『第六ポンプ』パオロ・バチガルピ/早川書房
内容:化学物質の摂取過剰のために、出生率の低下と痴呆化が進化したニューヨーク。下水ポンプ施設の職員の視点から、あり得べき近未来社会を鮮やかに描いたローカス賞受賞の表題作、石油資源が枯渇して穀物と筋肉がエネルギー源となっている、『ねじまき少女』と同設定のアメリカを描きだすスタージョン賞受賞作「カロリーマン」ほか、全10篇を収録。数多の賞に輝いた『ねじまき少女』でSF界の寵児となった著者の第一短篇集。
—-「BOOK」データベースより
原書は2008年に書かれているので、今から15年ほど前の作品になります。
現代社会がまだ解決できないままでいる、食糧問題、環境問題、エネルギー問題、遺伝子操作による生命倫理問題ーー。『第六ポンプ』には、こんな現代社会の延長線上にある物語が10編詰まっています。
物語全般に漂うディストピア観がとても独特で、グイっと惹きこまれる短編集です。
生態系を破壊しつくした世界で、砂を食べて栄養を摂取できる体になった人類の物語。
鉱物資源が枯渇し、動力はもっぱらゼンマイになるという世界の物語。
不老不死を実現させ、人口維持のため出産が禁止される世界の物語。
富裕層の快楽のため、楽器に生体改造された少女の物語。
テクノロジーが発達しても技術を継承できる人間がいないため、システムエラーを処理できなくなる社会の物語。などなど、、、
こんな未來は嫌だ!って物語ばかりなのですが、意外と読後感は不快ではなかったです。どの物語にも少しばかりの救いと希望が込められていると感じます。
2023年、日本の夏は災害級の暑さと呼ばれています。既にディストピアな未來の入り口に立っているのは間違いないですね。このまま実効性のある対策を講じることがなければ、どうなっていくのか、、、、。