エリック・クラプトン 12小節の人生

http://ericclaptonmovie.jp/

監督 リリ・フィニー・ザナック
出演 エリック・クラプトン ジミ・ヘンドリクス ジョージ・ハリスン B・Bキング

ボヘミアン・ラプソディと違って、こちらは実際の映像によるドキュメンタリー。ヤードバーズの映像なんて初めて見ましたよ。

天才というのは、まあその初めから天才なのね。ギターを初めて手にした時から、ものすごい練習量をこともなくこなす力を含めて。
母親が、未婚で産んだ後、祖父母によって育てられ、祖母を母親だと思っていた、という事情は知らなかった。

音楽の道に入ってからの交友関係がすごい。ジミ・ヘンドリクスが亡くなった時には取り残された気持ちでなぜ連れて行ってくれなかった?ぐらいの感情だったみたい。たくさんのミュージシャンの良い音を聞けただけでも良き日でございました。
デレクアンドドミノスの名曲『レイラ』が、ジョージ・ハリスンの妻に横恋慕してできたことは有名だが、うーん、のちのちややこしいことになっていたのね。
それにしてもそこまで薬中、アル中がひどかったのか。あの時代のミュージシャンは、ほとんどみんな手を出していたと思うが。そしてその最悪の時期を除けば、クラプトンは静かな“いいやつ”だったようで、それは嬉しい。

かわいい盛りの息子の転落死という、極度の不幸によって、アルコールや薬物からの回復に向かうことになった事情がすごい。『ティアーズ・イン・ヘヴン』にやはり涙する。

そして、今はアルコールと薬物からの回復のための施設を作ってかかわっている、そのためにギターをオークションに出したシーンも。

『ボヘミアン・ラプソディ』より客席がまばらだった。ああもったいないことでございます。

ゲンボとタシの夢見るブータン

監督 アルム・バッタライ ドロッチャ・ズルボー

幸福な国ブータンの、ドキュメンタリー映画。 みんなスマホを持っているし、フェイスブックでガールフレンドができたりする。 サッカーをやっている。

急激に現代化したブータンの小さな村で、先祖代々引き継いできた寺を息子に継がせたい親、思い悩む息子。 自分を男の子だと認識している娘。 仏教国で、輪廻の教えが浸透しているから、娘の性同一性障害についても、前世は男だったのだろうと、受け止めているらしい親。 親のほうはちゃんとした修行をしないまま寺院を継いだ、ということだったが、それって激動の時代だったから?よくわからないが。

青春真っ只中の16歳の少年に、今の学校をやめて僧院の学校に行く、という決定をするのはそれは難しい。 僧になったら一生独身、ということになるのだ。 父親だって、信仰心が無いのなら行かなくていいと、口では言う。 母親は、英語をちゃんと勉強した方が寺を訪れた外国人観光客に説明ができるから、あと2年は今の学校に行かせた方が、と考えている。

途中ちょっと眠くなりながら見ていたのだけれど、終わったとたん、もう一回この映画を最初から見せてくれ、という気分になってしまった。 観光客に向かって、仮面をつけて説明する父親、その手に“男根!”な形状のものを持って、「神も人も動物も、みんなこれが好きだ」というような話をしているなかなかのシーンからもう一度。

いつか深い穴に落ちるまで

著者 山野辺太郎
出版社 河出書房新社

いやはや。
荒唐無稽にもほどがあるだろ。落語の頭山とかちょっと思い出す。

地球に穴を掘る。なぜ?だって近道だから、地球の裏側に行くのに。
第二次世界大戦の後、運輸省の若手官僚が思いつく。底の無い穴を地球に掘ることを。そして、数十年後に正式決定し、秘密裏に掘り始める。発案者はとうに故人となり、担当は別の若手。ブラジル側からと日本側から。温泉を掘る技術を使って。実際温泉が出てしまって中断することなどありつつ。

えーと、まずその掘り進む経過の土はどこに置くのだろう?時々火山が噴火するよ、地球の内部のマグマは超高温だよ、どうするの?とか、ふっとばしてとにかく地球を下へ下へ掘る。

妙にリアルな、某国要人とディズニーランドで待ち合わせる話とか、サラリーマン社会のいろいろとか、ブラジル側の担当女性との恋心とか。

計画はホラ吹き男爵も負けそうだけれど、それぞれのエピソードや、取り組み方は大変に生真面目でもあり。一体どういう着地を?と気になる。

着地?それがねえ。

この作家、次はどこへ行くのだろう。東大文学部、大学院、という人。文系だよねえ、と言ったって東大だし、地球内部の知識なんかたっぷりあるさ。はああ。
第55回文藝賞受賞。

童年往事 時の流れ

監督 侯孝賢
出演 游案順 梅芳 田豊 辛樹芬

監督の自伝的な作品だという。第二次世界大戦後、大陸から台湾に渡ってきた家族。
私の子どもの頃にはまだ存在した景色、男の子のビー玉、喧嘩独楽、女の子のゴム飛び、古新聞や屑鉄を買いに来て天秤計りで重さを量る。
日本の植民地だったのだから、戦後すぐのこの時期には畳、障子があることが当たり前の家。トラック以外の自動車は無くて、自転車で引く人力車のようなものがタクシー代わりだ。
ただ、大陸と台湾はまだ戦争が続いている。
私は90年代後半まだビデオテープの時代にこの作品を見ているのだが、木の根元にビー玉と小銭を隠したシーンとか、少しばかりしか記憶になかった。

高校生に成長した姿が、もういい加減腹立ってくる単純な喧嘩三昧馬鹿なお姿なのだが。そんな中で、父が、母が病んで、亡くなる。主人公をひいきにしていた祖母は、この作品の初めから、少しボケているようだった。大陸に帰りたいおばあちゃん。おばあちゃんの時には気の利かない男二人しかいないからったって、かわいそうな死を迎えてしまう。

外省人である親たちの思い、台湾育ちの子どもたち。

しばしば小津安二郎の影響を言われる侯孝賢の、いややっぱり侯孝賢だ、という、結果的に見応えのある作品でございました。1985年制作。

ボヘミアンラプソディ

http://www.foxmovies-jp.com/bohemianrhapsody/
監督 ブライアン・シンガー
出演 ラミ・マレック ルーシー・ボーイントン

妻いたんかい、というほど私はフレディ・マーキュリーの個人事情を知らなかった。もう見た目完璧にハードゲイなお姿だし。
楽曲はもちろん素晴らしい。ほーお、そんな風に作ったのか。

結婚していて、どうやらほかの女性もあまたいたらしくて、で、ゲイであると認める、ややこしや。見た目ならみんなもゲイっぽいと思っていた…。

私が観た時は、観客の年齢層がなかなか高かった。70年代初期から活動していたのだから、そりゃそうなるか。が、そのせいか?あの音楽の中で、静かーに観ていらっしゃる。聞きながら身体が音に乗っている私。

離婚した元妻だった人、その後もずっと、完全に離れることが無かったらしいけれど、それはすごい。

映画を観た後、帰り道で、自分の身の回りに存在していた人、今はいない人のことなど不意に思ってしまった。
亡くなった時45歳というのは、そのもう少し前の世代のドラッグで亡くなった人たちジミ・ヘンドリクスとかジャニスとかに比べれば、まあ生きたほうじゃないか、などとも。

 

台湾新電影時代

監督 シエ・チエリン
出演 侯孝賢 オリヴィエ・アサイヤス 賈 樟柯  蔡 明亮 是枝裕和 王童

90年代後半、まだビデオテープの時代のレンタルビデオを探し回ったものでしたよ、侯孝賢監督、エドワード・ヤン監督作品。80年代、台湾ニューシネマと呼ばれた新しい感覚の映画が生まれ、89年、「悲情城市」がベネチア映画祭で金獅子賞を獲るに至って、世界的に注目される。

日本人から見ると、古き懐かしき日本の姿、というものがしばしば出てくる。日本の植民地だったのだから。支配していた側が懐かしがっていいのか?という思いがかすめる。
中国では、その同世代にあたるのは第5世代と呼ばれる陳凱歌や張芸謀、田壮壮といった監督たちだ。その作品は多様ではあるが、台湾の、現代の若者たちを描くニューシネマ作品とは全く傾向を異にする。80年代には中国大陸の映画人たちにはほとんど知られていなかったらしい。

昔、台湾映画のスタッフの字幕にどうしてオリヴィエ・アサヤスという名前が良く出てくるんだろうとおもっていたわぁ、のちにマギー・チャンと数年間結婚するなんて知らなかったころ。その人がしゃべっていたり、蔡 明亮が、自分は台湾ニューシネマの仲間では無い、と主張したりするところを見られるのは嬉しい。ちょっとずつかつて見た映画のかけら。もしくは見ていない映画の一部を、目にすることができる。ラストの映像は何だっけ?伊能静と林強の、と思い出さなかったのは「憂鬱な楽園」だった。
王童という監督が、台湾のシューシネマの走りだと初めて知ったが、作品は、あまり日本に紹介されていないらしい。

この日一回だけの上映、観客まばら。この地に台湾映画のファンはそんなものなのか。

ペギー・グッゲンハイム アートに恋した大富豪

監督 リサ・インモルディーノ・ブリーランド
出演 ペギー・グッゲンハイム

一度は行ってみたいところの一つだったグッゲンハイム美術館、あのゆるく螺旋状の建物、だけじゃなかったのね、ベネチアにも「ペギー・グッゲンハイム・コレクション」という美術館があると初めて知りましたよ。そうですか、ニューヨークのほうはもともと叔父さんのものだったんですね。
エルンストと結婚していたこともあるんですか。なんだかあまりにいろいろアーティストの名前が出てきたから、もう誰と誰が、って忘れているけれど、錚々たる方々と恋する、もしくはベッドを共にする、ということをなさっていたのねえ。

洋の東西を問わず、裕福な家に生まれて奔放に生きる女性はいるものだ。その本人が芸術家であるケースが多いような気がするけれど、彼女はシュールレアリズムやキュビズム、抽象などの現代美術を収集し、パトロンとなる道を選んだ。
ギャラリー最初の展示はコクトーのドローイングで、デュシャンの助言助力があって・・・いやいや。美人とは言えなかった彼女の何かが、惹きつけるものがあったに違いないよねえ。そんな女性の場合によくあるように、家族はなにがしか犠牲を強いられてしまう。

ともかく、第二次世界大戦をはさんで、アメリカにたくさんの美術品を運んでくれたおかげで、私たちは今でも戦火を逃れた作品たちを見ることができます。ありがたいことでございます。

映画の中に出てくるたくさんの作品の中、私はやっぱりカルダーが好きだと思いました。本物にお目にかかる日があるでしょうか。

恋するシェフの最強レシピ

http://hark3.com/chef/
監督 デレク・ホイ(許宏宇)
出演 金城武 周冬雨

おじさんになった金城武と、若いにしても童顔の周冬雨の、王道ラブコメ。おっちょこちょいだが腕利きシェフのヒロイン、彼女が働くホテルを買収に来た実業家2代目、彼はちょっとでもまずい食べ物は飲み込めずに吐き出してしまう食通。インスタントラーメンを作るにも秒単位で時間を計って最適のタイミングで食べる(トランクに詰まっているインスタントラーメンは出前一丁でありました)。

周冬雨がかーわいい。美人か?というとまあそうでもないが、チャーミング!おいしいものに眼の無い金城二代目おぼっちゃまおじさんが、彼女の部屋に転がり込んでもひたすら食に対する欲しか存在しない、のもなんだか不思議もない。

映画館で観たかったのだけれど、さすがにもうあきらめて、久しぶりにレンタルいたしました。良い感じにおじさんになっている金城武を見ると、オジサンになることを許されないジャニーズのみなさんのことを思う。

金城武のことをお気に入りのピーター・チャン陳可辛がプロデュース。ヒュー・グラントとか、そういう感じの、クリスマスに見るのに良さそうな映画。とは言え、カップルで見るには、金城武は少し髪が薄くなりかけていても素敵だし、周冬雨は超チャーミングなので、比べてしまっては・・・ちょっとね。

映画館で観たかったなあ。おいしそうな食べ物も。台湾版のポスターのほうが好きだったし。

彩雲国秘抄 骸骨を乞う

著者 雪乃紗衣
角川文庫

ライトノベルという分類なのだろう。時に、正しくないかもね、という言葉の使い方があったりもするし、そもそも若い子たち風の会話言葉がなにかとあるので、ん?と引っかかるのだよ年寄りはさ。

が、小野不由美の『十二国記』シリーズや上橋菜穂子の『守り人』シリーズ、阿部智里『八咫烏』シリーズなど、もともと子供向け、若いゲーム好き層に向けたかと思われるライトノベルの中から、良きファンタジーが生まれているよねえ。
で、たまたまこの作家の『レアリア』が、友人宅から我が家にやってきて、かーなり読みにくい、状況がつかみにくいお話であったにもかかわらず、魅力的に思えた。ので、まあ日本ファンタジー界では知られた作品であるらしい『彩雲国物語』を読み始め、まだシリーズ5までしか読んでいない、のに、友人宅から今度はこの『骸骨を乞う』がやってきた。

『彩雲国物語』を知らない人のために。昔昔中華などこかの国、貧乏貴族の娘紅秀麗という子がいました。昏君(バカ殿)と呼ばれている王に仕えることになり、賢く根性ある秀麗は、そのうち国で初めての女性の官吏になり、荒れた国で戦い始め~。

シリーズ途中までしか読んでいないのに外伝的なもの読むから、知らない名前もいろいろ出てきて、なにかと戸惑いながら。
生きて、戦って、滅びに向かう。まあそういうお話。
ですが、わたくしまことに久しぶりに、びいびい涙しながら読み進みましたよ。途中で、じぶんどこか病んでるか?と疑問符を抱くほどに。

読み終わって、いや、関係性が良くわからないままだったからもう一回読んでみよう、と始めから読んでいくと、またぼろぼろ涙してしまう。友人から来たのは単行本だったのだが、近所の書店で文庫を見かけたら、一遍足してあるという。文庫下巻を買い、その最後の部分を読み、ここ数日で一年分の涙した感ありますぜ。

日本のファンタジーが好きな人なら、とっくに知ってるんだろうけれど、作家の名前が雪乃紗衣、えーと、と思った私が悪うございました。存じ上げてうれしゅうございます。

日日是好日

監督 大森立嗣
出演 樹木希林 黒木華 多部未華子

https://www.nichinichimovie.jp/
大森立嗣という監督の名前を最初に観たのは、その弟の大森南朋が出ていた『赤目四十八瀧心中未遂』だったせいだろう、こんな静かな映画を撮っているんだ、といいうところに驚きを感じる。
樹木希林さんは、年齢を経るごとに魅力的になっていった稀有な女優さんであり、この人の代わりはいない。

まあそういう映画です。って大雑把過ぎますが。

生け花でも茶道でもほかの伝統的な習い事のいろいろが、結構な費用が掛かるものだよね。普通のおうちの子だったように見える、そう収入が多かったはずもない状況の若い女性が、ずっと続けていけるものなのかな、と、余計なことを考えるビンボー人なのでしたが。

あんまり丁寧に生きてこなかったなあ、と反省しても、今からこのガサツは改まらない気がする、けれど。