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「摩天楼の身代金/リチャード・ジェサップ」を再読してみて思ったこと

文春文庫(1983/04)

「世界で最も安全」な超高級マンションがニューヨークにオープンした。青年トニオは、周到な準備と大胆な発想でこのビルを“人質”にし、警備側の誰一人として予想もしていなかった要求をつきつける。さらに、脅迫した400万ドルの受け取り方法についても、まったく新しいアイデァを編み出した。
異色でハードな最高の襲撃小説!
(裏表紙から)


30年ほど前に一度読んで、非常に面白かったミステリです。
ある事情から大金が必要になったトニオは、100階建てのセントシア・タワーに爆弾を仕掛け、ビルオーナーに身代金を要求します。
どうやってトニオはセキュリティ強固なビルに爆弾をしかけることができたのか。
どうやってトニオは身代金を受け取るつもりなのか。
斬新なアイデァと、最初から最後までよく練られたプロットの面白さは秀逸です。
完全犯罪を目論むトニオのストイックな日常がスリリングに描かれ、ついつい犯人に肩入れしてしまう困った作品でもあります。
セントシア・タワーと登場人物以外はほとんど、実在のものが配置されているそうです。大都会の活気や裏通りの情景は映画を観ているような臨場感にあふれています。
トニオに対するセントシア・タワーの副社長兼総支配人マードックもまた、知的でクールな魅力ある人物で、粘り強く犯人に迫っていきます。果たしてどちらが勝つのか、二人の頭脳戦も読みどころ。
私にとっては、好きなミステリベスト5に入る作品です。

最近急に読み直してみたくなり、アマゾンにて古本を購入しました。現在、絶版のため新品は手に入らない状況です。
30年ぶりに再読してみて、さすがにレトロな雰囲気は感じられるものの、作品の魅力は色褪せていませんでした。
でも、ただ、登場人物たちの口調がちょっと気になりました。
30年前だときっと違和感なく読んだのだろうとは思いますが、今読むと何かちょっと変。

時代設定はベトナム戦争終結後だから、1975年以降。ヒッピー全盛の時代だと思うのですが、若い女性のセリフが、「とび込んだりしやしないわ」「あたし、なんか盗むかもしれなくてよ」「大丈夫だわ」「困りゃしないわ」と、だいたいこんな感じ。欧米ドラマの日本語吹き替え版みたいな不自然さ。
バーテンダーのセリフが「それだけのことでさあ、お兄さん(おあにいさん)」とか、20歳の娼婦のセリフが「なんだって?何を取ろうっていうのさ。おふざけじゃないよ。この間抜け。とっとと失せな」といった調子。
トニオのバイト先もウェイターもタクシー運転手も、街の人間たちはたいがい、任侠映画かギャング映画の吹き替え版。トニオだってコロンビア大学の学生ということになっているのだけど、言葉使いがどうにも若さに欠ける。
極めつけは、
「いやぁ、あんたはお利口さんだぜ!爆弾かって?そうさ、その爆弾でござんすよ!」
てなセリフには、思わず私はずっこけました。(この言い方も古いが)
これじゃあ、ニューヨークじゃない。

原文を読めないくせに勝手なことを言っていますが、できたら新訳の『摩天楼の身代金』を読んでみたい。
とてもいい作品なのですから、絶版はもったいない。

ミレニアムⅠ ドラゴン・タトゥーの女/スティーグ・ラーソン

ミレニアムⅠ ドラゴン・タトゥーの女(上・下)
スティーグ・ラーソン
ハヤカワ文庫 2011年発行

内容(「BOOK」データベースより)
月刊誌『ミレニアム』の発行責任者ミカエルは、大物実業家の違法行為を暴く記事を発表した。だが名誉毀損で有罪になり、彼は『ミレニアム』から離れた。そんな折り、大企業グループの前会長ヘンリックから依頼を受ける。およそ40年前、彼の一族が住む孤島で兄の孫娘ハリエットが失踪した事件を調査してほしいというのだ。解決すれば、大物実業家を破滅させる証拠を渡すという。ミカエルは受諾し、困難な調査を開始する。


スウェーデンから世界的ヒットになり、日本で北欧ミステリブームの火付け役となったと言われる作品が、この『ミレニアム』3部作です。

以前、 「ああるの映画と読書」に紹介されていて興味を持ち読み始めました。
3部とも上下巻あり、1冊あたりが500ページ前後もある分厚さです。
超大作だけに登場人物がやたら多く、馴染みのない北欧的姓名や地名が読み難い、覚えにくい。
そんな困難にもめげず、のっけから完全に嵌って読み通しました。

といっても、ミステリー自体はさほど目新しいものではないのです。
第1部『ドラゴン・タトゥーの女』について言えば、ジャーナリストであるミカエル・ブルムクヴィスト(43歳)が、大実業家一族が住む閉ざされた孤島を舞台に、40年前の少女失踪事件の謎を解くというストーリー。
密室あり、見立て殺人あり、暗号解読あり、暗く陰惨な一族の歴史が暴かれ・・・とくると、『犬神家の一族』や『獄門島』などでお馴染みの横溝正史が描く、あのおどろおどろしたクラシックな探偵小説みたいと感じる人も多いはず。
それはそれで読み応えがありますが、『ミレニアム』の面白さは何といっても、“ドラゴン・タトゥーの女”こと、リスベット・サランデル(24歳)の強烈な個性によるところが大きいと思います。
リスベットは、感情表現が著しく欠如し、他人を苛立たせることはあっても、他人を受け入れることはしない。小柄でやせこけて、見た目は15歳にしか見えない女、という設定です。
このリスベットがたった一人で、“彼女なりのモラルとやり方”で、自らの運命に屈することなく巨悪に立ち向かっていく姿が、孤独で健気で痛快で格好いい。この“彼女なりのモラルとやり方”に惹かれました。

リスベット以外にも、それぞれの分野で女性蔑視や差別と戦い苦悩する女性たちが何人も登場し、『ミレニアム 3部作』には、“戦う女の物語”という側面もあります。
そしてまた、ミカエルの言動や月刊誌『ミレニアム』の在り方には、作者スティーグ・ラーソンの“ジャーナリスト魂”が色濃く投影されていて、そこのところも本書の読みどころです。

ところで、『ドラゴン・タトゥーの女』は、2011年にハリウッド映画化されていますが、確かR15+指定の映画だったと思います。
1部、2部と読み進めると、なるほどR指定にせざるを得ないなあと思わせる過激な描写が随所にありました。このへんはハリウッド狙いなのでしょうか。少しくど過ぎる気がしました。
読んでいるページを他人に覗かれるのは憚れる場面も多い。落ち着いて読みたい方は、職場とか通勤電車とかは避けた方がいいでしょう。余計なお世話かも知れませんが。

第1部『ドラゴン・タトゥーの女』と第3部『眠れる女と狂卓の騎士』は北欧5ヵ国におけるミステリ最優秀作「ガラスの鍵」賞を受賞。
第2部『火と戯れる女』はスウェーデン推理作家アカデミー最優秀賞を受賞。
2部、3部は、1部の続編ではあるけれど、それぞれ趣きが大きく異なるストーリーで、その点でも読者を飽きさせないエンターテインメント作品となっています。

web作成にちょっと便利なGoogle Chromeのカラーピックアイドロッパー

今年4月、Windows XPのサポートが終了するに伴い、インターネットブラウザをウィンドウズ インターネット エクスプローラー(IE)からグーグルクロームに変更した方も多いのじゃないでしょうか?

IEはWindowsに標準装備されていて、OSのバージョンによってIEのバージョンも異なり、最新のIEを使うにはWindowsのOSも最新でなければならない、っていうところがちょっとついていけません。
その点、クロームは勝手に自動更新して、常に最新バージョンを利用できます。

強制アップグレードの仕組みがあり、古いバージョンを使っていると、特にメッセージも出さずに新しいバージョンへと更新される。たとえ、メジャーアップデートでも自動更新される。そのため、最新のバージョンがほぼ100%のシェアをもつ[14]。アップデートは古いバージョンを実行時にバックグラウンドで行われ、Chrome起動時に新しいバージョンへと差し替えられる。
ウィキペディア http://ja.wikipedia.org/wiki/Google_Chromeより

ColorPick

それで、私も現在はクロームをメインに使用して、webサイトの表示確認のために時々IEを開いてみたりしています。

そのクロームの拡張機能の一つ、「ColorPick Eyedropper」がwebサイト作成にちょっと便利なので、ご紹介します。
無料アプリです。

まず、Googleウェブストア 「ColorPick Eyedropper」からアプリをインストールします。
インストールすると、クロームのツールバーの右上にアイコンが現れます。

アイコンをクリックすると、十文字のカーソルが現れ、スポイトしたい色にマウスを合わせると、カラーコードが取得できます。

スタイルシートを編集するときなど、いちいちフォトショップ等のペイントソフトを立ち上げなくても、web上から気に入った色を即座に取得できるので、結構便利な機能かなと思います。

追記:2023年7月2日 だいぶ前からFirefoxでも拡張機能にインストールできるようになりました。

Google Chromeについては、下記サイトを参照してみてください。
クロームのメリット、デメリットが紹介されています。

「乗り遅れた人のためのGoogle Chrome入門」
http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1206/14/news130.html

『山田利喜子 革の仕事展』-ギャラリーときどき-に行って来ました。

当サイトでご紹介しています、皮革染色家・山田利喜子さんの『我が家de個展 ギャラリーときどき』に行ってきました。

まずは、山田利喜子さんの‘ウェルカムメッセージ’をお読みください。

今回の個展はバッグが主役です。
トートバッグ、ショルダーバッグ、ハンドバッグ、クラッチバッグ、巾着袋など種類が豊富で、色・デザインも個性的です。

私が気に入ったのは、洋梨のような形をした赤い小振りなハンドバッグです。

このバッグは持つ人を可愛く見せてくれそうな気がします。
私も、もう少し若ければ。きっと。

他のバッグについては当ギャラリーサイト『「皮革染色工芸」Rikiko Yamada』に9点10点の作品を掲載しましたので、そちらをどうぞご覧ください。

ところで、売り物ではなかったのですが、玄関に用意された革の手縫いの、素敵なスリッパが目を引きました。
白なめし牛床革のナチュラル感がとてもさわやか。
履いてみると、とても軽いのに、足にフィットして、安定感があります。履き心地が良いのです。
形も一つ一つ異なり、革に直接パステルで落書き(失礼)したデザインもかわいい。
来年の夏には、以前ギャラリーセージで「二人展」をされた服飾デザインの押川 珠江さんとの第2回『ギャラリーときどき』展を開催する予定だそうです。
その時には、是非、このスリッパを販売用にも作って欲しいとお願いしてきました。

「山田利喜子 革のしごと展」ご案内

当サイトでご紹介しています皮革染色家、山田利喜子さんが個展を開催します。
今回は自宅がギャラリーとなります。

開催期間:2014年11月22日(土)~12月3日(水)

am11:00~pm5:30

「我が家de個展 ギャラリーときどき」

 

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山田利喜子さんの2年振りの作品展になります。
以前、制作中の革のバッグを一部見せていただいたのですが、どれもクオリティが高く、個性的な作品ばかりです。
山田利喜子さんのギャラリーサイトもどうぞご覧下さい。

通畠朋子さんのギャラリーサイトをリニューアルしました。

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当サイトのギャラリーでご紹介しています、銅版画作家 通畠朋子さんが、「第10回西脇市サムホール大賞展」で大賞を受賞されたのを機に、サイトのデザインをリニューアルしました。
リニューアルに伴い、通畠さんの過去の作品をたっぷり掲載しています。
通畠さんは、個展等において過去の作品を展示することがあまりないので、私も個展で目にしたっきり、二度は見たことのない作品がたくさんあります。
こんな素敵な作品を今まで紹介してこなかったなんて!と自分の怠慢さに腹が立ちます。

もっともっと多くの方に作品を観て、知っていただきたいと思っています。
リニューアルした「銅版画」TOMOKO・T・TORIBATTAを、どうぞご覧ください。

絶望名人カフカの人生論/カフカ・頭木弘樹翻訳

『絶望名人カフカの人生論』
(新潮社/2014/10/28)

カフカは偉大な作家です。
「現代の、数少ない、最大の作家のひとりである」とサルトルは言い、日本のカフカと称される安部公房は、「フランツ・カフカが存在しなかったとしたら、現代文学はかなり違ったものになっていたはずだ」と言う。
カフカ以後の作家や芸術家たちに大きな影響を与えた作家です。

私も若い頃、カフカの長編『審判』や『城』を読んで衝撃を受けました。
カフカの作品は、それまで読んでいた文学作品と呼ばれる小説とは、まるで違っていました。

何故か理由がわからないまま何かに振り回され、迷路のような世界をぐるぐると彷徨い、来た道へも戻れず出口も見つからないKの物語。
『審判』ではヨーゼフ・Kという名前がありましたが、後の作品『城』ではKとしか書かれていない。Kがどんな人物なのか詳細な説明もなく、記号のような存在の主人公。それは他人ではない私自身の物語のように思えました。
誰かの人生でない、誰かの恋愛や私生活や思想や哲学、夢や希望や苦悩、などではない物語です。

本書『絶望名人カフカの人生論』は、カフカの日記や、友人や恋人たち、父親などに宛てた手紙から、ネガティブなものを抜粋した断片集です。
例えば、恋人に宛てた手紙の中に、こんな文面があります。

「ぼくはしばしば考えました。
閉ざされた地下室のいちばん奥の部屋にいることが、
ぼくにとっていちばんいい生活だろうと。
誰かが食事を持って来て、
ぼくの部屋から離れた、
地下室のいちばん外のドアの内側に置いてくれるのです。
部屋着で地下室の丸天井の下を通って食事を取りに行く道が、
ぼくの唯一の散歩なのです。
それからぼくは自分の部屋に帰って、ゆっくり慎重に食事をとるのです。」

同じ恋人にはまたこんな手紙も送っています。

「ずいぶん遠くまで歩いてきました。
五時間ほど、ひとりで。
それでも孤独さが足りない。
まったく人通りのない谷間なのですが、
それでもさびしさが足りない。」

あるいは、日記にはこんな言葉が。

「ぼくが仕事を辞められずにいるうちは、
本当の自分というものがまったく失われている。
それがぼくにはいやというほどよくわかる。
仕事をしているぼくはまるで、
溺れないように、できるだけ頭を高くあげたままにしているようだ。
それはなんとむずかしいことだろう。
なんと力が奪われていくことだろう。」

引きこもり精神、孤独志向、ニート願望をうかがわせる言葉ですが、でも、これって本音のところでは誰もが心のうちにあることではないでしょうか。
え?そんなこと一度も考えたことはない?そう言えるあなたはとても幸いです。

まあ、でも実生活のカフカは、引きこもりでもニートでもなかったようです。
ウィキペディアの「フランツ・カフカ」などを合わせて読んでみると、カフカは「労働者傷害保険協会」という役所に8時から14時まで病気退職するまでずっと働き続け、真面目で有能な職員としてどんどん出世もしています。
午後の時間は小説の執筆にあて、「亡くなる前日まで作品の校正刷りに手を入れていた」そうです。
生涯独身ではあったけど、恋愛経験も数多く、心のうちを吐露できる生涯の友人、恋人もいました。
周囲の人の評判は良好で、物静かでユーモアがあり、「職場では常に礼儀正しく、上司や同僚にも愛され、敵は誰一人いなかった」という。
心優しく穏やかな人物の日常を思わせるようなエピソードもいろいろ残っています。

カフカのネガティブな言葉と、こういう実生活とのギャップが面白い。
もしカフカが今の時代に暮らしていたら、きっとツィッターで毎日つぶやき、『ツィッター名人』と呼ばれていたかもしれません。

《参考サイト》

頭木弘樹さんの著書『希望名人ゲーテと絶望名人カフカの対話』を紹介した記事
「光り輝くゲーテの言葉を、いちいち暗闇で塗りつぶすカフカ、文豪たちの絶望対話が凄まじい」

第10回全国公募西脇市サムホール大賞展の案内状

第10回全国公募西脇市サムホール大賞展の案内ハガキをいただきました。
西脇市岡之山美術館のサイトに、今回の入賞者、12点の作品が掲載されているのも観ましたが、レベルの高い公募展ですね。

開催期間 : 2014年11月16日(日)~12月14日(日)

開館時間 : 10:00~17:00 ※最終日は15時まで
休 館 日 : 月曜日(祝日の場合は翌日)と祝日の翌日
会場 : 西脇市岡之山美術館

 

 

続報(2)通畠朋子氏「第10回西脇市サムホール大賞展」大賞受賞

通畠朋子さんが「第10回西脇市サムホール大賞展」の大賞を受賞したニュースが、今朝の南日本新聞にも掲載されていましたので、転載してご紹介致します。

(南日本新聞2014年10月20日掲載)

作品画像部分

嬉しいことに、当ブログに『速報!通畠朋子氏「第10回西脇市サムホール大賞展」大賞受賞!』を書いて以来、関連投稿に毎日たくさんのアクセスがあります。
通畠朋子さんのギャラリーサイトも多くの方が見てくださっています。
これを機に、ギャラリーをもっと充実させなければと思うようになりました。
これまでの個展やグループ展に出品した作品や、公募展の入選、入賞作品など、画像データをたくさん送っていただきましたので、サイトのデザインも変えて、近く(たぶん、今週末くらい)リニューアルオープン致します。

続報!通畠朋子氏「第10回西脇市サムホール大賞展」大賞受賞

9月25日の投稿、速報!通畠朋子氏「第10回西脇市サムホール大賞展」大賞受賞!の続報です。

作品タイトルは「誕生Ⅰ」
作品の展示は、11月16日~12月14日 兵庫県西脇市 岡之山美術館 にて

「作品画像を入手次第画像をアップします」と書いたのですが、通畠さんによると「実は今年のはなんとなく駄目だろうと思い、写真がないのです。1枚も。いつもは撮っておくのにね。」・・・とのこと。
入賞作品は買い上げとなるので、もう手元には返ってきません。
12月の授賞式の際に写真を撮ってきてくれるそうなので、作品画像はその後アップすることにします。

作品画像の代わりに、昨日の朝日新聞の記事を送っていただきましたので、ここに掲載します。

(2014年10月3日/朝日新聞より)
ちなみに、作品を手にしている女性は、通畠さんではありません。

追記:2014年10月11日

作品についてのコメントを当サイトのT/T:Blogに書いてくださいました。
こちらの方もお読みください。

作品「誕生1」について

速報!通畠朋子氏「第10回西脇市サムホール大賞展」大賞受賞!

当サイトでご紹介しています「銅版画」作家、通畠朋子さんが、「第10回西脇市サムホール大賞展」にて、大賞を受賞されました!

おめでとうございます!
受賞作品については、画像を入手次第、詳細をご紹介したいと思います。

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通畠朋子さんのこれまでの作品ページはこちらからご覧ください。

「銅版画」TOMOKO・T・TORIBATTA

第8回の西脇市サムホール大賞展では、惜しくも大賞は逃しましたが、最終審査に残る素晴らしい作品でした。
「第8回全国公募西脇市サムホール大賞展」入選作品「カクティダンス オペラ」も合わせてご覧ください。

今年は5月に通畠義信氏の彫刻作品が、第61回県美展にて知事賞を受賞しています。
ご夫婦そろって大きな受賞の年になり、作品を紹介している私も嬉しい限りです。

とりあえず、速報でお伝えしました!

5冊まとめて、ちょっとだけ読書感想。

本を読み終えて、すぐにブログに感想を書けばよいのだけど、それができずに本だけが溜まっています。あれも書きたい、これも書きたい、でも時間が経ち過ぎて記憶がどんどん薄れていく。で、今回は忘れ去らないうちに5冊まとめて、書き出してみようと思います。

『ベイジン(上下)』
真山 仁/幻冬舎文庫
2010年4月発行

「お願いだ、俺にこの発電所を停めさせてくれ」

『ベイジン』とは北京のことで、英語ではBeijingと表記するとのこと。
舞台は、北京オリンピックを目前に控えた中国。
冒頭のセリフは、北京オリンピック開会式に合わせて運用を開始させるという原子力発電所を建設するために、中国へ招へいされた日本人技術者、田嶋の必死の叫び声です。
電源喪失、ベント操作、海水注入、といった事故場面の描写は、否が応でも福島第一原発の事故を想起させる物語ですが、作品が書かれたのは事故前の2008年。
図らずも予言の書となってしまった感があります。

「『ベイジン』は、我々がけっして忘れてはならない希望について書いた小説です。
21世紀は「諦めの時代」なのかと思ってしまうことがあります。努力しても頑張っても報われない。何かに果敢に挑むより、最初から闘わず諦めてしまう。でも諦めからは何も生まれない。
私はそう信じています。」

(Amazonの商品説明、「著者からのコメント」)

『ぐるぐるまわるすべり台』
中村 航/文春文庫
2006年5月発行
第26回(2004年) 野間文芸新人賞受賞

「黄金らせんはオウム貝の殻や、ヤギの角などに現れることでも知られています。生物の成長というのはすなわち、相似な変形の繰り返しであるという原則が、このことからもわかります。つまり黄金比は物事が成長するときの普遍的な比率なのです。それゆえに我々は美しいと感じるのかもしれません。」

上記は、老教授が建築概論を教える講義室の一場面。こんな授業を受けてみたいものだと思いました。静かで贅沢な時間。
物語は、主人公が大学を中退するところから始まります。
彼は、塾の講師をしながら、バンドメンバー募集専用サイトでバンド仲間を探すのです。
「熱くてクール、馬鹿でクレーバー、新しいけど懐かしく、格好悪いくらいに格好いい、泣けて笑えるロックンロール。拡大と収縮、原理と応用。最高にして最低なメンバーを大募集。19歳」
彼がメンバーへの課題曲に選んだのが、ビートルズの「ヘルター・スケルター」
「ヘルター・スケルター」は、「しっちゃかめっちゃか」というような意味合いに訳されますが、元々の意味は、「らせん状のすべり台」のことだそうです。
毒気の強いニュースばかりが目につく世の中にあって、久々に毒気も悪意も一切ない青春物語を読んだなあって感じです。
主人公は、とてもナイーブ。
若い頃は私だって、いまみたいじゃない、もっともっとナイーブだったと思う。そして“若い”って昔も今も結構シンドイことだって思います。

『火星ダーク・バラード』
上田 早夕里/ハルキ文庫
2008年10月発行
第四回小松左京賞

「人類に進化なんてものはない。ただ、環境への過剰な適応があるだけよ。」

舞台は火星。
殺人容疑をかけられた火星治安管理局員の水島と、生まれつき他人の感情を読む能力のある少女、アデリーンとのロマンスを主軸とした、ハードボイルドタッチのSFサスペンスです。
アデリーンはプログレッシブと呼ばれる新人類。
プログレッシブは、宇宙のいかなる過酷な環境にも適応できるよう、遺伝子操作によってデザインされて生み出されるという。
「重力変化、温度変化、宇宙放射線、酸素濃度、などの異なる環境に耐え、寿命は長く、他者と不毛な争いをせず、優れた共感性を持ち、より高い知性を備えた人類」をつくるために・・・・。

人類が生き延びるには、もう宇宙に出ていくしかない未来が、いつかきっとやってくるのでしょうね。
2023年、人類火星移住計画」によると、火星移住計画「マーズワン・プロジェクト」は、すでに現実発進しているようです。(→http://www.tel.co.jp/museum/magazine/spacedev/130422_interview02/index.html
第1回目チームの飛行士4人を募集したところ、行ったら帰ってはこれない片道切符のミッションにもかかわらず「希望者は全世界から20万人にも及んだそうで、昨年末の12月30日、移住希望者の中から1058人の候補者が選出された。その中には日本人10人も含まれている」(「2025年、火星への片道切符の旅。日本人10人が最終選考に入る。」→http://karapaia.livedoor.biz/archives/52150116.html参照)そうです。
こんなにも勇気と犠牲精神にあふれた人たちがいるなんて、すごい!それだけでも人類の未来に希望が持てる話です。
ただ、「2023年火星移住計画“MarsOne”は夢の話だろうか」を読むと、技術的な不安要素も多く、お隣の星へ行くのも容易ではありません。
地球で死ぬも火星で死ぬも同じと言えば同じだけど、火星での開拓生活がどれほど過酷なものになるのか、想像もつかないところが怖い。

『文章読本さん江』
斎藤 美奈子/ちくま文庫
2007年12月発行
第1回小林秀雄賞

「服飾史と文章史には、共通した大きな原則がある。
第一に、衣装も文章も、放っておけばかならず大衆化し、簡略化し、カジュアル化するということである。」

「服だもん。必要ならば、TPOごとに着替えりゃいいのだ。で、服だもん。いつどこでどんなものを着るかは、本来、人に指図されるようなものではないのである。」

文章読本とは、「文章の上達法を説く本」のことを言う。
古くから谷崎潤一郎とか三島由紀夫とか、名だたる文豪たちが文章作法書として「文章読本」を書いてきたらしい。
本書は明治から現代にいたるまでの「文章読本」を多数取り上げ、文例をあげて(この文例が面白い!)、検証していく「文章読本」の歴史書みたいなもの。それによって文章というものが、時代とともにどのように変遷してきたかよく分かる。そして、いつもながら斎藤美奈子さんの文章は痛快!気持ちいい。

本書を読めば文章が上達する、わけでは決してないですが、小中学校の頃、作文が嫌いだった、という皆さんにぜひとも読んでいただきたい、お薦めの一冊です。
私も作文が大嫌いでした。
「嫌い」の一番の理由は、先生の「思ったことを素直に、あるがままに書きなさい」っていう言葉だったと思うのです。私の小学生の頃はそういう指導でした。
これを「作文の私小説化」と斉藤美奈子さんは言う。
まったくその通りです。

子供の頃の私には、自分の身の回りの狭い範囲のことしか題材がなく、それを書くということは、プライバシーを先生に覗かれるみたいで、すごく抵抗がありました。
大人になって、ブログというツールを手に入れた現在、書いたものをまず先生に見せる必要がないことが、とてもありがたい。

『喪失』
モー・ヘイダー/ハヤカワポケットミステリーブックス
2012年12月発行
2012年度アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞

セラピーセッションで持ち上がった問題のひとつは、コーリーがジャニスを伝統的な妻ではないと感じることがあるという点だった。
テーブルにはいつも夕食が用意され、朝はベッドまで紅茶が運ばれるにもかかわらず。
ジャニスが仕事と子育てを両立させているにもかかわらず、コーリーはなおも重箱の隅をほじくるのだ。
家に帰ったときに、焼き上がったばかりのケーキがあってほしいとか。弁当を持たせて、何なら昼食時に喜ばせてくれるちょっとしたラブレターも添えてほしいとか。

イギリスの伝統的な妻とはなんと大変なことか、と驚きました。
お弁当にラブレターを添えなくて済む分、日本の良妻賢母と呼ばれる主婦の方がまだましとさえ思えます。
ちょっと大袈裟に書いているんじゃないの?と思い「イギリスの家庭」で検索してみると、「家族に関する国際調査」(http://www.suntory.co.jp/culture-sports/jisedai/active/family/2_2.html参照)というサイトがありました。
それによると、イギリスも「急激な単身化・単親化と離婚率の上昇」があり、伝統的な家族形態は崩壊しつつあるとのこと。しかし仕事より家庭を大事にし、家族と密接な関係を持とうとする姿勢は、今も変わらないらしい。
女性の家事分担が大きいが、最近では「男性にも家事をすることが期待されていて、育児をしない男性は同性からも不謹慎にみられる」とあります。先進国と言われる国はどこも似たような状況のようです。
まあ、これは、作品の内容とはあまり関係のない話ですが。

「宇宙は何でできているのか」/村山 斉と「ルバイヤート」

村山 斉/幻冬舎新書
2010年9月発行

これまで、「万物は原子でできている」という考えが常識とされてきましたが、2003年に「原子以外のもの」が、宇宙の約96%以上を占めていることが分かったそうです。

宇宙のエネルギー

  • 星と銀河        0.5%
  • ニュートリノ       0.1~1.5%
  • 普通の物質(原子)  4.4%
  • 暗黒物質        23%
  • 暗黒エネルギー    73%
  • 反物質         0%
  • 暗黒場(ヒグス)   10%??
  • 『宇宙は何でできているのか』 p44図6参照

では、「原子以外のもの」の大半を占める、「暗黒エネルギー」とは?「暗黒物質(ダークマダー)」とは?いったいどんなものか。
それはまだ名前しかついていない正体不明のもの。でも「ある」ということは分かっているそうです。
宇宙は、不思議がいっぱい、まだまだ謎だらけ。

まあ、「地球が秒速30㎞という猛スピードで公転している」ということすら知らなかった無知な私ですから、この1冊で宇宙を理解しようなんて土台無理な話ですが、謎解きの過程を垣間見る楽しさを味わえました。

「宇宙は、どうやって始まったのだろう?
遠くに見える星は、何でできているのだろう?
どうして、自分たちはこの宇宙にいるのだろう?
宇宙はこれからどうなっていくのだろう?」
という素朴な疑問に挑み続ける科学者たちによって、素粒子の法則から宇宙の構造まで、謎は少しずつ、時には飛躍的に解き明かされ、壮大な宇宙マップが作成され続けていることが、本書を読んで分かります。

2014-09-07-13.28

そういえば、文部科学省の「科学技術週間」サイトに「一家に1枚」というコンテンツがあります。ここに「宇宙図」のポスターがpdfファイルで提供されています。
私の持っているものは2007年版なのですが、現在は2013年版。ちゃんと更新されているんですねえ。

「一家に1枚」http://stw.mext.go.jp/series.html

宇宙図以外にも「たんぱく質」「鉱物」「太陽」「磁場と超伝導」「未来をつくるプラズママップ」「天体望遠鏡400年」「光マップ」「 ヒトゲノムマップ」「元素周期表」等があります。中高生のお子さんのいらっしゃるご家庭に、「一家に一枚」はおすすめです。

さて、本書を読んで、11世紀ペルシアの詩人、ウマル・ハイヤームの詩を思い出しました。若い頃、ノートにいくつか抜き書きしていたものです。その中の2節をメモしておきます。

『ルバイヤート』

ウマル・ハイヤーム

われらが来たり行ったりするこの世の中、
それはおしまいもなし、はじめもなかった。
答えようとて誰にはっきり答えられよう――
われらはどこから来てどこへ行くやら?

来ては行くだけでなんの甲斐があろう?
この玉の緒の切れ目はいったいどこであろう?
罪もなく輪廻の環の中につながれ、
身を燃やして灰となる煙はどこであろう?

 追記

ああるさんのコメントに返信していて、「Mitaka(ミタカ)」のことを思い出しましたので、ここにもメモしておきます。
「Mitaka」は、「国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト(http://4d2u.nao.ac.jp/)」が提供するフリーソフトです。
自分のPC上で、「地球から宇宙の大規模構造までを自由に移動して、宇宙の様々な構造や天体の位置を見る」ことができます。
容量が大きいソフトなので少々注意が必要かも・・・

ダウンロードはこちらから→http://4d2u.nao.ac.jp/html/program/mitaka/

「暴露」スノーデンが私に託したファイル/グレン・グリーンウォルド

CIA(アメリカ合衆国中央情報局)やNSA(アメリカ国家安全保障局)の局員として、アメリカ政府による情報収集活動に関わっていたエドワード・ジョセフ・スノーデンが、NSAによる個人情報収集の手口を告発したのは、昨年、2013年6月のことでした。

あれから1年。
先月、スノーデンの告発に関するノンフィクションが2冊、同時に出版され書店に平積みされていました。
一つはジャーナリスト、グレン・グリーンウォルドによる本書「『暴露』スノーデンが私に託したファイル」(新潮社)。
方やイギリスの大手新聞『ガーディアン』の海外特派員による「スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実」(日経BP社)。

どちらを買うか悩んだ末『暴露』を選んだ理由は、本書の方が機密文書を多数収録しているから。知りたい。文書の中身を!でも、『暴露』ってタイトルはちょっといただけない。
このタイトルは日本向けなのか、原題は『No Place to Hide』-隠れる場所はどこにもない-というものです。本書を読むと、原題の持つ意味は深い。

本書は5章仕立てになっています。
第1章「接触」、第2章「香港での十日間」では、著者グレン・グリーンウォルドが香港に身を潜めるスノーデンと密会し機密文書を受け取り、それを公開していく顛末をスリリングに書いています。まるでスパイ映画を観ているような感覚で読んでしまいますが、しかしこれはフィクションではなく、当事者が語る命がけの現実。

第3章「すべてを収集する」、第4章「監視の害悪」には、多数の機密文書が掲載されています。それらの機密文書を読み解き、具体的にどのようにして、NSAが大量情報収集を実行してきたか、目的は何か、それに対する国内外の反応や、監視社会が人々に与える害悪などについて述べています。

第5章「第四権力の堕落」では、グレン・グリーンウォルドは、「立法」「行政」「司法」に続いて第四権力と言われる「報道機関」、ジャーナリズムのあるべき姿勢について論じています。

スノーデンが暴露した機密文書の、中でも衝撃的だったのは、インターネット監視プログラム「PRISM(プリズム)」の存在が立証されたことです。
「PRISM」は、世界の人々のあいだで交わされる電子通信をすべて収集・保管・監視・分析できるようにするシステムだといいます。
このシステムにはインターネット企業や電話会社の協力が不可欠であり、企業はNSAに顧客情報へ無制限のアクセスを許可しているのです。
マイクロソフトの「So.cl」(ソーシャル)、Google、ヤフー、Facebook、アップル、AOL、Skype、YouTube、PalTalk(チャットソフト)など、ウェブサービスを通してユーザーの電子メールや文書、写真、利用記録などの情報を、政府からの要求のままに提供してきたという。

マイクロソフトは”あなたのプライバシーは私たちの最優先事項”というスローガンを掲げる一方で、同時に暗号化システムを回避する方法をNSAと共に構築したりしている。
「国外に輸出されるルーター、サーバー、その他のネットワーク機器を定期的に受領、押収して、それらの機器にバックドア監視ツールを埋め込んだうえで再び梱包し、未開封であることを示すシールを貼って、何事もなかったかのように出荷する。NSAはこうして世界中の全ネットワークと全ユーザーに対するアクセス手段を得ていた」などといった企業の協力体制は、ユーザーへの裏切り行為に他なりません。
そんな中で、「ツイッターは(政府からの)要求を拒んだ」というエピソードには、わずかに心救われる思いがしました。

アメリカ政府は、「PRISM」で電子通信を収集するほか、世界中の光ファイバー網に直接侵入したり、アメリカ国内のシステムを通過する情報(※国際間のインターネット通信はだいたいアメリカのシステムを通過する)をNSAのデータベースに転送したり、他国の諜報機関と協力して情報を得たりして、膨大な量の情報を傍受、収集していました。いったいそれは何のために?

最初の名目は、テロ防止のため、だったはずですが、この監視プログラムによって未然に阻止できたテロ事件は1件もない、という事実にも驚かされます。
2013年のボストンマラソン爆弾テロ事件においても阻止するどころか、何かを検知することすらできなかった。
「あらゆる人間の通信に関するあらゆる記録を収集することは、本物のテロリストが企てている本物の計画を目立たなくさせるだけだ」と分析する科学者もいます。
データ量が膨大になり過ぎて、データを効率的に分類することさえままならなくなっている、のだといいます。
情報の大量収集は、テロ対策には何の成果もあげていない。
それどころか、NSAが、通常のインターネット取引や電子記録の暗号手段を無効化することは、クラッカーや敵対勢力の侵入に対してもインターネットのセキュリティを脆弱にしてしまうことである、という指摘もあります。これは、世界一般のインターネットユーザーを危険にさらしていることでもあるのです。

もはやNSAはコンピュータオタクのハッカー集団。
「世界中全ての情報を収集する」を目標に掲げ、偏執狂的にシステムの開発、構築を繰り返し、国内外のテロとは無関係な人々の日常を監視してきた様子が、暴露されたファイルには得意気に記録されています。
また、アメリカ政府は、監視システムによって収集した情報を、テロ防止ではなく、主に国内外に対する経済活動や、政府を批判する人物のプライバシー監視に利用していたことも明らかです。

NSAの情報収集・傍受行為の具体的な手段は?
NSAと情報を共有しあう、ファイブ・アイズ同盟国とは?
スノーデンの内部告発は国益に反する行為か?
内部告発者はどのような社会的攻撃を受けるか?ウィキリークスのジュリアン・アサンジの場合は?
監視され続けることでプライバシーを無くした人々は、どのような心理状態になっていくのか?
監視社会から隠れる方法は?
などなど、本書の読みどころはたくさんあります。
何といっても大事なのは、ジャーナリズムの本来の使命とは何か?ということです。
これは、ジャーナリストだけでなく、情報を受け取るだけの一般人である私たちにとっても、考えなければならないことだと思います。
スノーデンの内部告発から見えてくるアメリカ政府の、権力の濫用、行使、それに加担するジャーナリズムの姿は、日本の現状-アメリカに監視されながら追随している日本の現政権の暴走っぷり-を考えれば、決して他人事ではないと思います。

スノーデンは内部告発するにあたって、自分の正体を明らかにしました。
国家機密を暴露すれば、テロリストという汚名を着せられ逮捕され、グアンタナモ湾収容キャンプに収監され拷問され・・・となってしまう危険性を十分承知していながら。
しかし、自ら名乗り出て、自らの行動に対する責任を取り、隠れることも追われることも断固拒否することによって、彼は身の安全を得ることができました。
内部告発に踏み切ったスノーデンの信念は、次のようなメッセージに込められています。

「マスメディアの自由闊達な精神の保持とインターネットの自由のために戦ってください。私は政府の最も暗い一角で働いてきました。彼らが恐れるのは光です。」

「フェルマーの最終定理」/サイモン・シン

+y=z は、nが2よりも大きい場合、整数解は存在しない。

『フェルマーの最終定理』と呼ばれるこの定理は、フランス人、ピエール・ド・フェルマーによって17世紀に発見され、彼の死後、多くの人々がこの定理の証明に挑戦してきました。
そして、3世紀の時を経た1993年6月、ついに一人の数学者が定理の証明に成功した!と発表しました。しかし、わずか数か月後に、証明には根本的な欠陥があることが明らかになりました。

本書『フェルマーの最終定理』(新潮文庫/2006年発行)は、その数学者アンドリュー・ワイルズの苦闘の物語であり、同時に”数”の魅力に憑りつかれた人々の壮絶な歴史の記録です。
著者のサイモン・シンの筆致は軽快で分かりやすく、「数学界の偉大な英雄たちを一人残らず巻き込んで展開する、勇気、不正、ずるさ、そして悲しみに彩られた魅力あふれる冒険物語」である、と言う通り、読み始めたら止まらない面白さです。
『フェルマーの最終定理』を解こうなんて一度も考えたことのない私でも、いやむしろ無知な私だからこそか、未知なる数論の世界に惹きこまれてしまいました。

正直に言えば、私は、『フェルマーの最終定理』というのがあるらしい、という程度の知識しかなく、それどころか、中学生の頃習ったはずの「『ピュタゴラスの定理』を言ってみろ」と言われても今はもう言えない。それとは無関係の人生を何十年も生きてきたのですから。

直角三角形の斜辺の二乗は、他の二辺の二乗の和に等しい。

方程式として表すと、x2+y2=z2 となる。

『フェルマーの最終定理』とは、この『ピュタゴラスの定理』を基礎として生まれたということです。そこで、本書はまず、ピュタゴラスが命をかけて”数”の真理を追い求めた紀元前六世紀から、物語が始まります。

その後、話は17世紀に飛んで現代にいたるまで、フェルマーや、数学にかかわったプロやアマチュアの天才たちが残した業績や、フェルマーの残した定理を証明しようとした人々の悪戦苦闘ぶり。
そんな彼らを魅了してやまない”数”にまつわる、自然界のミステリーの数々。
あるいは、他の分野と同様、女性研究者の歴史は偏見と差別との戦いだったというような話。
そして数学が戦争に利用されるようになり、コンピュータが発明され、戦後、証明へ大きな道筋をつけることとなった、二人の日本人数学者が登場する。
そうした多彩で興味深いエピソードを織り交ぜながら、アンドリュー・ワイルズへと繋がっていきます。

が、「谷山=志村予想を、セルマー群の計算に還元し・・・楕円方程式とモジュラー形式の根本的な関係を維持するには・・・」といった証明へのアプローチに話が及ぶと、もう私には何のことだかさっぱり理解できません。

こんな訳の分からない言葉を操る人たちの物語なのに。
『フェルマーの最終定理』を知らなくても、私はこれからも支障なく生きていけるけど。
情熱をもって取り組むことのできる『定理』を心に抱いている彼らが羨ましくもあり、真理を求め、無限のかなたを目指して歩みつづける、天才たちの姿に心打たれます。

WordPressをローカル環境で動かすWordPress Portable

WordPress Portable(ワードプレスポータブル)というのがあるそうです。
XAMPPと同じように、WordPressをローカル環境で動かすことができる、WordPress専用のアプリケーションです。
WordPressのカスタマイズには、レンタルサーバーにアップする前に、ローカル(自分のPC内)でテストできる環境がある方が、断然便利で安全です。
WordPress PortableはXAMPPより設置が簡単、データベースの設定も不要だそうです。
ただし、マックには対応していないらしい。

001

私もどんなものなのか試してみたかったのですが、 既にXAMPPを導入している場合、まずXAMPPをアンインストールしなければならないようなので、WordPress Portableの設置は諦めました。
WordPressユーザーで、まだローカル環境の構築をしてない方は、 試す価値があると思いますので、紹介してみました。
興味のある方は、下記サイト等を参考にしてみてください。

「城ヶ崎悟展」「架爾美智也個展」二つの個展のご案内

ああるさんより二つの個展の案内状をいただきましたので、ご紹介します。

「城ヶ崎悟展」 -白い刻-

5月24日(土)~6月8日(日)

10:00~19:00 会期中無休
オープニングパーティー/5月24日(土)16時~
会場:みぞえ画廊 (MIZOE ART GALLERY


みぞえ画廊   (mizoe-gallery.com)   福岡市中央区地行浜1-2-5     TEL:092-738-5655

「架爾 美智也個展」
重ねられる時間と空の誘い

5月25日(日)~6月8日(日)

11:00~17:30 (会期中月曜日休み)
初日15時より茶話会&ギャラリートーク
会場:Art Space道
鹿児島市郡山町4208
TEL:099-298-4255

通畠義信氏が県美展で知事賞!

当サイトでご紹介しています通畠義信氏の彫刻作品が、「第61回県美展」にて知事賞を受賞しました。
おめでとうございます!!

作品タイトルは『飛べない鳥』
展示前の作品画像をアップしました。
生の作品をぜひ、展示会場でご覧ください。

作品の展示は以下の通りです。

  • 平成26年5月17日(土)~5月25日(日)
  • 会場:鹿児島県歴史資料センター黎明館  9:00~18:00(最終日16:00まで)
  • 会場:鹿児島市立美術館  9:30~18:00(最終日16:00まで)
  • ※5月19日(月)は休館日

『What’s Going On』と中桐雅夫の『こんな島』

不意にマーヴィン・ゲイ の『What’s Going On』がカーラジオから流れてきました。
この曲はマーヴィン・ゲイの中で私が一番好きな歌ですが、聞くといつも泣きたいような、落ち着かない気持ちになります。

マーヴィン・ゲイが「音楽に没頭するきっかけは、彼の父親の常軌を逸した躾であり、精神的な虐待であった。(ウィキペディア マーヴィン・ゲイ参照)」そうです。マーヴィンの最期は、その父親によって殺されるという、あまりにも悲劇的なものでした。
しかし彼の歌からは、「戦いは解決にならない。憎しみを克服できるのは愛だけだ。」というメッセージが、今もなお美しい旋律とともに伝わってきます。

What’s Going On?
今、この国で「何が起こっている」か考えてみると、何よりもざわざわした気分にさせるのが、集団的自衛権の行使が容認されそうだってことです。
こんな大事なことを、国民の意見を聞くこともなく決めてしまおうとしている。
”戦争ができる国”になりたいんじゃないでしょうね?
それを望んでいる人たちがいるけど、私は望んでいない。

中桐雅夫詩集「夢に夢みて」より
『こんな島』

みんなが正しくおれは間違っているから
おれはいっそ情けない怠け者になってやろう
線香の煙のように
寝言と仕事の間をうっすら揺れていよう

武器を手にしていないものはいないから
むしろおれはやさしい言葉になってみたい
きれいな人の咽喉と舌の間にころがって
唇から外へ出ない音になってみたい

だれもかれも勇敢だから
おれはいっそ卑怯な火消しになってやろう
ふところの金を勘定しながら
見舞い酒でねたみ心を燃え上がらせよう

みんな目的と確信をあり余らせているから
おれは行先を考えずにとぼとぼ歩こう
自信のないことがおれの唯一のとりえだ
おれは強いものや激しいものから離れていよう

故郷を恋しがらぬものはいないというから
おれは故郷をことわり続けてやろう
雨といっしょに降る塵となって
「こんな島は沈んでしまえ」とどなってやろう

今邑彩の短編集「鬼」

ミステリー作家の今邑彩(いまむら・あや)さんが死去されたことを、1年以上も経った今頃知りました。
ネットニュースによると、昨年の「3月6日に自宅で倒れたまま亡くなっているのが発見された。約2年前から乳がんを患い、2月上旬に死去したとみられる。」そうです。57歳でした。

昨年の秋ごろには、「ルームメイト」が北川景子主演で映画化されたと話題になっていたので、てっきり現在もご活躍のことと思い込んでいました。
もう新作が読めないことも、とても残念です。

最初は文庫本の表紙絵に惹かれて読み始めた作家でしたが、心理的な恐怖をミステリアスに描いて、ひんやりとした異世界に足を踏み入れたような気分を味わさせる作風が好きでした。
ミステリー作家というよりは、ダークな世界のストーリーテラーといった感じです。

幼い頃、たぶん5,6歳の頃、近所にちょっと変わったオジサンがいました。夕方、近所の子供たちを集めて、「怖い話」をしてくれるのです。
オジサンと言っても、今思えばまだ30代くらいの人だったかも。何しろ遠い記憶で、覚えているのはオジサンが小さな女の子と二人で暮らしていたこと。あるとき近所に越してきて、間もなくふっつりといなくなってしまったこと。オジサンの「怖い話」を聞いた後は、走って家に帰ったこと。

今邑彩の作品を読んでいて、そんな子供の頃の記憶が甦りました。
テレビがお茶の間にやってくる前は、そんな町のストーリーテラーが日本中のいたるところにいて、子供たちを怖がらせたり、楽しませたりしていたのではないかと思います。

個人的な好みでいえば、今邑彩の作品では、長編より短編の方が気に入っています。
その中でも特に好きな作品が、短編集「鬼」(集英社文庫:2011/2/18)に収録されている表題となった『鬼』です。

『鬼』は、7歳の頃、一緒にかくれんぼをして遊んだ5人の幼馴染みの物語。
夏休みのある日、鬼になったみっちゃんは、いつまで待っても姿をあらわさなかった。その後、古井戸から変わり果てた姿となって発見された。それから数年が経ち、残った幼馴染みは一人、また一人と死んでいく。皆、死の間際に、白いブラウスに赤いスカートをはいた女の子の姿を見ていた・・・・

と、粗筋を書くとまるっきりホラーな感じですが、しかし『鬼』はホラーではない。心にじんわりと沁みる物語です。
「それから、すこしわらった。」というラストの1行は、私の胸にも強く響きました。
私もいつしか主人公の心境に共感できる年齢になった、いえ、共感できる立場になっちゃったなあと思うのです。

文庫版の著者あとがきによると、今邑彩さんもこの短編集が、ご自身の短編集の中で一番お気に入りだそうです。
今邑彩さんは亡くなってからずい分日が経って発見されたとのことで、彼女の最期を見た人は誰もいない。だから、私は、彼女はすこし笑って異世界に旅立った、と思いたい。

特捜部Q-キジ殺し-/ユッシ・エーズラ・オールスン

ハヤカワ・ミステリ文庫 (2013/4/5)

コペンハーゲン警察『特捜部Q』シリーズの第2弾です。
1作目の『特捜部Q ―檻の中の女― 』で、ミレーデ・ルンゴー事件を解決したカール・マーク。
その功績が認められ、特捜部Qには新たに女性メンバー、ローセが加わることになりました。
このローセが実は他の部署から厄介払いされた問題のある女性で、何かにつけカール・マークをイラつかせます。
ローセだけでなく、カール・マークを取り巻く登場人物は、カールの上司も同僚もアシスタントの謎のシリア人も元妻も義理の息子も間借り人も、ひと癖もふた癖もあり、カールの苛立ちの対象となるのです。
過去の事件で負傷し、脊髄損傷病院のベッドで寝たきりになっている元部下ハーディは、カールが見舞うたびに自殺願望を口にしてカールを悩ませるし、美貌の心理療法カウンセラー、モーナ・イプスンに対しても、カールは想いが募りすぎて苛立っている。
カールは、いつだって誰かに何かにイラついたりムカついたりしている。そもそもカール自身が周囲の人をイラつかせてしまう厄介者だっていうのに。

うかつにも私は、1作目『特捜部Q ―檻の中の女― 』を読んだあとカール・マークについて、「キャラクター設定はダーティハリーのハリー・キャラハンを継承しているように思う」とか、「日本でドラマ化されるとしたら、カール・マーク役に西島秀俊なんてどうでしょう?」などと書いていますが、これはとんでもない的外れでした。
カール・マークとローセとのやり取りは、まるでお笑いコントだし、美貌の心理療法カウンセラーへの恋心は、思春期の少年並み。まったく大人じゃない。
大柄で、茶色の革ベルトをしていて、サイズ45の履き古したドタ靴(27.5㎝:「靴サイズ対応表」 参照)を履き、彼の頭には、お尻みたいな形のハゲがある。

西島秀俊には、とてもさせたくないキャラクターです。

さて肝心なストーリーの方はと言えば、今回はかなり残虐な暴力シーンが多い。
それというのも、上流階級の家庭に生まれ、寄宿学校で出会い、『時計じかけのオレンジ』に魅了された、サディステッィクな若者たちが犯人だからです。
と、いきなり犯人をバラシちゃっても大丈夫。本書は、早い段階で犯人が明らかになります。

「罪のない者を痛めつけることは、彼らにとって称賛すべきことでもなければ、恥じ入ることでもない。幼少のころから慣れ親しんできた、いわば習慣なのだ」という、この犯人たち。すなわち特権階級に生まれた育った彼ら。
彼らへ報復することだけを心の支えに、過酷な路上生活を送るキミーと呼ばれる女。
キミーもかつては上流家庭に育った令嬢だった。
キミーも彼ら以上に凶暴性を持っている。
復讐のために彼らに徐々に迫っていくキミー。
事件の真相を明らかにするため、キミーを探し回るカール。
果たしてキミーの復讐は遂げられるのか。
といったところがスリリングな、リベンジ・サスペンスストーリーです。

それにしても、暴力描写が凄まじい。犯人たちは残虐で凶暴。
こんな犯罪小説はまっぴら!と言いたいところですが、実は3作目『特捜部Q ―Pからのメッセージ―』もすでに購入済みです。どうも私は、『特捜部Q』シリーズに嵌ってしまったらしい。
本書の解説で作家の恩田陸さんは、『特捜部Q』を「ある意味寓話的な、おとぎの国の暴力の小説なのである」と書いています。アンデルセンの童話のように、身体的な痛みを伴う物語であると。
確かに同じ警察小説でも、マイクル・コナリーのハリー・ボッシュ・シリーズと比較してしまうと、ストーリーのリアリティ度は低いかも。
それでも嵌ってしまうのは、ハリー・ボッシュ・シリーズには無いユーモアがある。それに、登場人物の描写は、犯人をも含め、興味をそそられます。
そしてまた、 カール・マークを通して感じられる、デンマークという国への興味も大きい。
次回作でカールは、脊髄損傷病院から元部下ハーディを引き取って、自宅介護をすることになるので、ますます福祉国家デンマークの実態も見せてもらえそうです。

「WordPress自動更新しました」っていつから?

昨日(4月9日)突然送られてきた以下のメールにびっくり!

サイト (https://art-container.net/scrapbook) を WordPress 3.8.2 へ自動更新しました。
何もする必要はありません。 バージョン 3.8.2 について詳しくは「WordPress について」画面をご覧ください。

送信元はhttp://ja.forums.wordpress.org/WordPress チーム。
あわてて利用中のWordPressのダッシュボードを確認してみると、確かにバージョン 3.8.2になっています。
でも、WordPressの更新っていつから自動更新になったの?ひょっとしてこれは、誰かのいたずら?いわゆる遠隔操作ってやつ?
と、私みたいに驚いて不安になった人たちも多いようです。
ネット検索したところ、「WordPress3.8.2へのサイト更新が完了しました|自動更新で勝手にアップデート!?」を読んで、ほっと一安心。
WordPressの自動更新は、Wordpress3.7から付加された機能らしいです。
知りませんでした。
自動更新機能については、下記サイトに詳しく紹介されていました。

WordPress 3.7 の自動バックグラウンド更新機能、言語パックについての情報

これまで、WordPress のアップグレードの際にCodexページ(現在は「WordPressサポートhttps://ja.wordpress.org/support/)で新バージョンの内容を確認することもなく、さんざん利用しているわりには、深く理解しようとする姿勢のない、テキトーなユーザーだったのだなあと思います。

こんないい加減なユーザーのために、自動更新機能は追加されたようです。
「どうしてデフォルトで自動更新が有効化されているの?」を読んで納得です。

どうしてデフォルトで自動更新が有効化されているの?

コア開発チームなどはこの変更について非常に長い間じっくりとディスカッションを行ってきました。自動更新はセキュリティ上の問題を最小限に抑えるためのものであり、デフォルトで有効化されている理由は「この機能を最も必要としているユーザー層は、変更に気づかず有効化しないのではないか」という想定からです。
参照:「WordPress 3.7 の自動バックグラウンド更新機能、言語パックについての情報

「所有せざる人々」アーシュラ・K・ル・グィン


ハヤカワ文庫SF(1986年7月)
恒星タウ・セティをめぐる二重惑星アナレスとウラス―だが、この姉妹星には共通点はほとんどない。ウラスが長い歴史を誇り生命にあふれた豊かな世界なら、アナレスは2世紀たらず前に植民されたばかりの荒涼とした惑星であった。オドー主義者と称する政治亡命者たちがウラスを離れ、アナレスを切り開いたのだ。そしていま、一人の男がアナレスを離れウラスへと旅立とうとしていた。やがて全宇宙をつなぐ架け橋となる一般時間理論を完成するために、そして、ウラスとアナレスの間に存在する壁をうちこわすために…。ヒューゴー賞ネビュラ賞両賞受賞の栄誉に輝く傑作巨篇。(「BOOK」データベースより)


“ヒューゴー賞、ネビュラ賞、両賞受賞!”に魅かれて、作者もストーリーも知らないまま読み始めました。
作者アーシュラ・K・ル・グィンは、SF界の女王と称され、日本でアニメ化された『ゲド戦記』の原作者だそうです。

本書「所有せざる人々」の主人公は、地球から11光年の彼方にある『アナレス』という惑星の科学者シェヴェック。
アナレスは、隣の惑星『ウラス』から政治亡命してきた人々が移住してつくった、歴史の浅い、いまだ開拓途上にある惑星です。
アナレスでは、人々は何も所有せず、互いに全てを分け合って暮らしています。荒涼とした砂漠があり、飢饉があり、貧しい世界のイメージです。
一方、隣の惑星『ウラス』は、長い歴史があり豊かな文明があり、人々はあらゆるものを所有して暮らしています。イメージとしては現在の地球の一部の先進国、といったところでしょうか。
物語は、主人公シェヴェックが、アナレスからウラスに旅立つところから始まります。

読み始めは、あまり面白みを感じられませんでした。何だかイソップの「田舎のネズミと町のネズミ」みたい。二つの異なる文化を引き比べて、どちらが幸せか?といった寓話の宇宙バージョンかな、と。
けれど、読み進めるうちに、シェヴェックの人生やアナレスの生活に惹きこまれていき、SF小説を読んでいるというよりは、宇宙のどこかに実在する一つの惑星の歴史と、一人の異星人の伝記を読んでいるかのような気分になりました。

惑星アナレスは、アナキズムの社会です。
作者は、政府が無くても秩序のある社会を、具体的に細かく理念と理想を込めて構築しています。
そして、そこに住む人々の暮らしぶりや想いや苦悩を、鋭い社会批判を以て描き出しています。
作者の描くアナキズム社会は、国家が存在せず、政府も警察機関もない小規模な共同体の集まりである社会。権力が無いから命令されることも服従することもない。
労働も衣食住も全てを分け合い、誰も何も所有しない。全ての人間が平等である社会。
平等に自由であり、そして平等に貧しい社会です。
作者は、渾身の力で惑星アナレスにユートピアをつくりだそうと模索しているように思えます。
果たして惑星アナレスが人類にとってのユートピアなのか?というところも、本書の読みどころです。

本書のもう一つのテーマは「時間」です。
主人公シェヴェックは「時間は、線であると同様に、惑星が公転しているように循環している。」と考え、時間の「連続性」と「同時性」をまとめて証明できる「一般時間理論」を完成させることに人生をかけ、長年足掻き苦しむのです。
この「一般時間理論」が完成したら、宇宙空間で時間的にずれのない通信が可能になるという。シェヴェックは惑星と惑星が同時的に繋がることのできる宇宙を、つくりだしたいと願っているのです。まるでインターネットで繋がっている現在の地球のように。

ところで、アナキズムについて言えば、1968年から1970年、学生運動というものが日本にあった頃、「右翼」や「左翼」という言葉と共に、私の耳にも聞こえてきたイデオロギーでした。
「アナキズムは、『国家を含む権力装置を持たない』という思想や主義の総称である(ウィキペディア「アナキズム」を参照)」とありますが、当時の私は単純に「無政府主義」と捉えていました。
ちょうど反抗期の中高生だったので、国家権力を我がものにしたがるウヨクやサヨクより、権力に服従することのないアナーキーな思想は、束縛がなく自由で、ちょっとカッコ良く思えたものです。
しかし、この「所有せざる人々」を読むまで、「国家を含む権力装置を持たない社会」って、いったいどうやって運営されていくのか?どんな暮らしになるのか?なんてことを、私は具体的に想像したことなど一度も無かったことに気づきました。
具体的なビジョンを持たないイデオロギーなんて、あまり意味がありませんね。
自分ならどんな社会をユートピアとするか、自身に問いかけ想像することが大事だと、この本は改めて気づかせてくれました。

wpプラグイン「topへ戻る」ボタンを比べてみました。

ボタンをクリックすると、ページのトップにシュルシュルっとスクロールしてくれる。無くてもさほど困らないけど、あるとwebサイトがちょっとカッコ良くなる「topへ戻るボタン」を、いくつか比べてみました。
プラグインをインストールして有効化するだけで 作動するものと、設定やオプションがあって、カスタマイズできるタイプがあります。

「RRF Scroll To Top」,「Royal Scroll to Top」
「Smooth Page Scroll to Top」,「Scroll Button」
topbutton-1

いずれも同じタイプのボタンです。
オプションはありませんので、プラグインを有効化するだけで、すぐ作動します。
ボタンが現れる位置やアニメーションに、微妙な違いがあります。

「Scroll to Top Button」
topbutton-3

これもオプション無し。プラグインを有効化するだけでOKです。画面の右下角っこに四角いボタンがスッと現れます。

「LB Back To Top」
topbutton-11

オプション無し。プラグインを有効化するだけでOKです。
画面右下に文字付きの黒い四角いボタンが現れます。
文字はプラグインファイル(backtop/index.php)を直接編集して変更できます。

「Smooth-scroll-to-top」
topbutton-8

オプションは無し。プラグインを有効化するだけでOKです。画面右下にボタンが現れます。

「WP Scroll To Top」
topbutton-17

プラグインの有効化だけで作動します。アイコン5個からボタンを選べるオプションがあります。
(私の場合icon4は、表示されませんでした。)

「WP-Smooth-Scroll」
topbutton-9

ボタンの位置を右、中央、左から選択できます。
ボタンは、マウスオーバーで青色に変わります。

「Back To Top」

ボタンやアニメーションの効果について、オールマイティーなオプションがあります。
ボタンのオプションは以下の3通り。

①左のような25種類の画像が用意されているので、その中から気に入ったボタンを使う。
②手持ちの画像をアップロードして使う。
③画像でなくテキストでボタンを表示する。
ボタンの動きについても3通りのエフェクトが選べます。
①ボタンが、フェードイン/フェードアウト する。
②ボタンが画面下から上下に、スライドアップ/スライドダウンする。
③ボタンが画面右下角からヒョイと現れ、ヒョイと引っ込む。

「Scroll To Top」
topbutton-18
topbutton-5

テキストとテキスト幅、文字色、背景色を設定できます。ボタンは画面の中央に現れます。

まだまだ、ありますが、このくらいにしておきます。
利用しているWordPressのバージョンや導入しているプラグインなどとの相性で、作動しないものがあるかも知れません。

スマホアプリ「Instagram」登録エラー!解決

instagram

先週のこと、スマホ携帯のアプリで、「写真投稿によるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)『Instagram(インスタグラム)』が面白いよ」と勧められ、アプリをインストールしてみました。しかしユーザー登録の際エラーが出て四苦八苦するはめに。
Instagramは「世界で1億5000万人以上のユーザーが利用」しているらしい。
写真を加工する様々なフィルタエフェクトが装備されているので、それを使用すれば素人写真もステキに変身できるらしい。
それを携帯から投稿して世界中の人に見てもらうことができる。
世界中の人のステキな写真もシェアして、携帯の中に〝お気に入りの写真集〟を作ることができるらしい。
写真を投稿するだけなら、コメント下手な私でも気楽に参加できるはず。
と、はりきってインストールしたのです。しかしインストールは簡単にできるのに、ユーザー登録の際、次のようなエラーが出ました。

Too many users have been registered on this device 

ディバイスに登録されているユーザーが多過ぎる、とはいったいどういうこと?

ネットで検索してみると、同じエラーが出て登録ができないという人も多いようです。
でも解決法を見つけることができず、アプリをアンイストールして、webサイトからインストールしてみたり、登録に使うメールアドレスを変えてみたり、Facebookにリンクさせて登録してみたり、キャッシュの削除をしてみたり。
試しに「Instagram」と同様の写真投稿SNSアプリ「FxCamera」をインストールしてみると、こちらの方は登録もすんなりできました。

エラーの原因として思い当ることは、最近携帯の機種変更をしたため、携帯が2台ある状態になっていること。
古い携帯に「Instagram」をインストールしてみましたが、やはりログインはできません。
そこで以下のような手順を試してみると、ユーザー登録ができましたので、ここにメモしておきます。

  • (1)古い携帯を初期化して再起動し、初期設定をし直す。
  • (2)古い携帯のgoogle playストアを開いて、既存のgoogleアカウントとパスワードを入力 する。
  • (3)古い携帯に「Instagram」をインストールし、ユーザー登録をする。
  • (4)新しい携帯に「Instagram」をインストールし、古い携帯に入力した通りの内容でユーザー登録をする。

以上のように簡単なことですが、あれこれ試行錯誤した結果です。
登録メールアドレスにはgoogleのGメールを使いました。別のメールアドレスでもいいのかもしれませんが、試していません。
もしかしたら、古い携帯を初期化などしなくても解決できる方法があるかも知れないし、アプリ側に原因があることかも知れませんので、まあ、あくまでも参考程度に。

「Instagram」の使い方には、「カッコいい写真を投稿できる「Instagram」を徹底解説(http://ascii.jp/elem/000/000/755/755677/index-2.html)」が参考になります。

「Instagram」と「FxCamera」はほとんど同じようなコンセプトの写真投稿SNSですが、大きな違いは投稿時の画像の切り取り方。
「Instagram」の場合、画像はすべて正方形に切り取られます。
「FxCamera」は正方形のほか縦長、横長の3種類から選択して切り取ることができます。

両方とも使ってみて、主観ですが「Instagram」の方が動きがスムーズな気がします。

写真によるコミュニケーションサイトは、写真を投稿して自分を表現することもできるし、投稿しなくても世界各国のユーザーの撮った写真を瞬時に見て、感じることができる。そこには国境は無いし、言葉も要らない。それがいいなって思えます。

【追記】

本日(2014年8月24日)「Instagram」の登録ができなくて困っている方からコメントを頂いて、改めてgoogleで検索をしてみました。これまでも何度か検索してみて、解決できたという記事を見つけることが出来なかったのですが、今回は参考になりそうなものが2件ありました。コメントの返信にも書きましたが、ここにもメモしておきます。

(1)「一度携帯をクリーンインストール(工場出荷時の状態に戻す)することでIDが変わって登録できるようになります。」
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11129476171
(※初期化する前に携帯内のデータ保存を忘れずに!)

(2)「友達などのスマホを借りてアカウントを作った後、自分のスマホでログインする」
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10133926870