去年の冬、君と別れ

著者 中村文則
幻冬舎文庫

女性を二人焼き殺したカメラマンの男、その事件のノンフィクションを書くために面会に行ったライターの男。

人形師が出てきたり、江戸川乱歩か!みたいな猟奇事件。不っっ自然な女とか。
語り手が代わるんだよ。眠い目をこすりながらちょっとずつ読む本じゃ無いね。二回目でまだ消化できなくて三回目をペラペラめくりましたぜ。

映画になったとは知らなかった。うーん、主役が岩田剛典ですか…そうですか。たぶん、だいぶアレンジしてあると見た。カメラマン木原坂が斎藤工…うーん。

中村文則は『掏摸』を読みかけて挫折したままだったが、それを貸し出してきた友人からこれも渡されたのでね。
2~3冊読み込んでみる所存です。

帰れない二人

http://www.bitters.co.jp/kaerenai/
監督 ジャ・ジャンクー賈樟柯
出演 チャオ・タオ趙濤 リャオ・ファン廖凡 

2001年、山西省大同。ヤクザ者の男、ビンは、麻雀荘やダンスホールを仕切り、地上げに関わっている。その女、チャオ。石炭産業が落ち目の時代。
ダンスホールでは“Y・M・C・A”“ジンギスカン”や“CHACHACHA”など日本でも流行っていた曲がかかっている。

葬儀で聞こえていたのは、確か香港映画“上海灘”の音楽。そしてダンスホールにいたカップルが社交ダンスで葬儀を盛り上げるのが日本人には不可解だが、台湾や中国の田舎では現代でも似たようなにぎやかな葬儀が行われるらしい。

ある日、チンピラたちに襲われる二人。ビンが持っていた拳銃を、空に向かって威嚇射撃するチャオ。そして、二人は監獄へ。

2006年、長江・三峡。数年のちには水底に沈む町。
出所したチャオはビンを探す。会おうとしないビン。

2017年、大同。
時を経てまた出会う二人。が。

賈樟柯監督は、長年の彼のミューズである趙濤と、2006年に『長江哀歌』でヴェネチア映画祭金獅子賞を獲っている。山峡ダムで水没するその奉節の町を舞台に。続編ではないが、その、中国と言う国の大きく変化する流れの中の、人間たちを描く、という意味ではつながる物語。彼の作品はどれも、そう言えるが。

女性歌手の歌声が、80~90年代初めごろの香港の誰?と思ったらサリー・イップだった。音楽の使い方が面白い。台湾の林強が音楽をやっていた。それから、中国の映画に詳しい人、馮小剛監督・張一白監督も、出演していますよ。

今まではずっとオフィス北野がかかわっていたなあ、と思い出していたが、日本人名がエンドロールにあった。どちら様か知らないけれど。

ある船頭の話

http://aru-sendou.jp/
監督・脚本 オダギリジョー
出演 柄本明 川島鈴遥 村上虹郎 伊原剛志 浅野忠信 村上淳 
   細野晴臣 橋爪功 永瀬正敏

映画が始まり、ああこの映像は好き、と思う。水辺の景色。
村の渡しの船頭さんは 今年60のおじいさん 年は取ってもお舟を漕ぐ時は
元気いっぱい櫓がしなる
と言う昔の童謡が現実だった時代。
木下順二が寺山修司にぶち当たった、みたいな、現実の中に幻想なのか何なのかわからない世界が入り込む。
川上では大きな橋の建設が進んでいる。それが出来上がったら渡し船の仕事は?ある日、船にぶつかったのは、川を流れてきた少女。まだ息があった少女を助ける船頭。
元気になった少女は、いっこうに口を利かないが、赤い見慣れない服を着ている。
河瀨直美監督作品の匂いも混じって来る、と思うのは虹郎と村上淳という父子が出ているせいかもしれないが。

今年の初め頃に観た、インド映画『ガンジスに還る』のことも思う。

まあとんでもなく豪華キャスト。

そして、最後の字幕で知る。
撮影監督 クリストファー・ドイル
衣装デザイン ワダエミ

美しいわけだよ。王家衛作品ででおなじみのクリスが撮ってたのか。ワダエミか、それで赤い中国風の服を。

時代の流れ、生きること、死ぬこと。
饒舌過ぎる部分もある気がする(分かり易いわけではない)。けれど、圧倒的に美しい映像、好きです。

マチネの終わりに 


https://matinee-movie.jp/
監督 西谷弘
出演 福山雅治 石田ゆり子 桜井ユキ

上映が始まり、ギターの音が流れ始め、ああ、観に来てよかったと思った。平野啓一郎の原作を読んでいると、キャスティングがなんだか・・・なので、観ることを躊躇するものがあり。

天才ギタリストとして華々しくデビューし、今、自分の表現が見えなくなってしまった男、英語フランス語が堪能で国際的に活動しているジャーナリストの女性。
そもそもとんでもなく難しい役。
最初の方、出会いのすぐあと、軽い口説き文句を口走る男に、笑ってしまったよ。

小説だと、主役二人をはじめとして、教養とはこういうものなのね、と言う、深く厚い知識と教養の持ち主たちの会話が流れているのだが、映画はそこが薄い、ので、壮大なメロドラマ感がより強調される。
ちょっとしたすれ違い、ちょっとしたうっかり、運の無さが重なり、第三者の感情がトリックをしかける。
そしてすれ違ったまま時が経ち、それぞれに別の人と結婚し。
ある日、トリックを仕掛けた、と言うにはその人なりの思いがあったわけだが、その人自ら、絡んだ糸を断ち切る。
途中で、あれ?この人が主役のお話?みたいになる。
なかなかうるうるしましたよ。

で、中華圏でリメイクするなら、と考えて。女優は台湾のグイ・ルンメイ桂綸鎂で決まりです。フランス文学科卒だし。男優が思いつかない。
ちなみに、小説を読んだ時点で、日本の女優さんだとフランス語堪能な中谷美紀サンしか思いつかなかったんだなあ。で、知的で才能豊かな気配の男優さん?誰?ごめんね、福山ファンのお方。

白銀の墟 玄の月

著者 小野不由美
新潮文庫

十二国記シリーズ、2013年に刊行された文庫『丕緒の鳥』から約5年…本編という意味では2001年の『黄昏の岸 曉の天(そら)』から実に約17年ぶり!

だってさ。そーんなに長い時が経ったか。
私が初めてこのシリーズを知ったのは1996年刊の『図南の翼』なんですが(そして思い切りはまった)、もしもまだ十二国記を読んでいない、と言う方、読んでみたい方、『魔性の子』1991年からのほうがいいですよ。これは外伝だとは言え、この新作につながる最初のお話なので。

新刊は、しろがねのおかくろのつき と読むそうです。うう、そうか、驍宗の白髪、黒麒麟である泰麒の象徴、と今頃気づいた私。

そしてこの、久しぶりの新刊は長い!10月に前半2冊、11月に後半2冊でしたよ。前半は読んでも読んでも先が見えない、場所の名前、人の名前が読めない覚えられない、人間関係図を描きながら読み進むのだった、と後から思う。そもそもあまりに久しぶりだから、前の段階の経緯も記憶のかなたでかすんでいるし。
ですが、後半バリバリ展開、一気に読みました。

4巻解説にもあるのだけれど、そう、酒見賢一『後宮小説』1989年刊ぐらいから始まったのでした、中華世界風日本のファンタジー小説。すっかり遠い目をしてしまうよ。

そして、もちろん、優れたファンタジーと言うものは、今、私たちが生きているこの世界の問題と深くかかわっているもので。“魂魄”が抜かれた人間とかさあ。なんか政治方面の記者インタビューを受けてる誰かさんや誰かさん、抜けかけてる気が。

そしてこの物語は、果たして私の生存中に完結するのか?
読んでいない人には何の紹介にもなりませんね、ごめんね。12国記ファンのあなたは、このシリーズの出演者中、誰をごひいきですか?

工作 黒金星と呼ばれた男

監督 ユン・ジョンビン
出演 ファン。ジョンミン イ・ソンミン チョ・ジヌン チュ・ジフン

1990年代朝鮮半島。北の核開発の実態を調べるために、軍人だった男がスパイとして潜入する。コードネーム黒金星(ブラックヴィーナス)。
北京で、対外経済委員会に近い人物に近づく、そして李所長に、とつながり、南の情報を提供するよう求められ。
北朝鮮の風景の中で韓国のCMを撮る、と言う提案が実現に向けて動いていき。

韓国では金大中が政界に復帰。

男は自白剤を使われるなどありながら、権力の中枢へとつながり、金正日と面会するまでになる。
広告撮影の名のもと、ひそかに核の実態調査を始める。

金大中が大統領選に立候補。当選を阻止しようとする祖国と北朝鮮との裏取引で…。

結構な量の韓国映画を観てきたのだけれど、どうも隣国の政治状況がどこでどんな風に変化したかが頭に入っていないのです。予習しときゃあ良かったと思いましたよ。よくわかっていない人には予習をお勧めします。北京でいろいろ北の人物に会うと、いう話だけど、ロケ地は台北だったらしい。
これ、実話を元にした話なんだよね。どれほど脚色されているかわからないけれど、うっそー、と、途中で何度も思ってしまいましたね。軍人だったのが短期間でスパイになれるのか?そもそも。
最後のシーンでじんわりすることになります。

ホテル・ムンバイ

https://gaga.ne.jp/hotelmumbai/
監督 アンソニー・マラス
出演 デブ・パテル アーミー・ハマー ナザニン・ボニアディ 

2008年、インドのムンバイで実際に起こった同時多発テロの現場の話。実際にはタージマハル・パレスホテルでの事だというが、そのホテルからの人質脱出の模様を描いたもの。
イスラム教徒の若い男たちが、リーダーの声のもと、宗教がそれを命じるものと信じてテロに及ぶ。
底に居合わせた者たちを、ホテルマンが決死の脱出へと導く。

よくできていて、面白いけれど。
インド映画、ではないのですね。監督はオーストラリア人だそうで、西洋の映画の作りですね。

いや、よくできているんですけど。嫌な奴だと思った男が、意外といいとこあるとか。

今一つ、私には何かが不足している感があったのでした。ま、いろんなところで★の数がたくさんついているので、これは私個人の感想でしょうが。

真実

https://gaga.ne.jp/shinjitsu/
監督 是枝裕和
出演 カトリーヌ・ドヌーヴ ジュリエット・ビノシュ イーサン・ホーク

この『真実』というタイトルがねえ。
大女優が『真実』という自伝を出す、というが始まりにあり。で。どこが真実じゃ、と家族や長く仕えた人間は思う代物である、と。
すみません、私はカトリーヌ・ドヌーヴのファンだったことが無いのですが、まあ貫禄です。

貫禄の女優、生活が女優、人生が女優、の、あちこちで笑ってしまいました。

ジュリエット・ビノシュだっていかにも女優の女優さんだけれど地味に、ほとんど化粧もしていない、それだけ母と娘の距離をしめしてもいるのだろう姿も、良いです。

そうね、下品な人が出てきません。なかなかの会話もありつつ(って)。
で、のちのち明かされる母の思い娘の思いの・・・どこからどこまで真実でどこから芝居なのか?芝居の中に真実が潜り込んでいるのか?

マノン役の女優さんなかなか素敵、最後彼女にプレゼントする白い襟のワンピース、ドヌーヴの『昼顔』の貞淑な妻の時のとそっくり!よね?

この映画の中で、SF映画を撮影しているシーンと重なって進行するためでしょうか、終わってから年齢層の高かった観客の中から、最初意味が分からなかった、と言う声が聞こえましたが、それはきっとドヌーヴが懐かしくて観に来た人で、是枝監督の作品に慣れていなかったのかも。

湾生いきものがたり

監督 林雅行

『心の故郷』に続く、日本統治時代の台湾に生まれて少年少女期を過ごし、戦後に日本に渡った人たちを描くドキュメンタリ-。今では80代、90代になっている彼ら。

今回の、印象的な言葉。『泥棒する人たちが日本人だということに驚いた』。戦後の混乱の中では人のものを盗らなければ生活が危うい人間がたくさんいただろう。そして、台湾にあっては支配階級だったことを、特に意識もせず生活していたであろう彼ら。ほとんどの日本で生活している日本人よりも豊かに暮らしていた彼ら。
植民地というのは、そういうことなのだ。
そして、その時代を懐かしみ、第二の、ではなく、故郷と偲ぶ彼ら。

中に子供のころから回文を作って遊んでいた、そしてそれが高じて逆回転させるとちゃんとした歌になる、という歌い方まで身に着けた、と言う女性が出てきたが、その人のことは珍しい人を紹介するTV番組で見たことがあって。ああ、と声が出てしまったよ。

なぜでしょう、こういう、日本だった時代の台湾にいた、台湾人、日本人を描く映画を、いつもとても面白いと感じるのは、と、今回思うものでありました。

年月日

著者 閻連科
出版社 白水社

そんなに長くない小説なので、できれば一気に読むことをお勧め。
私自身は眠りにつく前の時間に少しずつ読む、といういつもの習慣のまま読んでしまったのですが。
ちょっと、ヘンな話なので、慣れるまで読みにくいけど。

ひどい干ばつが起こり、村人は水のある土地を求めてみんな出て行った。先じいは年寄りなので(と言っても70ちょっとだが)、あきらめて残った。畑に一本だけトウモロコシの苗が残っていたし。犬のメナシと一緒に。

寓話的なお話だからね、許そうと思うのだが、そのトウモロコシの苗を育てるために自分とメナシの小便を毎日かける、水分と肥料として、ってさあ、すぐ枯れるよお、煮えるじゃんよお、と、ちょっとした菜園やってる身は気になってしょうがない。ま、寓話だってば。

ネズミとわずかなトウモロコシの粒争奪戦をしたり、オオカミとにらみ合いしたり、そして、いよいよなにも無くなっていき…。

いのちをつなぐ、ということ、人間・動物・植物、というものが並立してつなぐ、物語。
中国語学習者なので、これ、原書と並べて読んでみたいと思いました。