蜜蜂と遠雷

著者 恩田陸
幻冬舎文庫

3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール、その出場者たち。
自宅にピアノが無く、優れた音感を持つ風間塵16歳、かつて天才少女としてデビューしたけれど、母の死によってステージに立てなくなった栄伝亜夜20歳、音大出身とは言え今は楽器店に勤める高島明石28歳、優勝候補と目されるのはジュリアード音楽院のマサル・C・レヴィ=アナトール19歳。

そのほかもちろん世界中から集まるコンテスタント、そしてそれを審査する審査員たちの心の動き。

あークラシック音楽に造詣が…浅すぎて残念であります。アニメの『ピアノの森』はずっと追いかけていたのだけど。あれは演奏が聞けたけど、文章だとだいたいの感じしかわからない悲しき我が身。
ではありますが、さすが直木賞・本屋大賞W受賞作品、一気読みとなりました。『ピアノの森』を知っている人なら皆、塵とカイが重なったことでしょう。音楽界、もっと自己主張の強いライバル意識あからさまなものではないんだろうか、と感じないことも無い(そういう人も出てくるけど)ながら、あの、ちょっとつらい人にお勧めです。今ちょっとしんどい人、別世界に飛んでしばし現実を忘れます。

新聞記者

著者 望月衣塑子
角川新書

観たいと思っている同名の映画の原作(と言うわけではなくおそらく女性記者の在り方の原型?)と知って、読んだ。東京新聞の望月衣塑子記者の名前は、しばしば目にしていた。菅官房長官の目の敵、しばしばその質問を遮られてしまう孤軍奮闘の記者として。

お母さんの影響で子供のころから小劇場の芝居を観ていて、児童劇団に入り、女優を目指していた少女。それが。やはりお母さんに勧められて読んだ、吉田ルイ子さんの『南ア・アパルトヘイト共和国』によって、ジャーナリスト志望に変わっていく。
大学入学、留学を望んだけれどTOEFLの点数に愕然、まずそこから努力を始める。
大概誰でも知ってるよね、就職でマスコミを狙うことがどれほど大変なことか、なんて。なんだかんだで東京新聞に入社。そして就職するよりそこで記者として働くことの方がなんぼか大変なことなわけで。いわゆるサツ回りではある県警第一課の人が毎朝走っていることを知り、朝5時前にその人のマラソンコース手前で待ち伏せ、一緒に走る。とか。
東宝根性無しで申し訳ございません、でございます。根性と体力がまず基本ですね、仕事というものには。
で、歯科医師連盟のヤミ献金疑惑事件、武器輸出、そして我々も知っている森友、加計問題、前川前事務次官、伊藤詩織さんのレイプ事件、などなどへ。そのころに私も某SNSなどで著者の名前をしょっちゅう目にするようになりました。なぜそこを追及するほかの、記者はいないのか?ほとんどが男性記者だから、記者なんだけど政府の意向とか会社の意向とか生活とかかかってる??

他社の同業者と結婚していて子供もいるんだ。そりゃあすごい。どういう時間の使い方なんだか。なんだか。なんだか。この日本で。いや、そんな人はたくさん存在しているのだろうけれど。

「質問は簡潔にお願いします」と、菅官房長官に質問する彼女に対して側近の誰かがすぐ口を挟む。何度もそんなことが繰り返される。

あー、韓国の女優シム・ウンギョンと松坂桃李の映画、観たいなあ。

キングダム

https://kingdom-the-movie.jp/index.html
監督 佐藤信介
出演 山崎賢人 吉沢亮 本郷奏多 大沢たかお 坂口拓

原泰久原作の漫画は読んでいない。アニメは何とか追いかけていた。

春秋戦国時代の秦国。孤児の信と漂は、奴隷生活の中、いつか大将軍になることを夢見て、剣の訓練に励んでいた。通りかかった大臣が、漂だけを連れていく。
時が過ぎ、ある日、血まみれの漂が信の寝泊まりする納屋に現れ、地図と剣を渡してそこへ行けと言い、息絶える。
走り出す信、小屋にたどり着くと、そこには漂そっくりの男がいた。

下手にアニメを見ていたから、山崎賢人?と思ってしまう。漂・ 嬴政(のちの始皇帝)二役の吉沢亮は誠に美しい。山の民の王・長澤まさみ、貂の橋本環奈はむさくるしく血なまぐさい中のアクセント、息抜きかな。本郷奏多憎ったらしい、ああ怪人二十面相の小林少年が。
が、何と言っても大沢たかお!凄い造形、発声。あの声、機械操作もしているかな。若いころの大沢たかおがこんな風になるとは思わなかったよ。そして、アクション好きの人たちが『RE・BORN』と言う作品の彼を絶賛していたので、さあどこにどんな風に出てくる?と心待ちしていた左慈役・坂口拓。なるほど。なるほど。

みなさんよくアクションの訓練をなさって、頼もしい限りでありますよ。なんだかニヤニヤしながら見てしまうね。続編あるんじゃない?
エンディングがONE OK ROCKでした。ああ、若いカップルか少年たちしかいなかったよ、そんなこと初めてだった。

風のベーコンサンド

著者 柴田よしき
文春文庫

ペンションブームってものが、かつてありました。清里が有名でしたね。霧島にだってありましたよ。ウォーキングしてペンション一泊するという企画があって、参加したことがありました。

で、バブル崩壊と共にペンションブームも去りました。建物だけが残りました。
その建物を利用して、カフェを開業した菜穂。東京の出版社を辞めて。

お・い・し・そう!な食べ物がいろいろ出てきます。地元で生産された食材を使って。生産者の誰かに、何かしらの事情があったり、菜穂自身も、モラハラ夫が離婚を承諾しないという問題を抱えながら、道を求めて来た経過があったり、さわやかな風ときれいな花が咲くばかりとはいきません。シンプルにベーコンを焼いて焼きすぎないでそれだけのサンドイッチを食べたくなります。サラダにモミジイチゴを飾るって、私にはできますよん。モミジイチゴの葉っぱがあちこちから出てくる某所にしょっちゅう出かけるもん。

傍目にはわからないけれど皆何かしら重たいものを抱えている時期がある、そういう大人に優しいお話。続編も出ているらしい。柴田よしきのSNSをフォローしているのです、おいしそうな夕食がしばしばアップされていますよ。どうしてそんな時間を作れるのだろうと、忙しい時期には手抜き料理続きになる私は思います…。田舎暮らしは、良いことばかりではないしそんなにうまくは、などと言うことはまあ横に置いて、気持ちよく読めます。

芳華 Youth

監督 フォン・シャオガン
出演 黄軒 苗苗

七十年代後半の中国、人民解放軍の中に文芸工作団という、ダンスや歌で兵士たちを鼓舞する部署があり、一人の少女が入団する。彼女は故郷ではつらい立場にあり、希望を抱いて入団するが。

バレエを基本にしたダンスの技術はみんな高いんだけど、なんたって戦意高揚のためのものは、京劇的な動きや民族舞踊的なニュアンスや、そんな中で銃を手に踊ったりするわけで、日本人が見ると奇妙に映る。現代の中国人が見ても違和感があるかもしれない。
そして、どこにでもいじめがある。恋愛もある。

この時代の軍隊だと敵として台湾を想定したものだろうと思っていると、突然ベトナムとの戦いが勃発する。世界情勢に疎いとピンとこなかったが、そういえば中越戦争と呼ばれるものがあった。中国はあのカンボジアのポルポト政権を支援していた国だった。カンボジアがベトナムに侵攻し失敗、ポルポト崩壊、に対し、報復…なんじゃそれ!戦争のきっかけなんてきっと後の時代から見ればなんじゃそれなことばかりなんだろう。そして悲惨な事態。
戦争においては英雄と呼ばれても、精神を病んだり、腕を失ったり。

私は日本で恋をしたり別れたり、ごく個人的事情によりややこしかっただけのあの時代、ちょっと海を隔てた国ではそんなことだったのだ。

そして時を経て、10年後ぐらいともっと後、現代の様子まで語られる。

とても良かった、と、中国語講座の時間に言ったら、先生が、何が、どこが良かったか、と聞く。北京出身の彼女は、ちょうどその世代、嫌なことを思い出す、観るのが嫌だ、と言うことだった。

いつも人助けをしている良い男なのに世渡りが下手、という役の黄軒が、すでに腰を痛めて踊ることは無くなっているが、ちょっと練習相手をやるシーンがある。こんなに美しい形で踊れるぐらいの訓練を中国の俳優はみんなやるのだろうか、とびっくりしたが、もともと彼は舞踊学院出身なのだそうだ。

共犯者たち

監督 チョ・スンホ

イ・ミョンバク(李明博)とパク・クネ(朴槿恵)政権の間に行われた言論弾圧、マスコミに対する報道規制の状況を、マスコミ内部にいて排斥された側の人から告発するドキュメンタリー。
こういう問題になると、韓国人のあきらめないしつこさ、食い下がり方が、正しいと思う。共犯者たち と言うタイトルは、主犯である政府側に対して、マスコミの上部がその政府の脅しに屈してしまうその様子から。

ABE政権下の我が日本で、つい最近NHKの偉いさんとして返り咲いたお方が政府との太いパイプをお持ちの方だそうだ。ヒャクタと言う名の売れっ子作家さんもなんかNHKの関係だったね。ネトウヨの標本みたいなご意見を垂れ流しているお方。SUGAさんに質問すると数十秒かそこらで質問は簡潔に、とか脇から突っ込まれる忖度しない女性記者さんがいたり。その女性記者をかけらも援護しない男性記者たちの姿とか。じわりじわり嫌ーな感じが迫ってきている。不祥事が一つしかない政府はつぶれるが、次々に起こると皆マヒして不感症になるのだそうだ。

と、いうようなことを思い起こさせられずにおかない。こういうドキュメンタリーに対していっていいかどうかと思うが、実に面白かった。残念ながら、私が観た回の観客は二人だったが。

バジュランギおじさんと、小さな迷子

監督 カビール・カーン
出演 サルマーン・カーン ハルシャーリー・マルホートラ

インドにひたすら人のいい男がおりました。学校の成績はあまり良くなくて、何年もかかって卒業、そして仕事を求めて都会に出ていきました。
ある日、迷子になったパキスタン人の小さな女の子と知り合います。その子はしゃべることができません

何ともかわいい女の子、しぐさがとってもチャーミング。彼女は母親と共に、そこにお参りすると願いが叶うというお寺に行くために、列車に乗っていたのだが、停車したときに子ヤギを見かけて降りてしまい、列車は行ってしまったのだ。

インド・パキスタン問題について、私はほぼ無知であるなあと、思い知る。第二次世界大戦後、イギリスから独立したインドだったが、ヒンドゥー教徒が多数を占めるインドと、イスラム教徒のパキスタンに分裂することになった、と言う経緯、そしてその後もなにかと争いは絶えることが無い。
印パ戦争、パキスタン分裂、バングラデシュ独立、という経緯だけはわかっておこう。

様々ありまして、悪い人もおりまして、男はビザやパスポート無しで、なんとか女の子をパキスタンの親元に送り届けることを決意します。
自分の宗教に忠実であろうとする彼は、そんな中でも嘘をつかず、ズルをしないで突破しようとします。
とんでもないことです。

インド映画らしく、突然の踊りや音楽もたっぷり、どうしてあんなに良く動く肉体なのだろうね、決して西洋的にスポーツジムで鍛えた、と言う体型では無いのに。
宗教の対立の深さ、でも個人レベルではこだわりなくお互いに違う神様に対する挨拶を交わすシーンもあり。
インド、パキスタンと言うと暑い場所だと思っているととんでもないよ、山は雪だよ、というロードムーヴィーでもある、心地よく泣けるお話。

パッドマン 5億人の女性を救った男

http://www.padman.jp/site/
監督 R.バールキ
出演 アクシャイ・クマール ラーディカー・アープテー ソーナム・カプール

21世紀に入っても、インドの庶民女性は、生理時に布を洗っては使っていたらしい。だいぶ使い古していたらしい。
と、いうことに気づいた夫がいた。
これは衛生上問題である、と、妻のため薬局に行ってナプキンを買ってくるのだが、21世紀初めには値段が高かったようだ。
妻には返して来るように言われる。で、何とか自分で作ってやろうと工夫を重ねる。

日本でも、まだまだ女性の月経を忌む風習は残っている。男性が口を出すことは難しいだろう。イノッチぐらいだね、ごく自然にそれを話題にできるのは。
それが、そこはインドの、田舎である。

夫は変態のように扱われる。努力すればするだけ石持て追われる状態となる。家族も離れ離れ。

でも、あきらめない。信念を貫く夫。

実話をもとにしているお話。とうとう簡易製造機を作って安く提供できるようにして、世界で有名になった男が実在する。しかも女性の収入の機会も作ったという。で、バットマンではなくパッドマン。
映画館を出た後、スッパルヒーローすっぱるひーろー(スーパーヒーロー)という、映画の最後に流れた歌が口からこぼれるこぼれる。

あまねき旋律

http://amaneki-shirabe.com/
監督 アヌシュカ・ミーナークシ イーシュワル・シュリクマール

インド東北部ナガランド州、ミャンマーとの国境付近、棚田が広がる地域。
これインド映画だよね、と確かめたくなる東アジア顔の人々、東アジアの農業、日本の昔の田舎にもたいそう近いものがある景色。

農作業するみんなが、歌いながら、それもきれいなハーモニーになっている歌を、響かせながら動いている。どこの国にも労働歌はあるだろう、それによって息を合わせて進めていける歌は、自然発生するものなのだろう。でもこんなハーモニーが自然につくことはとても珍しいのではないか。離れた場所にいて、私はここにいるよ、と知らせるだけの歌もあるという。言葉ではなく声として。そしてそれに返答する声。
田植えは、その列がそろってはいないが、大体昔の日本の手植えと同じようなもの。それが稲刈り後の作業となると、こりゃ見たことが無い。みんなで歌いながらダンスするように跳び跳ねながら、稲藁を踏みつけ蹴飛ばす。ゴミ飛ばしかな、大きなうちわであおぎながら同じようなことを繰り返す。出来上がった籾を、下に敷いていた布で包んで背中に担ぎ、またみんなで歌いながら長い坂道を運ぶ。
この人たちは痩せていても絶対に骨粗しょう症にはならないだろう。

もちろん、現代のことだから、大学に進学する若者もいる。科学者を目指していたりもする。スマホもある。

が、なんだか途中経過の道具の発達とか、が、無かったようなので、皆さんの人力でいろいろなことが運び、皆さんは力持ちで身体の使い方が上手。

ハーモニーが気持ち良くて眠くなりかけたりもするが、良きドキュメンタリー作品。あまねき旋律(しらべ と振り仮名)と言う日本語タイトルはどうなの?私には違和感があるぞ。

藍色夏恋

監督 易智言イー・ツーイェン
出演 陳 柏霖チェン・ポーリン 桂綸鎂グイ・ルンメイ

女子高校生のモンは、親友ユエチェンがずっと思いを寄せているシーハオにそのことを伝える。学校の夜のプールで一人で泳いでいる彼に。
ラブレターを渡してほしいと懇願され、渡すのだが、差出人の名前がモンになっていた。
シーハオは、ユエチェンなんていないんだろう、と言う。そしてモンに好意を抱き、アピールする。

この時点で観客の私はもどかしい。自分で言えや!

2001年の台湾のこの高校は、男子と女子が別のクラスで、校内で男女が手をつないだら校則違反であるらしい。校外ではよいのか?

モンも、なんだか変な子だ。シーハオに、自分とキスしたいか?と聞く。たまたまばったり会った体育の先生にも、同じことを聞く。

彼女の行動不審ぶりには理由があった。

台湾の青春映画によくある、と言えばまあそうなのだが、3人の誰かが誰かを好き、その→がずっと一方通行、双方向にならない。

昔この映画をレンタルビデオで見ているはずだし、私の手元にDVDもある。のだが。
今見ると、なんとみずみずしい作品、なんと良き男の子であることよ、シーハオくん!こんな男の子はなかなかいないよ!と、モンに言いたい。
彼女が真正の同性愛者であるのか、この時期特有の、同性に向かう恋愛的感情なのかは、どうなんだろうね。

私はルンメイちゃん(今やチャンではないが)のファンであって、この作品以来、彼女の出る作品にハズレは無いと思っている。が、いやいや、陳 柏霖くんこんなに素敵だったんだ。
なんで気づかなかったかなあ。デビュー当時、第二の金城武、と言う扱いだったからかなあ。その後何人かいるけどね、第二の、は。
日本でもいくつかの映画やCMに出ている。

ユエチェンが、ボールペンのインクが無くなるまで好きな人の名前を書くと、思いが叶う、と、書き続けている。
結局、ゴメン、と振られてからも書いているが、途中でその名前が木村拓哉になる。台湾で日本のドラマがブームだったころだ。
フランス・台湾合作映画。