このところ私の読書体験はノンフィクション的なものに偏りがちです。
図書館で借りるのは値段の張るイラスト関連のものばかりで、いわゆる”小説”を読む機会がめっきり少なくなりました。
時には小説、特にミステリやSFなどの虚構の世界にどっぷり浸る、あの刺激的な没入感が欲しい。そう思い立ったら矢も楯もたまらず、一昨日の午後図書館に行きました。
図書館で借りたい本を6冊ほど検索すると、村上春樹の『街とその不確かな壁』は市内全域の図書館で貸し出し中になっていて、さすがですね。みんなの熱が冷める時を待つしかないような状況です。
すぐ借りれる本は4冊ありました。2週間という貸出期間で4冊は読めそうにないので今すぐ読みたい2冊を選びました。
平野啓一郎『空白を満たしなさい』とパオロ・バチガルピ『第六ポンプ』です。
『空白を満たしなさい』平野啓一郎/2012年
『第六ポンプ』パオロ・バチガルピ/2012年
『空白を満たしなさい』は昨年NHKでドラマ化されたそうで、とても面白いという評判を聞き読んでみたいと思っていました。なによりも『空白を満たしなさい』というタイトルに惹きつけられます。
空白とは何か、何で満たすのか。タイトルからしてミステリアスです。
YouTubeのRadioheadのサイトで全ての動画を再生しながら、まずはこの本から読み始めます。
『空白を満たしなさい』を読んで
ミステリと思って読み始めたら、主人公土屋徹生(36歳)は3年前に自殺して生き返った人間であるという。それもどうやら世界各地で死んだ人間が生き返る現象があり、彼らは「復生者」と呼ばれるーーーという設定で始まる物語でした。
SFのように現象に対して科学的裏付けを施す、ということは一切無い。とにかくこの設定を受け入れ、この荒唐無稽な物語がどこに向かいどこへ行きつくのか?を追いかける感じで、500ページ近い分量にも関わらず一気読みしました。
午後3時頃から読み始め夕飯と休憩を挟み、真夜中の3時頃読み終わりました。没入感、頂きました。
とは言うものの、かなり物語が長いという印象もありました。途中2ケ所ほど、ここで終わらないの?と思うポイントもありましたが、まあでもそれは、著者の世の中に対する問題意識や人間に対する思いが溢れ出ているようにも思えました。
その結果、この本で語られるテーマはいくつもあって、読む人によって捉えどころは異なることと思います。
そしていよいよ本当に最後のページになって、最後の一行を読んだ時、その最後の一行の素晴らしさに満足して本を閉じました。
余談ですが、テレビドラマでは主人公土屋徹生を柄本佑が、土屋を苦しめる佐伯という男を阿部サダヲが演じたそうですね。どちらも好きな俳優なのでできることなら観たかったです。
NHKって時々民放では観られないようないいドラマがあるんですよね。テレビを生活から排除すると決めた時、そのことが頭をよぎって、やっぱりテレビ捨てるのよそうかとも思ったものでした。
でももう捨てちゃったけど。
ドラマが先だった私は、小説の方は途中で止まったままです。ぜひ読みたいと思ったのに、すっかり阿部サダヲとかの顔が出てきてしまって。まあいずれまた読みますが。
阿部サダヲが出る映画・ドラマに外れは無いですね。