月別アーカイブ: 2010年10月

テレビドラマ化について

誉田哲也の「ストロベリーナイト」が単発ドラマとしてテレビで放映されるという。それを聞いて私はちょっと驚いています。

今年、原作の文庫を読んだばかり。その際「あれ、これ前に読んだかなあ、テレビで観たんだっけ・・」と最後まで既視感が付きまとい、ネットで調べたことがありました。その時点では過去にテレビ化されたという情報はなく、「そりゃそうだよね。いくらなんでもこれは映像化できないよねえ」と思った作品でした。
なにしろ殺人シーンがね、グロテスク過ぎる。それに殺人者の精神状態や家庭環境、児童虐待の描写などもムゴ過ぎる。
もちろん、このすさまじいシーンを描写できるのが作家の力量なのだろうとは思いますが、しかしこれは本だから許されるんじゃないのかなあ。

映画と違ってR指定が機能しないテレビ。
最近では携帯で観ている人も多いパーソナルメディアでもあります。良くも悪くも子供から大人まで、かなりの影響力を持つ情報媒体です。本当にこんなシーンを映し出すつもりなのかしら?なぜ、この作品をチョイスしたのかな?もっと楽しめる原作が他にもたくさんあるんじゃない?いったいどんな人たちをターゲットにドラマ作りをしているのだろう、とテレビドラマ化に関しては、次々疑問が湧いてきます。

その反面、やっぱりなあ、とも思います。テレビってこういう刺激的な殺人が好きなんですね。
現実には小説を超えるような残虐な事件も起きるし、そういう事件にワッと飛びつくワイドショー感覚でドラマの素材を選んでいるのじゃないかと・・・・

ま、まだ放送されていない番組のことをとやかく考えるのは取り越し苦労というもの。おそらく「放送倫理・番組向上機構」にひっかからない範囲で納まるよう、映像処理され放送されるでしょう。それにグロテスクなものほど、ビジュアルに凝ると、むしろ美しくことさら意味ありげにみえることがありますしね。

しかし、もっと考えてみると、もし殺人事件の裁判員に選ばれたら、こういう映像もしっかり見なきゃいけないのですね。や~だ、怖~い、なんて甘ったれたことは言ってられないわけで、精神的にタフでなければ生きていけない。一般人にとってもハードボイルドな世の中ですね。

「ワーキングプア―日本を蝕む病 」NHKスペシャル『ワーキングプア』取材班

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出版社:ポプラ社 (2007/06)

働いても働いても報われない人々「ワーキングプア」。NHKスペシャル取材班が、放送では伝えきれなかった詳細を書籍化し、大反響を呼んだ。現代日本の象徴的な問題に我々はどう対処すべきか。渾身のノンフィクション。
(内容Amazon.co.jp<「BOOK」データベースより)


NHKでスペシャル番組、「ワーキングプア~働いても働いても豊かになれない~」と「ワーキングプアⅡ~努力すれば抜け出せますか~」が放送されたのが、2006年7月と12月。

本にまとめられ発行されたのは2007年6月。
2007年8月にはT/T:Blog 「ワーキング・プア」でこの話題に触れていましたね。

NHKの番組はとても反響が大きかったということです。私は当時観ることができなかったので、せめて本にまとめたものを読みたいと思いながら、読むと辛いぞという予知能力が働いて、ついこれまで避けてしまっていましたが・・・・ブックオフでみつけ手に取りました。

  • 1.「貧困」の闇が広がる日本
    2.ホームレス化する若者
    3.崩壊寸前の地方
    4.夢を奪われた女性
    5.グローバル化の波にさらわれる中小企業
    6.死ぬまで働かざるをえない老人
    7.荒廃を背負う子ども
    8.現実に向き合う時

 

目次を目にするだけで、たいていの人は書かれている内容を想像することができるのではないでしょうか。
他人事ではない。そう思う人が多いのではないでしょうか。

私もワーキングプアという集団の同心円内にいます。円というよりは巨大な巨大なすり鉢をイメージした方が分かり易いかもしれません。
今のところ住むところと仕事を持っていますが、加齢とともにすり鉢の底に向かって吸い込まれていくのは間違いない。
この巨大な巨大なすり鉢は、底に穴のあいているブラックホールです。

すり鉢の中を緩慢に、あるときは急激に、滑り落ちていく感じを身をもって知っている人、そうなるのではという不安を抱えている人がどれだけ多くいることか。しかしその数は実際には数えられていません。
構造改革に伴う「痛み」を引き受けてしまった者たちの存在を、ただ「格差」という言葉でまとめて、それで改革は終わりですか?とかつての日本国代表と現代表に聞いてみたいですね。

続編として「ワーキングプア 解決への道」も発行されているようです。
ぜひ読んでみたい。解決の道を探す努力をしている人たちがいることも知りたいと思います。