大学生のジョーは、授業で身の回りの誰かの伝記を書くことになった。適当な身内がいないため訪れた介護施設で、末期がん患者のカールを紹介される。カールは30年前に少女暴行殺人で有罪となった男で、仮出所し施設で最後の時を過ごしていた。カールは「臨終の供述」をしたいとジョーのインタビューに応じる。話を聞くうちにジョーは事件に疑問を抱き、真相を探り始めるが……。バリー賞など三冠獲得、衝撃のデビュー・ミステリ!
(「BOOK」データベースより)
小説というのはシリーズ物でなければ、主人公が魅力的な人物なのか、自分好みなのか、読んでみるまで分からない。
テレビドラマだったら、好きな役者が出演しているとか、配役情報だけで観る気になったりするのだけど、小説はそうはいかない。
特に本書のようにこれが作家のデビュー作となれば、登場するのは全員未知の人物ばかりです。
読みながら登場人物の顔や性格を、書かれている情報を元に自分なりに想像して新人俳優に育てていくのは、これも読書の楽しみ方の一つです。
本書『償いの雪が降る』の主人公ジョーは、結構魅力的な若手俳優でしたよ。
イケメンではないけど、健気で勇気があって、優しく、まっすぐで。
性別こそ違え、ジブリ映画に出てくる女の子みたいに、応援したくなるキャラクターではないかと思います。
酒とギャンブルと男に溺れている母親。今で言う「毒親」の元で育ち、自閉症の弟の面倒をみながら、自立し明るい未来を手に入れるために、孤軍奮闘する主人公。私も応援しながら読み進みました。
同じ主人公で2作目も書かれているということなので、シリーズ化されるかもしれませんね。
シリーズ物と言えば、私は以前、パトリシア・コーンウェルの『検屍官シリーズ』と、スー・グラフトンの『キンジー・ミルホーンシリーズ』に嵌って、新作を見逃さず読んでいた時期がありました。
でも、『検屍官シリーズ』の方はある時から、たぶん10作目かその前あたりからか、全く読まなくなってしまいました。何故か主人公のケイ・スカーペッタに魅力を感じなくなってしまったのです。
ケイ・スカーペッタが人気女優に育ち過ぎたのか、私の好みが変わったのかは分かりませんが、シリーズ物といえど惰性で読み続けることはできないようです。
一方、女探偵『キンジー・ミルホーンシリーズ』については、キンジ―に飽きることはなく、1作目『アリバイのA』から始まって、18作目『ロマンスのR』まで読みました。
『S』で始まる次回作の刊行をずっと待ち続けたけれど、何故か日本では『S』から後は翻訳されることはなく、2017年、スー・グラフトンは亡くなってしまいました。
今では既刊分も全て絶版だということです。本当に残念です。
できることなら、アメリカでは既に刊行されている『S』から『Z』までを、日本でも翻訳刊行して欲しい。
女探偵キンジーは社交的なことが苦手で、人と会った時天気のことぐらいしか話題がない。キンジ―が「この世にお天気があって、ホントに良かった」と自嘲気味に思う場面が、何故かいまだに妙に忘れられない。
面白そう。
検視官シリーズ、途中からなんか作家自身が病んだか?って感じになりましたよね。私も10冊ぐらいからあと読まなくなった。スー・グラフトンは亡くなったのか。
もしかしたら、『検屍官シリーズ』も年を経た今読めば、やっぱり素敵と思えるかもしれない、と考えないわけでもないけど、
何故か、シリーズ物って一度離脱しちゃうと、また読もうって気には、なかなかならないです。
『キンジー・ミルホーンシリーズ』はずっと最後まで読みたかった。残念です。