2022年11月20日(日曜日)
著者 笹井宏之
ちくま文庫
Eテレの『理想的本箱 君だけのブックガイド』という10代向けの番組で見かけて、そのみずみずしい言葉たちに打たれた。26歳で亡くなった若い歌人の短歌集。
タイトルは えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力をください という短歌より。
この森で軍手を売って暮らしたい まちがえて図書館を建てたい
「はなびら」と点字をなぞる ああ、これは桜の可能性が大きい
野菜売るおばさんが「意味いらんかねえ、いらんよねえ」と畑へ帰る
どうしても声のかわりに鹿が出る あぶないっていうだけであぶない
祝祭のしずかなおわり ひとはみな脆いうつわであるということ
ランダムに開いたページから。声に出して読みたい、人の声で読まれたものを聞きたい、誰か朗読劇にしてくれないか、と思ったら、とっくに(2011年)オーディオドラマや舞台劇になっていたのだった。
重度の身体表現性障害 と言う病名で長く療養生活だったという。それ、症状の名前であって病名ではないんじゃないの?と思うが原因のはっきりしない難病だったということか。インフルエンザによる心臓麻痺で夭折と。
2022年11月20日(日曜日)
監督 中江裕司
出演 沢田研二 松たか子
長野の山荘で、愛犬さんしょと共に暮らす作家、ツトム。十三年前に妻は亡くなり、その遺骨はまだ墓に収めないままである。時折、編集者で恋人の真知子が訪ねてくる。山の恵みや畑の作物で作る料理を、真知子と一緒に食べることが格別の喜びである。
雪降り積もる中、茅葺きの家に真知子がやってきて、囲炉裏にあたっている。私の小さい頃、まだ祖父母の家は茅葺きで囲炉裏があった。囲炉裏って、体の前側は暑くなるが背中は寒かった、と思う。そんなんで暖まるか?とか、60代の男と言う設定のツトムがランプの明かりで原稿を書くのか?とか、まああちこち疑問符は湧くが。ともかく、ツトムの作る素朴な食べ物がまことに美味しそうで、午前11時20分からの回を観ている私はお腹が空いてくる。畑で育てた大根や芋、山のキノコや実などで、少年のころ寺に預けられたツトムが身に着けた精進料理の手法で作る。皮がついたままの里芋を囲炉裏の炭火で焼く。皮がおいしいのだと言う。真知子がまたそれをうまそうに食べるのだ。料理は料理研究家の土井善晴さんが手がけたもの。映画のためにスタッフが畑を作って作物を育てたという話だ。
時代設定は昭和だろうけれど、あちこちファンタジーな気配。奈良岡朋子演じる頑固な義母が亡くなったあと、義弟夫婦がお通夜の場所をツトムの家に、と押し付けてくる、遺影のサイズを写真屋にまかせたら、巨大なものができてくる、通夜振る舞いも読経もすべて、ツトムの役割となる、など。お葬式はどうしたんだろうね。
あいよ、という返事と共に通夜客のためのごま豆腐作りやミョウガ入りのおにぎりやいろいろと手伝う真知子。その後、ツトムは自分のための骨壺を焼くことになる。焼きあがった窯に入るツトムに声をかける真知子。窯の中で倒れているツトム。
九死に一生を得たツトム。そして。
私はほとんど雪が降らない地で、畑の真似事をやっているし、そこには父が趣味で焼き物を焼いていた窯がまだ残っている。灯油窯だけど。だから、あの地で、心筋梗塞だったか何かで倒れた男が一人で今まで通りに暮らすのは、どうなのよ、と思うし。真知子さん、ねえ。まあ、いろいろファンタジーと受け止めよう。
今の沢田研二、をイメージして脚本を書いたのかなあ、と思うほどの、はまり役だと思う。ちゃんとじいさんになっているからできる役。
最後に流れるジュリー沢田研二の歌声が艶やかで、泣きそうになる。
帰りに水上勉の原作『土を喰らう日々』新潮文庫を買いました。
2022年11月19日(土曜日)
著者 村田喜代子
新潮文庫
明治36年、鹿児島の硫黄島から熊本の遊郭・東雲楼に売られてきた15歳の少女イチ。やってきた娘はまず、肥えた男から股を割られ、性器を入れられ、10数えて引き抜かれ、評価される。
それぞれに新しい名前を 与えられ、寝床における性技を始め、女紅場と呼ばれる娼妓の学校で修身・読書・習字・作文・活け花・裁縫を習う。
小鹿という源氏名を与えられたイチは、鹿児島弁をしゃべる。「こけー、けー」はここへ来い、「こー、けー」は飯をこの茶碗によそってくれと言う意味。けー は来いと言う意味のほか、食えと言う意味にもなる。九州でも熊本と鹿児島では方言はだいぶ違う。で、私が小学校6年で転校した薩摩半島の南端ぐらいの小学校の校歌に、硫黄島 と言う歌詞が出てきたのだが、開聞岳のどっち側のどのあたりに目を向けるとそれが見えたのか、知らないまま卒業したなあ。地続きのその南端の地区でも、鹿児島市の方言とはずいぶんと違った。島だと、もっと違うんじゃないか、と鹿児島育ちならではの疑問がよぎる。まあ、薩摩硫黄島出身の知り合いはいないので確かめようがないのだが。
経血を自力で止める方法を習うシーンがあるのだが、それはまことでござりましょうか?
天は人の上に人を造らず と説いたはずの福沢諭吉が、芸妓などについては人外としてさげすむ文章を書いていることに、女紅場の教師、鐵子さんは激しく欺瞞を覚える。士族に生まれながらこの世界に入ることとなった鐵子さんであった。
がんばって人より働いて、体を壊して亡くなる女、親に転売され、よその廓に移る女、花魁なのに子を宿して、稼業をやめる道を選ぶ女。そうは言っても、東雲楼は環境の良い方なのだろうと察せられる。
16の春、イチはほかの女郎たちと脱走、小舟で海へ出る。薩摩の女3人は済州島を目指す、海女になるために。
福岡生まれの作家による、骨太な九州女たちの物語。表紙が、ゆうじょこう と言うひらがなのタイトルに対して、なんだ?と思われたが、読み終わるとまあ合わないでもない気がする。
2022年10月20日(木曜日)
著者 李昂
訳 藤井省三
出版社 文芸春秋社
川端康成の『眠れる美女』は、性的機能を失った老人男性のための秘密くらぶがあり、薬で眠らされた若い女性に添い寝する、という話だった。若かった私にとって、手元に置きたい小説ではなかった。
で、こちらはその川端康成作品を意識して、女性側が若い男性に対して思いを募らせ、という、台湾の女性作家による小説。
川端作品がある種幻想的な、デカダンスと言う言葉であらわされる状況なのに対し、若い男になんとも切実に恋心を抱き、肉体を切望する、50代更年期の、教養あるお金持ちの台湾女性。
女性作家が、フィットネスジムの更衣室のロッカーに残された携帯電話を見つけた、そこにはその作家宛ての言葉、男女二人のLINE、長文が残されていた、と言う設定。
ジムのトレーナーは、鍛えた肉体を持つ若い美男子、台湾の少数民族の血を引く男。外交官だった夫はバツ1で、彼女が40歳間近で出会い、家柄、教養など釣り合いの取れたカップルとして、格別に熱愛があったわけではないがすぐに一緒になった。夫やそれ以前の恋人たちとまるで違う若い肉体を持つ男に惹かれるが、男には嫉妬深い婚約者がいることも知っている。
しれっとチャタレー夫人の方向に進むわけではない。一人想う心と焦がれる肉体のご婦人である。台湾はアジアで初めて同性間の結婚が認められた国だが、実際、映画などで同性愛者が出てくることが多い。で、日本で言うところのタチであるマニッシュな女性と知り合い、性具によって快感を与えられる場面があったり、上海ではビジネスで出会った男と、オプションでこんなことも、とでも言うようなセックスをしたり。オプションの分は金を取るくせに、お母さんとセックスするようだ、なんぞと文句垂れる男。銭が介在するならサービスするもんじゃないんかい。
そもそも途中で横書きのラインのやり取りが挟まれている、各章のタイトルのページ下に、小さな文字で横書きの文章がある、型を外した形であるのだが。このような内容にしては訳文が格調高い、ような気がしたそばから日本語がどうもおかしい。内容自体が、川端康成へのオマージュとして、レイプドラッグらしきものを男に与えて眠らせる(そりゃ犯罪だ)、妙な設定なのだが。男性の訳だからか?女性の翻訳の方が良かったのか?だけどこの翻訳者、藤井省三さんは名を知られた人で・・・と思ったら、元々の中国語の文章が、本来の文法を外したまことに翻訳しにくいものであったらしい。訳者の解説に縷々と。
アンバランスさは狙いなんでしょうねえ。中華圏の古典が引用され、最近の流行り言葉が使われ。なーんだか梯子を外されるみたいな読後。
高齢女性(いや、この小説ではまだ更年期女性だ)の性を描くことがちょっと流行りなのかな。でもね、そこ言うなら、我が日本には『源氏物語』ってものがありますね、源典侍なる色好みの年増女官が出てきますよね。年増ったってその時代の事だから40歳に届くか届かないかぐらいのところかと思っていたら、Wikipediaによりますと初登場ですでに50代後半、最終的に70歳前後、だそうで、ちょっとした誘いにもすーぐ乗っちゃうぞと言う姿勢のままでしたよね。
なので、上野千鶴子サンが帯で推薦しているけど、そこまで新しいことも無いかも、と私は思ふ。
2022年10月12日(水曜日)
監督 ヤスミン・アフマド
出演 シャリファ・アマニ ン・チューセン
金城武が香港の映画スターとして認識されていた頃、と言うのは1995年頃から2000年頃か。その金城武のファンのマレー系少女オーキッドが、露店で香港映画VCDを売る華人少年ジェイソンと出会う。互いに一目惚れ。そこでオーキッドが買うVCDは『報告班長』だったが、これは台湾アイドルとして出演している台湾映画。オーキッドは『天使の涙』が大好きで、まだ『恋する惑星』は持っていなかった。追いかけてきて、『恋する惑星』VCDを渡すジェイソン。日本ではビデオテープだったけれど、中華圏ではVideoCD、荒い画面の海賊版が多かった。
デートするようになり、クローゼットの裏にたくさん貼っていた金城武のポスターや切り抜き(日本の雑誌からの物が多くて、私もだいたい目にしたことがあった)を外し、二人で撮った写真に替えるオーキッド。
マレーシアという多民族多言語の国の話は、日本人からすると驚きが多い。オーキッドとジェイソンは基本的に英語で会話する。中華系でも広東語圏の人が多いマレーシアだが、ジェイソンが声に出して読んでいるのが北京語、それは、インド人の詩人の詩を翻訳したものだった。それぞれの言語を、日常会話レベルなら聞き取ることはできるだろう。プラナカンと言う言葉があり、数世紀にわたって移住してきた中華系の移民の末裔を指すそうだ。そしてその多くは福建省からの移民だとかで、福建語も使われている。
本来の住人であるマレー人の方が、移民よりも恵まれた生活をしているようだ。民族、宗教以外に生活格差の問題もあり、異民族の交際や結婚には障害が多い。オーキッドの家は、お手伝いさんと母親が友達のように接している珍しい家庭であり、かなり理解があるのだが。
そのお母さんとお手伝いさんが、周潤發の『上海灘』のテーマ曲を歌ったり、香港映画好きにはなかなか楽しいシーンいくつか。
ロミオとジュリエット、ウエストサイドストーリー、日本では泥だらけの純情、まあその系列のお話じゃないか、と思うか、それはそうなんだけど、と思うか、分かれるだろうな。
2009年7月25日に急逝したマレーシアのヤスミン・アフマド監督、母方の祖母は日本人だと言う。『タレンタイム 優しい歌』の次回作としてその祖母をモデルとした企画があったそうだ。惜しいことだ。
2022年10月5日(水曜日)
著者 今村夏子
ちくま文庫
ヘンな女の子、あみ子のお話。これが、アルバイト先で明日休んでくださいと言われ、突然、小説を書いてみようと思いつき、思いつくままに書き始めた、半年後に出来上がったって…。
そのヘンさが、誰にも似ていない。巻末で穂村弘が書いているように、『長靴下のピッピ』に似ていなくもないが、ピッピにあった怪力などあみ子には無いし。自閉スペクトラム症と言われるような発達障害があるのだろうが。本人は何も困っていないようだし。まあ、家族やクラスメートにとっては困ることが多いのだろうが。良かれと思って行動したことが母の心を傷つけ、一途な思いがのり君には迷惑で、好きじゃと言ったら殴られて前歯を3本失ってしまう。なんだか隣の席にはあみ子に風呂入れ、食べろ、とちゃんと言ってくれる男の子がいるのだが、一途なあみ子にはその子の名前も記憶に残らない。ほかからは奇行に見えることもあみ子にはちゃんと理由がある。
良かれと思ってのことや一途な思いが、人を傷つけ迷惑になることは、格別障碍の無い普通の人々(だと思っている)の中でもいくらも起こる。私たちはそのことによって自らも傷ついてその記憶が残る。が、あみ子にはそんな昔の記憶など無い。いっそすがすがしくも見えてくる。
この文庫に収められている『ピクニック』も『チズさん』も、ちょっと乾いていて切なくて、とても佳い。解説で町田康が書いているように、名作だと私も思う。だからこれが、アルバイトしながらでも短い小説なら二週間ぐらいで書けるのではないかと書き始めた、なんて。なんて。映画化されてる。いつか観たい。
161回芥川賞受賞作『むらさきのスカートの女』も、必ず読もう。
2022年10月3日(月曜日)
監督 王家衛
出演 黎明レオン・ライ 李嘉欣ミシェール・リー 金城武 楊 采妮チャーリー・ヤン
原題『堕落天使』。WKW特集第二弾。スクリーンで観るのは初めてだが、四半世紀前、私はこの映画で王家衛に落ちたのだった。しっかし大画面で観るとあの部屋汚い!そりゃ雑巾がけするわ。
何度もTVサイズでは観ているのに、こんなに頓狂なキャラクターたちだったか、と思う。殺し屋レオン・ライは周潤發ばりに二丁拳銃ぶっ放し、失恋女チャーリー・ヤンは「恋する惑星」のモウの鏡写しのようなことをやってる、「恋する惑星」ではブリジット・リンがクールな金髪だったが、ここでの金髪女カレン・モクは手のつけようもないようなハイテンション、クールな美女エージェントの李嘉欣は一人ベッドであれだもんなあ(どれだよ)。そしてクリストファー・ドイルの手持ちカメラ大暴れ。使われていない時間の店をこじ開けて勝手に営業する、口のきけない金城武が、豚さんにマッサージする場面はチャーミングでかつての私のお気に入りシーンだったのだが、王家衛・クリスのスタイルに慣れて(たぶんね)好き勝手に動いている。台湾出身と言う設定で、心の声は彼だけ北京語。父親役は広東語だが、確かチョンキンマンションの実際の管理人だかなんだかだったはず、寿司屋の日本人も本物をその役に当てたのだろう。
想いのすれ違い、孤独が浮かび上がるのは王家衛作品はいつものことだ。
みんな若い。1995年の俳優たち、私が知った頃の彼ら。「恋する惑星」は初め3部作の予定だった、3番目の話を独立した作品として制作したそうだ。3部作だったら金城武ではない誰かが演じる別の話になっただろう。そもそも「楽園の瑕」の製作が遅々として進まなくて途中で別の映画を作ったんだし。「楽園の瑕」のキャストが暇になったので別の監督で作られた「大英雄」という脱力映画もある。
音楽が良い!この映画、映像と音楽が、同時進行で生まれたかのようだ。初めの方でタタッタタン で切れるフレーズがあんなに何度も使われたんだっけ、と思うのは、ちゃんとつながってるサントラを繰り返し聞いたせいか。
2022年9月27日(火曜日)
監督 王家衛
出演 ブリジット・リン 金城武 梁 朝偉 王 菲
ありがたいことに、ウォン・カーウァイ監督特集が始まりました。
第一週は「恋する惑星」、もう何度となく、ビデオテープの時代にも、TVでも観ているのでストーリーは頭に入っている。が、金髪の鬘に赤いフレームのサングラスの林 青霞が一体何者で何をやろうとしているかは、麻薬ね、で?ぼんやりした理解にとどまる。そもそもその変装でブリジット・リンであるかどうかもわからないし。すんごいゲリラ撮り!今では考えられない無法ぶり。刑事223号の金城武は、1994年にはまだ青年と言うより少年に近い。エイプリルフールに失恋したばかりで、賞味期限が5月1日のパイナップル缶詰ばかり食っている。すでにカッコいいけれど美しいと言うにはナイーブが過ぎる、見た目も役柄も。で、メインはやはりトニーの刑事633号とフェイのパート。1962年生まれのトニーこの時32歳、あの放射線を放つ目、美し。こちらも恋人に振られたばかり。このころの王家衛作品にはよくあるのだが、部屋では白いランニングシャツ(タンクトップとは呼べない)と白いブリーフ姿。トニーのセクシーさを白いブリーフで中和するってか。フェイもチャーミング!『夢のカリフォルニア』で踊る姿、ついこちらの身体も動く。
『楽園の瑕』の撮影が中断している間に即興的に作られたのだそうだ。チョンキンマンションのインド人の皆さんもどれだけ振り回されたことか。
『アメリ』がこの影響を受けているという話が納得。フェイの歌う主題歌『夢中人』はイギリスのクランベリーズのカバー。
2022年9月24日(土曜日)
脚本・監督 早川千絵
出演 倍賞千恵子 磯村勇斗 河合優実 ステファニー・アリアン
少子高齢化が進んだ結果、歪みが悲惨な事件を呼ぶことになった、パラレルワールドの日本。75歳から、自分で生死を選ぶことができる制度、PLAN75が施行される。
一人暮らしのミチは78歳。ホテルの客室清掃業に就いていたが、同じく高齢の同僚が仕事中に倒れたことをきっかけに、解雇される。仕事を探すが、自分の条件を入力すると、パソコンには0と表示される。その内、PLAN75 を検討し始めるミチ。
誠に身につまされる話。ミチがつましくも丁寧に暮らしていることが分かるので、この世界には年金は?死別した旦那さんの遺族年金は?などと思ってしまう。
実年齢はもう少し上、1941年生まれの倍賞千恵子さんが、ことさらに皺が目立つような陰影の中で演じている。舞台に立てば今でも華やかな姿で、艶やかな豊かな声で歌うのであろう人が。最近の女優さんはいつまでも若々しく、おばあさんとなかなか呼べない。女優さんとしてはおそらく美容整形的なことにこだわらない生き方だっただろう彼女が、こういう仕事をオファーされ、ちょっとした目の表情や、そのたたずまいで見せる。
18年、是枝裕和監督製作総指揮のオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』の一編『PLAN75』の監督・脚本を手がけた、と言う監督が、ストーリーを再構築、キャストを一新して長編映画デビューしたのだそうだ。『十年』というのは香港映画にはじまった、十年先の国の変化を描いたものだった。それからいくつかの国で同じタイトルで作られた。香港では10年も経たずにその映画の予言が現実に近づいている。では、これは?
ふわっと始まって、ふわっと、その着地点は?と言う終わり方、それは、見る側の受け取り方に任されているのか。役所のPLAN75の若い担当職員が、男性も女性も、柔らかな感受性を持つ人として描かれるので救われる。
先日、ゴダールが「自殺幇助」と言う方法で亡くなったという報道があったね。重い病気があって、不自由な身体で、91歳なら、私もその方法を選びたいだろうか。78歳の独り身には、会話の相手が、交流する誰かが、消えていったのだ。思い出話ができること、ねえあれ!と話しかけたら答えてくれる相手がいることは宝だと、若い時には気づかなかった。
ミチが口ずさむ、リンゴの木の下で♪ が、映画館からの帰り道に頭の中で鳴っている。帰宅して調べていたら、キャストの中に串田和美とあって、あれ?どこに?と思ったけれど、『上海バンスキング』の舞台を見て吉田日出子子が歌うその歌が口をついたのは、いつの話だよ!その頃によくテレビで見かけた串田和美は今何歳だと思ってんだ、であり。そして、すみません、映画と関係ない蛇足一つ、彼、串田孫一の息子だったんだ。知らなかった。
2022年9月17日(土曜日)
著者 ヨシタケシンスケ・又吉直樹
ポプラ社
15㎝近くもある太い帯を外すと、昔の革の表紙に金色の線を押した風の装丁、数十年は経っている本のように端にくすみが、ちょっとしたシミが、ある態の造り。隅になんだかわからないけれどちょっとした落書き?書き込み?があったり。
本の好きな王様が、もう目が見えなくなったので、世界中を回って珍しい本の話を聞いてくるように二人に命じた。千夜一夜物語のヴァリエーションですね。で、各章が、その本は、と始まる。実は私はと言えば、ソの本は と始まる短い文に爆笑してしまった…我ながら…。
この二人のコラボという時点で、売れるに決まっているのだが。あなたの好きなのはどの部分ですか?
もうあの爬虫類系の顔を見るのも嫌になって、これではいけないと思うものの。どうして…