月別アーカイブ: 2013年3月

通畠家にお邪魔しました。

torike16-300通畠家には10年ほど前にお邪魔して以来、今回が2度目の訪問になります。
前回は2時間ほどかけて、車で行きましたが、その後、九州新幹線が開通し、今では鹿児島中央駅から出水駅まで25分程度に短縮されました。
時間的にはとても近くなりましたが、世の中のインフラが整っていくのと反比例して、私が遠出をする機会は、年々、少なくなっていきます。皮肉なものです。

torike17-300通畠家は10年前に引っ越しをしており、私がこの家を訪れるのは初めてです。
家の中にも外にも、ご夫妻の作品がいっぱい。アートにあふれたお宅です。
まずは、前庭に置かれた二つの大きなオブジェが楽しい。

玄関を入ると、紙素材のアートが並んでいました。
こちらは通畠朋子さんの作品。

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左上は通畠朋子さんの作品。
左下の絵は通畠義信氏の作品torike14-300

オレンジと紺色の扉も氏の作品です。どうしても開けてみたくなります。
torike12通畠義信氏は鉄や石。夫人は紙や布。
アトリエの中は夫妻の作品が無造作に、置かれています。
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ひらめきがあると、即座に削れる素材を使うことが多いそうです。
アトリエの中、発砲スチロールのオブジェもたくさんありました。

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河童の操り人形。こういうお茶目な作品もあり。

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(上)人見知りな愛娘〝りんごちゃん”

(左)発砲スチロールの腕で何か?を指さす通畠氏。

 

(下)裏庭からは、出水平野の田畑の広がりが見渡せる。時間をかけて錆びていく、鉄のオブジェのある風景。

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heri-189gazi-189通畠氏の車に置かれたオモチャ。ゴジラに釘。ヘリコプターはカメレオンに変身させて。

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本日から、出水市在住のものづくりたちによる、「いずみ ものづくり展」が、開催されます。
通畠夫妻も出品します。
「鉄のテツ学」展と合わせて、こちらも是非ご覧になって下さい。

【出品者】
《陶芸》宮上誠・永島 としゆき
《染色・ガーゼ服》本田すみ子・隅本和代
《鉄・石・銅版画》通畠義信・通畠朋子
《木工》平田健作・谷山陽啓

「第5回 いずみ ものづくり展」
2013年3月20日~3月26日 10:00~17:00
出水市クレインパークにて
(期間中 無休・・・最終日は16:00まで)

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「鉄のテツ学」展観てきました(3)

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オリジナル燭台
彫刻作品、それも私のもののように「白い、やさしい、かわいらしい」が表現の枠内に存在しないものは、なおさら、ほとんど売れるものではありません。何か売れそうなものをと思って、キャンドルスタンド展を何回かやっていますが、やっぱりやさしく親しみやすいものがつくれないので、今後も売れる可能性は薄いと思われます。

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写真館のための唐草燭台
写真館のための椅子装飾金物
福岡での工房勤め時代には、仕事として作っていた装飾金物。本来なら、本展での展示は「芸術」には頼らず、このような技をみせるものであるべきだったと思いますが、あまりにも数が少なく、むしろこの二点があってよかったと思うことです。

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「月夜」—————– 右「山に月」

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「黒と白の対峙」
2000年代に入り、鉄素材にこだわらないという意識のもとに鉄を使った作品が、『黒と白の対峙』や『月夜』といった作品です。石と組み合わせたり、石の形をつくったりして、なぜか風景彫刻の形になりました。

鉄と石
学生時代は、ただただ石を彫ることが好きで、後の1994年に初めて、仕事として石のモニュメントをつくりました。大きな石彫は、仕事がなければ作れない状態なので、商品を少しずつ作り続けており、構想もまだまだあります。
鉄彫刻と石彫とは、いろんな面で違いがありますが、私にとっては違和感がありません。素材の違いを楽しめば、共通するものを見つけることができます。

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羽根のアイデア 2001

出水市歴史民俗資料館では「写真撮影OK」だったので、私は「作品を全部撮るぞ」と調子に乗って撮り続けたものですが、帰ってきて確認すると撮り残しがだいぶありました。
仕方ありません。ここにアップされていない作品や作家のコメントについては、ぜひ会場で観ていただきたいと思います。
下の3点は新聞のコラムに添えて描かれたもの。
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まだまだ、続きます。
次回は、お宅訪問編です。後日、アートにあふれた通畠家の写真をアップしたいと思います。

『鉄のテツ学』展観てきました!(2)

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無常の地球儀(1991年)私が「理科室シリーズ」と呼ぶ小品群のうちの一点。このシリーズ作品は、自分でも気に入っていますが、それだけに人気もあり、友人知人関係に買ってもらったり、預かってもらったりしており、私の手元には一点もありません。第二弾も考えてみたいシリーズです。

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Soul boat-月の舟ー(1999年)彫刻は構築物であり、「骨格」が、その基軸であると考えます。多様な現代美術が存在し、私もさまざまな試みをして来ましたが、つまるところ、私の彫刻の概念は、敢えて限定的です。1990年代に入り、『無常の地球儀』に始まる「骨格そのもの」の作品が生まれて来ました。それからもうひとつ転換して「外骨格」の概念にたどり着きました。それが舟の形として具体化し、「魂の入れもの」という意味で、1995年に「Soul boatシリーズ」が始まりました。

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Soul boat ’96

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Soul boat-海の呼び声ー(1997年 コールテン鋼、全長450cm)
ハウステンボス光のギャラリー金賞受賞
2000年、サンアリーナせんだい(薩摩川内市)に展示

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「星月夜ー海の呼び声ー」(1995年、黒御影石)
’95日向現代彫刻展大賞 日向市御鉾ケ浦公園に設置

この続きはまた、のちほど。

『鉄のテツ学』展観てきました!(1)

昨日、出水市歴史民俗資料館にて、通畠義信氏「鉄のテツ学」展~鉄を素材とした空間造形の世界~を観てきました。
出水市歴史民俗資料館は出水市立中央図書館の2階にあり、その名の通り歴史的な民俗資料、(旧石器時代の遺跡物とか、先人たちの使用した生活用具や特攻隊関連資料など)を展示している施設です。今回のように現存する(!)作家の作品を展示するのは異例のことのようです。
普段は2階までは訪れる人のほとんどいない施設らしく、案内係のきれいな女性が、この特別展のおかげで「来館者が増えました」とニコニコされていました。

通畠氏の作品の性質上、展示されているのは移動可能な小品が主で、野外設置作品はその模型や写真の展示になります。
小品が多いとはいえ、学生時代に遡った作品から近年まで、私は初めて目にする作品も多く、それぞれの作品の素晴らしさに圧倒され、改めて「通畠氏って凄い芸術家なんだなあ」と感動しました。
何しろ普段の通畠氏は、あまり物事にこだわらない、来るもの拒まず、寛容でひょうひょうとした人物。オレは芸術家だぞ!という自己アピールもせず、芸術家にありがちな(と私が思うところの)奇矯な言動や気難しさもなく、私などにも心安く接してくれます。でも本当は私が考えている以上に偉大な人物なのだと、今回認識を更新しました。

前置きが長くなりました。そろそろ会場で撮ってきた写真を、一部ですが、アップしていきます。作品に対する通畠氏本人のコメントがファイリングされて置いてありましたので、合わせて紹介していきたいと思います。
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蝗(こう)(1977年)学生時代に作り始め、卒業後に完成し、福岡県美展でいきなり受賞した、私の鉄彫刻の原点といえる作品です。いきなり受賞はいただけません。二匹目のバッタ(?)を狙ってしまいます。ここにあった本質的要素が、形を変えて現れてくるのは、ずっと後のことでした。

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歩く猫(1979年)
くずれかけた廃屋の中で見つけた猫のミイラのヴィジョンが、普段掃き集めて捨てていた、鉄クズを呼び寄せて立ち上がり、歩き始めました。

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一番手前にあるのが、「柱’84-PASSAGE-(1984年)」
不定形の暗雲に中心を貫かれた三本の柱が、波うち、ゆらぎ始めています。「9.11 同時多発テロを受けて制作しました」と言っても信じてもらえるかもしれませんが、実は1984年の作品。
不安や危機感、そして不満は、どの時代にもあるものであり、当時の私の「柱シリーズ」のテーマが、そのようなものであったということです。「柱シリーズ」は三部作でしたが、まともな形で現存しているのは、この『柱’84』だけです。

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ペガサス 1993伊佐市 速水荘 設置

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龍座宮 (1990年、鉄、コンクリート)

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はばたき式UFO開発計画(1992年)

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時の巣(2000年)モニュメント等、大きな彫刻のコンクールの場合は、模型による審査が一般的です。この他にも、いくつも作ってきましたが、私の鉄の作品は、まったく採用されません。石やブロンズにない形の鉄のモニュメントを実制作させてもらえたらと思ってきました。「記念碑」という意味でのモニュメントではありませんが、唯一『時の巣』(霧島アートの森)の場合は、内定指名の上で作ったので、実制作が実現しました。

続きは、またのちほどアップします。