト出場、何の因果か市長選出馬、となるお話。その原因を作るエリート天才ハンサム官僚で、田舎の副市長に就任するのがチャ・スンウォン。性格悪い。

達者な女優とカッコいい男が出てくるコメディはなかなかよろしいものです。
が、このドラマ自体も悪くありませんが(コメディだからって、韓国は何故放屁とか下ネタ場面出すかなあ…と思うところも初めのほうにあるけどね)、このドラマの音楽がいいんです。挿入歌のいくつかが耳に残ります。中でも、「不安な愛」という曲、せんがっかみょん、さらんはみょん というフレーズだけ口ずさみながら見ました。以下、日本語訳歌詞(画面に出てくるものをアップしてある某所からいただきました)

「不安な愛」 

こんなに好きでもいいでしょうか
なぜか不安なの
こんな気持ちは初めてだわ
あなたは特別な人なのね

恋は怖くはありません
たとえすぐに別れが訪れるとしても
だけどこの恋がイヤです
欲張りになっちゃうから

川の流れに乗るように
心をゆだねてみましょう
一日が経てば一つずつ
捨てるものができちゃうの

そばにいちゃダメ 想ってもいけない
そして愛しても 絶対にいけないような人
手放したり 去っていったりしても
その時はもっと 愛してしまいそうな人

不安な人
それでもこの恋が 私は好きなの

私1人で愛して 私1人で送り出す
そうなるのは分かってる
こんなに切なくても 私とは釣り合わないわ
なんてひどい人なの

いやあ、きれいな曲ですよ。サントラ欲しいと思って探したけど、売り切れで、ヤフオクで高値が付いている。韓国サイトでダウンロードできるらしいところみつけたけど、わたくしハングルの基本は読めますが、それ以上は・・・。
欲しい・・・。

ドラマ
comment(0) 2010.11.28 16:22

金色の野辺に唄う

ファイル 158-1.jpg著者 あさのあつこ
小学館文庫

今頃何をぬかしやがる、と、一瞬湯だったのが二日前の話。久しぶりの店で、今更だけど、と前置きされてオーナーから昔男の言葉が伝わったとき。私事で失礼。

何十年と生きていれば、思い出したくない(傷ついたこと、傷つけてしまったこと)過去が無いわけがない。

92歳で死の床にある女性のモノローグ。その松恵には3人の子があり、娘の一人奈緒子は、父母どちらにも似ていない美女に生れついた。松恵の夫の今はの際の言葉が、“奈緒子は誰の子だ?”だった。

疑いをかけられ、父に受け止められずにそだった奈緒子は、愛を求め続ける恋多き女になる。

大ばあちゃんからひ孫の代まで、そしてひ孫の継母となる女性や、母殺しの罪を犯した男の、そこへ至る背景、など、そのどれかが、読む者にとって、生きてきた道のどこかの傷につながるだろう。

ああ、それにしてもほんとうに、いいお日和です。
とても美しい一日です。
と、終わる物語。
ジャケ買い(という言葉も、レコード時代の死語となったけれど)ならぬタイトル買いした一冊。

BOOK
comment(0) 2010.11.01 12:08

花の生涯ー梅蘭芳

ファイル 157-1.jpg監督 陳凱歌
出演 黎明 余少群 孫紅雷 チャン・ツィイー 安藤政信

DVD鑑賞。2008年中国映画。
若き日の梅蘭芳役、余少群の美しいこと!今、NHK日中合作ドラマ『蒼穹の昴』で姿を見ることができますが、映画館で見たら如何に、と思わせ。そして、陳凱歌作品であるだけに、あの名作『さらばわが愛 覇王別妃』の張國榮を、否応なしに思い出させるたおやかな女形。もともと伝統劇の役者であったけれど、女形ははじめてだったとのこと。

まあ、それだけでもいいかあ・・・と、思わなくもない。

黎明レオン・ライと言えば、香港俳優の中でも大柄な、肩幅の広い男であり、それが何故、名女形梅蘭芳を?というのは知る人皆が思っていたこと。後年の梅蘭芳はふくよかな人だったらしいが、いやあんな肩幅なはずはない。

後半は、日本が攻め込んでくる戦争の時代、その歴史劇。安藤政信が、日本軍の軍人役で出ているが、本人が話していると思われる中国語が、なかなかうまい。

邱如白役の孫紅雷、師匠の十三燕 役の王学圻、脇にいい(そして私の好きな)役者が。

結果的に地味な作品になっているが、悪くない、のだよ、ただ、黎明ではなかったんじゃないの?といってほかにだれだったら?という適当な役者は心当たりが無いけれど。恋に落ちる男役の女役者(ややこしい)も、ツィイーちゃんじゃあないでしょう。故・アニタ・ムイ姐御のような若い女優はいないよねえ、そりゃあ。ちょっと譲って若きコン・リーのような女優も、そりゃいないし。ま、それにしてもツィイーじゃなかったんじゃない?立ち役に。ねえ。

MOVIE
comment(0) 2010.10.28 14:45

疾走

ファイル 156-1.jpg著者 重松清
角川文庫

読んでみたいと思いながら、どれにしようかな・・・という状態で今まで縁が無かった重松清。ばったり会った友人が袋いっぱいに古本として売ろうとしていた中にあり、私のもとに来た。
友人の紙袋から私のもとに渡ったもう一つは宮部みゆきの『ブレイブストーリー』で、そちらを先に読み始めたのだが、何しろ上中下巻の内の中が抜けていて、読み進められず、「疾走」へと移ったのだったが、この二種がとてもよく似た小説だった。表現の方法、スタイルは全く違うが、弱い大人を親として持ち、家庭の崩壊という状況に向き合うことを余儀なくされた子供。ブレイブストーリーの主人公は小学生だが、疾走では中学生であり、より過酷な現実にさらされる。暴力、セックス、そして殺人。

下巻に入ってほどなく、気付くとグダグダ泣いていた。

上巻終わり近くに、神父の弟で、殺人罪で拘置所にいる宮原雄二に会うシーン、俺は死ねなかった、に始まる長いひらがなのモノローグの中に、おれはおもうのだ、ことばがあるから、ひとはなやむ。という部分がある。おれはことばなどおぼえるのではなかった。ことばさえなければおれはあんなにもくるしまずにすんだ。ひとをころさずにすんだ。・・・田村隆一の詩にあったよね(→atconさま)、言葉なんか覚えるんじゃなかった、というフレーズ。

読み終えて、最後でなんとか救いがある。

この著者にはこんなに(馳星周か?みたいに)暴力と悲惨に満ちたものでは無い小説があるはずだよね、お勧めはどれかな?

お、SABU監督で映画化されてたのか、手越祐也がシュウジ役、それは見なければ。

BOOK
comment(1) 2010.10.20 18:17

陋巷に在り

ファイル 155-1.jpg著者 酒見賢一
新潮文庫


単行本には無かったはず、文庫版の帯にサイキック孔子伝!まあそうなんだけど、むしろ主人公であり、陋巷=むさくるしい汚い町中に在るのはその弟子、顔回。サイキックスペクタクル大巨編です。儒とは、そもそも礼なかでも葬礼を正しく行うことであり、死者・生者・霊界を秩序ある形に仲介する者たちの集団を儒者と呼んだ、と。

すごいよ。論語に何の興味も無くても大丈夫、荒唐無稽ファンタジー活劇がお好きなら、読んでご損はありません。それぞれの巻のタイトルの漢字に、白川静による深い説明を添えてあるので、漢字好きにもお勧めできます。もちろん、信じられないようなたくさんの古代中国の資料を読みこんだ上でのサイキックファンタジーなので、歴史に詳しい方でも興味持てるはず。

子蓉姐さんの媚の魔力を含め、もしも映像にできるものなら…無理か。

全13巻。我が家の第一巻(儒の巻)を見てみたら1992年刊。なぜに2010年に読み終えたか?途中で何巻まで読んだかわからなくなって休憩しましたのさ、雑誌連載してたから次の単行本出るのに時間かかって。このたび、もう前の話覚えてないよ、と思いながら12巻から続けたところ、この12巻がまた素晴らしくスペクタクルにサイキックな戦いでありました。いや、ただのファンタジーではありません、人間の心理に関心のある方にもお楽しみいただけるかと。

酒見賢一を初めて読んだのは『後宮小説』、のちに『雲のように風のように』というタイトルでアニメになったのをご記憶にありませんかな?

この作家は、住宅設備会社勤務の傍ら・・・だって、この膨大な資料を必要としたであろうような小説を書きながら?

BOOK
comment(0) 2010.10.19 11:15

常野物語 光の帝国

ファイル 154-1.jpg著者 恩田陸
集英社文庫

とこの と読んでください。柳田國夫の遠野物語を意識したタイトルと、すぐわかりますね。
東北のほうに常野という土地がある、そこに住む(住んでいた)人々にはある種の能力があり・・・。まず最初の“大きな引き出し”という章。たとえば日本の古典文学をまるごと記憶して頭の中の引き出しにしまっておく能力がある家族。
私はこの章でほぼ恋に落ちました。いや、この作家と。性別?お気になさらず。この前に読んだ『ライオンハート』では態度保留だったのですが。今までなんで読まなかったんだろう、と思っています。

その第一章は、爽やかなジュブナイル仕様ですが、それぞれの章によって苦い味わいや、かなり気持ち悪い感じや、迫害の時代や、いろいろあります。能力を隠して市井にひっそり埋もれて暮らす、という設定は珍しくは無いのですが(最近また『七瀬ふたたび』って脚光を浴びてるよね、多岐川裕美バージョンを覚えている人手を挙げて!)、やはりそこは遠野物語風味ということで、宇宙戦争とかにはなりません。

この常野物語シリーズがあと2冊文庫化されているじゃありませんか、早速、と言っても近所の○タヤにあるかなあ、あとで行ってみます。

BOOK
comment(1) 2010.09.27 09:10

ライオンハート

ファイル 153-1.jpg著者 恩田陸
出版社 新潮社

スマップの曲が先だと思っていた?著者の後書きを読んでびっくり、ケイト・ブッシュにそのタイトルの曲があったのね。ケイト・ブッシュはかつて東京音楽祭で歌った、とその後書きにあり、どうやら私もそれで知ったんだろう、近所にあったレンタルCD屋さんで借りてきて録音した、けれどさすがにそのテープは見つからない。調べたら1978年来日。

エリザベスとエドワードという名の男女が、時空を越えて出会う。の、だけれどよくあるリ・インカーネーション物語と違って、時間軸に従わない。と、いうか、1978年に始まり、1932年の物語で少女のエリザベスはすでにエドワードを知っているがエドワードはこの時初めて彼女に出会う。少女エリザベスの死。次の話は1871年シェルブール、1978年に戻る、1969年、1855年、また78年に戻って、この年にエリザベスは、初めてエドワードに会ったらしい、ということになっている。

いつもあなたを見つけるたびに、ああ、あなたに会えて良かったと思うの。会った瞬間に、世界が金色に弾けるような喜びを覚えるのよ。

ほとんどの話の中でつかの間の出会い。

それぞれの章に絵が付いています。"記憶"という章の絵にはクノップフの『Memories Du Lawn tennis』。

私はこれを読みながらジャック・フィニィの“盗まれた街”を思い出していたのだが、フィニィへのオマージュ作品は別にあって、これはロバート・ネイサンの“ジェニーの肖像”へのオマージュであるそうだ。聞き覚えはあるけれど、たぶん映画かマンガか、の形で目にしていたと思う。そのジェニーの肖像を書店で探してみたけれど見つからなくて、代わりに恩田陸の“常野物語 光の帝国”を買った、という話はまたこの次。
あ、ライオンハートってもともとイングランドの獅子心王リチャード一世のことだって。

BOOK
comment(1) 2010.09.26 10:42

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