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レベッカ

ファイル 144-1.jpg著者 ダフネ・デュ・モーリア

あの、ヒッチコック監督1940年(1951年日本公開)の映画の、原作のほうです。私が読んだのはたまたまもらったお下がりの河出書房版(今は河出書房新社となっていますが、ちなみに何度もつぶれては再生している会社のようで)。

映画を観たのもずいぶん昔の話、途中までちょっと自分の体験とかぶるところがあってもう見るのやめて帰ろうかと思った記憶がある。

さてその原作、今となってはこれは韓国ドラマの原点か?という気にもなる。金持ち夫人のコンパニオンとしてつき従っていた若い女性がもっともっと大金持ちの中年男と知り合い、見染められ、結婚する。噂に高いお屋敷に着くと、そこには前妻レベッカの影が付きまとい・・・。
シャーロッテ・ブロンテの“ジェーン・エア”とよく似た状況だが、何が違うかと言うとデュ・モーリアは大衆小説作家だということだ。話はなかなか一気に読ませますよ、だけどね、細部にいろいろ言いたくなることが。レベッカはある種の病気でしょう、いくらなんでも。マキシムさんよ、自分がやったことをそんなふうになかったことにして生きていい?・・・あんたたちちょっと!な、感じがね。ほら、韓国ドラマっぽいでしょ?

えー、この機会に映画のレベッカについても調べたところ、面白い事情がたくさん・・・http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%99%E3%83%83%E3%82%AB_(%E6%98%A0%E7%94%BB)ウィキペディアをご覧ください。
ところで、原作でも映画でも、このヒロインの名前は一度も出てきません。クラシカルな名前であるらしい。

BOOK
comment(4) 2010.07.14 21:59

楽園

著者 宮部みゆき
ファイル 143-1.jpg版社 文藝春秋

 あの『模倣犯』の続編、というより、文庫版の解説にもあるけどスピンオフ。“ピース”については今は強い拘禁症状<長期にわたる刑務所や収容所などでの拘束によりおこる鬱等の精神症状>を示しているらしいという情報のみ。
 その事件の後遺症からようやく回復してまたライターとして活動を始めた前畑滋子のもとに、「亡くなった息子が超能力をもっていたのではないか」という中年女性が訪ねてくる。それを確かめてほしい、と。

 数年前に友人から借りて読んだ『模倣犯』は、その後味の悪さのせいもあってかあまり頭の中に残っていない。前畑滋子という名前も忘れていた。が、これはもう一気に読み進んだ。人の死からの再生、家族の再構築、というようなテーマが今の私に近しいものだったからでもあるだろう。それだけでなく、サイコメトラー(のようなものが苦手な人には邪魔かも)、姉妹、様々な要素を取り込みながらそのストーリーテリングの巧みなこと・・・てのは宮部みゆきサンに対してわざわざ言うことじゃない、ですね。ただ私の好みから言うと、面白いんだけど割とすぐ忘れる作品もある作家さんなのでして。

 実はこの「楽園」も友人Mから借りて読んだのだけど、ちょっとこれは自分の本棚にも置きたい気がします。

BOOK
comment(2) 2010.06.08 19:53

夜のフロスト

ファイル 142-1.jpg著者 R.D.ウィングフィールド
創元推理文庫

 刑事です、フロストは。しかししかし、下品。下ネタジョーク連発!コラッ!いい加減にしろ、と上司ならずとも思う、女性には読みにくい、そりゃそうです。

 デントン警察ではインフルエンザの流行により人手はすこぶる不足、そんな中に連発する老女殺人事件、少女行方不明、中傷の手紙。
 出世志向の新入り刑事部長ギルモアが配属されたのはそんなところ、相棒はくたびれた下品な(疲れを知らない)フロスト警部。ギルモア忙しすぎて妻との関係は悪化の一途。

 1992年と言えばもうポリティカルコレクトとかセクシュアルハラスメントとかいう言葉あったんじゃないか・・・というのはアメリカの話でイギリスではまだまだそんな下ネタ大丈夫なのか・・・だが、このフロスト実は優秀、実は人情家、どういうわけか勘で犯人を嗅ぎ分けてしまうのだ。

 初めについていけないと思った人(女性)も、まあちょっと頑張って読んでみると、ストーリーはまことによくできていますよ。まあなんでマレット署長のような妙な人物が出世しているのかわからないけれど。

BOOK
comment(0) 2010.05.31 09:33

ちはやふる

著者 末次由紀
ファイル 141-1.jpg版社 講談社

 2009年マンガ大賞。
 
 百人一首は、正月にやっていた時期がある。覚えている歌は・・・習ったのは 眞白にぞ だったけど、こっちは 白妙の なんだなあと思った田子の浦とか、いくつかは・・・あったような。
 
 ニュースで競技カルタの模様を見ると、こりゃあスポーツだ、格闘技だ、といつも思うその競技カルタの世界を描いている。千早という名前を持って生れた普通の女の子が、カルタ好きの男の子と出会い、おやおやなんと先天的にある種の才能が!というところから始まるが、カルタを知らないものからみると、おお、そうだったのか!ということがてんこ盛りで、面白い。
 友人から借りて一気に読んだが、さえない小学生の千早が今や美女の高校生、さて綿谷君復活、この先は?呉服屋の娘かなちゃんの古典に対する造詣の深さもお勉強になります。
 

BOOK
comment(0) 2010.05.22 12:04

私自身の見えない徴

 ファイル 140-1.jpg著者 エイミー・ベンダー
角川文庫  

 
二十歳の誕生日に、私は斧を買った。

と始まる。19歳~10歳まで誕生日に何を買ったかが続く。

 十歳の誕生日は父が病気になった時で、その時から私は「止(や)めること」をはじめた。

 枝で桃が甘くなるように「止めること」が塾したときとか。

 ファンタジーだろうと思って読み始める。読み進むと、ジャンルが分からなくなる。 
 成長を止める話なら、『ピーター・パン』とか『ブリキの太鼓』とか、例はある。そうではなくて、陸上をやめる、映画を見るのをやめる、デザートをやめる、なのだ。

 彼は私のうなじにキスで銀を吹き込み

 石鹸を食べてしまうのだ、この女の子は。
 止めることができなかった唯一のことが数学で、ある日、小学校之校長先生からの電話で、算数の先生になる。リサ・ヴィーナスという生徒がいて、その母は眼球癌を患っているという。

 キーワードは父の病気。父は病気だが、青いガラスでできた美しい病院の医者を続けている。
 元数学教師のジョーンズさんは、蝋でできた数字のネックレスを下げている。それは、その日の彼の気分のレベルを示している。

 ではSFなのか?と、読み進めて思う。え?ホラーなの?誕生日に自分にプレゼントした斧で、自分自身を伐り倒したい二十歳。木をノックする癖がある。父が病気になってから。

 そして私はここで自分自身にくるまっている。自分というマントにくるまっている。

 まあ、この娘が、自分というマントを脱ぐ、閉じた円を開くまでの物語です。引用したこれら丸ごと詩のような文章たち、原文で読めたらいいのにと思います。原文タイトルは?と思ったら、An invisible SIGN of may own そのままやんけ、でした。自分というマントにくるまっている、という感覚を知っているある種の若い人にお勧めしたい作品です。

 ところで、私自身の見えないカビ、じゃないシルシ、と一瞬思わなかったかな?私だけ?翻訳の菅啓次郎氏は明治大学工学部教授で詩人だって。

BOOK
comment(0) 2010.05.21 14:16

赤目四十八瀧心中未遂 <小説>

ファイル 139-1.jpg著者 車谷長吉
文春文庫

 くるまたにちょうきつ と読むそうです。
 映画の感想文も書いたものと思っていた・・・このサイトができる前に見たものらしい。

 車谷長吉の作品を読んだのは初めて。続けて読むことはないと思う。それは今の私が読みたいスタイルの文章ではないからであって、この人は優れた作家であり、これは優れた小説である。などと私が言わなくてもいいことであるのは119回直木賞受賞という事実でもわかる。なぜ直木賞?芥川賞でなく?ということはその当時話題になったようだ。

 70年前半ごろの日活ロマンポルノにはあったような気がする(“(秘)色情めす市場”という田中登作品を思い出したのだけど)猥雑な底辺の社会で生きている人々、の中に紛れ込んだ男、背中に迦陵頻伽の入れ墨を背負ったすごい美女(映画では寺島しのぶ、美女度はそんなに高くないと思われた)。
 言葉の使い方が独特。SEXではなくまぐわい、ラブホテルではなく連れ込みホテル。そして、ハイネの“流竄の神々”だとか新藤涼子という詩人の『遅い』という詩などに強く反応する主人公の男。その詩の載っている詩集“ひかりの薔薇”というタイトルには私にも覚えがある。当時少なくとも部分的に読んだはず。

 この作家は慶応文学部卒業ののち広告代理店や出版社勤務を経て実際に関西方面のタコ部屋暮らしをしていた時期があるという。小説の中で新聞社勤務の旧知の男から小説を書けと言われるシーンがあるが、それに似た状況で担当編集者からの強い呼びかけで作家として再デビューしたのだそうだ。

BOOK
comment(0) 2010.05.05 21:31

釣り上げては

著者 アーサー・ビナード
出版社 思潮社

 ファイル 138-1.jpg1967年アメリカのミシガン州生まれ、1990年に来日、2001年、この詩集を出している。もちろん日本語で書いて。

 詩集のタイトルにもなっている詩“釣り上げては”の最後、

  記憶は ひんやりした流れの中に立って
  糸を静かに投げ入れ 釣り上げては
  流れの中へまた 放すがいい。

 ついさっきTVをちゃんと見るでもなくマクロビオテックの話してるなあなどと目の端で眺めていたら、びなーどさん、と呼びかけている。ビナードさん?NHKBSのMiDoRi緑遊という番組に出ていた。

 初めて読んだのは『空からやってきた魚』(草思社)というエッセイだった。その頃外国人で日本語で書いた作品の感想を書くことが続いていたので、ここに紹介するのはやめたのだった。

BOOK
comment(0) 2010.05.04 13:38

暗く聖なる夜

ファイル 137-1.jpg著者 マイクル・コナリー
講談社文庫

 元(ハリウッド署)刑事ハリー・ボッシュの正しい名前はヒエロニムス・ボッシュと言います。あの、最近ではボッスということの多い地獄絵のような絵を描く幻想画家と同じ名前。読みたくなった?
 
 かつて迷宮入りとなった事件、映画会社の社員である女性が殺され、続いてその会社が制作していた映画に使われる現金強奪事件が起こり、警察の同僚が死傷した・・・その事件についての情報が入り、今では私立探偵となったボッシュが調べ始める。するとロス市警、FBIからも横槍が・・・。
 どこへ発展していくかと思うとあれあれ、なんということ。

 ジャズ好きの人には別の楽しみ方があるでしょう。タイトルはあの有名なルイ・アームストロングの“What A Wonderful World”の歌詞より。
I see skies of blue and clouds of white On the bright sunny day, or in the dark sacred night And I think to myself "What a wonderful world !"

と言っても、その歌詞が本文の中に出てくるけれど、もともとの英文タイトルは“LOST LIGHT”。
 
 ボッシュ・シリーズを初めて読んだと思っていた、が、訳者後書きのボッシュ履歴を目にしたら、知っている気が・・・何かを読んだのでしょうか?わたくし。

BOOK
comment(1) 2010.04.28 21:07

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