年別アーカイブ: 2013年

特捜部Q「檻の中の女」/ユッシ・エーズラ・オールスン

発売: 2012/10/5 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

最近は家具や雑貨だけでなく、ミステリー界にも北欧ものが流行っているらしい。
毎月のように次々と北欧ミステリーの翻訳本が出版されているので、私もブームに乗ってデンマーク発の警察小説を読んでみました。
デンマークと言えば、子どもの頃アンデルセン童話を読んだ程度なので、この国が北欧の括りであることも、本土ではなくシェラン島という島に首都コペンハーゲンがあることも知りませんでした。
私にとっては未知の国デンマークです。

さて、本書、「特捜部Q『檻の中の女』」は、コペンハーゲン警察のカール・マーク警部補を主人公としたシリーズ第1作目になります。
優秀だけど強引な捜査で何かと面倒を引き起こすカール。 皮肉屋で、上司には盾突くし、同僚とも衝突して、周囲の反感を買ってばかり。早い話が殺人捜査課の嫌われ者。
このキャラクター設定は「ダーティハリー」のハリー・キャラハンを継承しているように思いますが、まあ、ハリーほどはクールじゃない。メンタルもタフとは言えない。

二か月前、事件捜査の銃撃戦によって、一人の部下を失います。もう一人の部下は死こそ免れたものの、脊髄を損傷し病院で寝たきりの身となってしまいます。そのことがカールの負い目となり、心的外傷後ストレス障害となり、周囲にとってはますます扱いにくい厄介者となってしまいます。
折しも警察は構造改革によって、新部署を立ち上げることになりました。それが「特捜部Q」。特に興味深い未解決事件を再捜査する、というのは建前で、実は予算獲得のために新設されたに過ぎない。そこのボスにカールを据える。刑事捜査課から厄介者を追い払って、しかも予算が増える。一石二鳥の得策と上層部は考えたわけです。
こうしてコペンハーゲン警察の地下に「特捜部Q」が誕生し、カール・マークと謎のシリア人アシスタントの活躍が始まります。

テレビドラマにうってつけのシチュエーションです。ドイツでは映画やテレビ化の話が進行中だというのも頷けます。
もし日本でドラマ化されるとしたら、カール・マーク役に西島秀俊なんてどうでしょう?二枚目でクールなところをかなぐり捨てて、皮肉屋で嫌われ者の役をやって欲しい。
謎のシリア人アシスタントには、顔の濃さで北村一輝でもいけるかもしれない。
金使いが荒く、年下の愛人をとっかえひっかえ、好き放題に暮らしている別居中の妻に小雪。
母親に愛想をつかしてカールと同居しているが、母親に似て好き勝手に振舞まい、毎度カールをイラつかせる義理の息子に瀬戸康史を。
代理主婦のごとく家事をこなして、しかも家賃まで納めてくれる、オペラが好きで料理の上手い下宿人に稲垣吾郎。
美人心理カウンセラーには鈴木京香・・・・

などと勝手に妄想キャスティングしていますが、はて、カール・マークは何歳なのだろう?と改めて読んでみると、「年金生活に入るまであと20年」という記述がありました。
では、デンマークの年金受給年齢は?と調べてみると、2004年からは65歳となっているようです。それでいくとカールは45歳前後となりますね。

本書の中で、年金のことを話題にしている場面が何度かあったので、さらに調べてみると、デンマークの年金システムはなかなか興味深いものでした。
国民年金は、居住年数を満たせば全ての国民に定額の年金が支給されるユニバーサルな年金で、財源は全て税金である。支給開始年齢は65歳で、40年間居住で満額を受け取ることができる。『デンマークの年金制度」から引用』」
というわけで、「年金制度の国際比較」によると、「公的年金が老後の生活に十分なだけ支払われているか」「平均寿命と支給開始年齢の関係はよいか」「年金制度を運用するための見直し機能や透明性は図られているか」などの観点から、デンマークは、「十分に積み立てられた年金とその給付水準が評価され、第1位となっている」そうです。

住み続けるだけ(15歳から65歳までの居住年数で年金額が決まる)で年金が支給されるなんて、羨ましい話です。
そんなシステムなら、誰だって住み続けますよ、死ぬまで。
しかし、そんなデンマークも年金改革が進行中で、
今後の高齢化の進行に備え、2006年の与野党合意による法改正で、2024~27年にかけて国民年金の支給開始年齢は再び67歳に引上げられることになった。また2030年から支給開始年齢を平均余命に連動させる仕組みも導入される。『デンマークの年金制度」から引用』
だそうです。いずこも高齢化が問題です。
我が国の場合、老体に鞭打って年金受給年齢まで働いて、手にする給付金が「老後の生活に十分」な額とはならないところがツライのですが。

追記:デンマークは年金を税金で賄うわけだから、税金は高い。「消費税25%・平均的な所得税が約46%と高納税国」だという。それでも「国民の幸福度」調査で第一位となっている。しかし、もちろん良いことばかりでもないわけで・・・。デンマークの高納税国としての暮らし方とその問題点」参照

「都市と都市」チャイナ・ミエヴィル

ハヤカワ文庫SF 2011/12/20発売

内容(「BOOK」データベースより)
ふたつの都市国家“ベジェル”と“ウル・コーマ”は、欧州において地理的にほぼ同じ位置を占めるモザイク状に組み合わさった特殊な領土を有していた。ベジェル警察のティアドール・ボルル警部補は、二国間で起こった不可解な殺人事件を追ううちに、封印された歴史に足を踏み入れていく…。ディック‐カフカ的異世界を構築し、ヒューゴー賞、世界幻想文学大賞をはじめ、SF/ファンタジイ主要各賞を独占した驚愕の小説。
「都市と都市」。何ともそっけないタイトルです。内容もタイトルのまんま、ふたつの都市国家の物語。
時代は現代。
“ベジェル”と“ウル・コーマ”という、ふたつの都市はほぼ同じ位置にありながら、言語も生活様式も大きく異なる。
主人公のボルル警部補が殺人事件の捜査で、ふたつの都市を走りまわり、読者はボルル警部補の後を追いかけながら、ふたつの都市の風景を思い描いていくことになるのだが、読むにつれこれが奇妙な絵になっていく。
何枚ものセル画を断層的に重ねるような、あるいは立体的に絡み合わせたような、不思議な風景画が少しずつ出来上がっていく。
さらに不思議なのは、ふたつの都市の関係だ。
両都市国家の人々は、お互いに隣の都市を「見る」ことも「聞く」ことも禁じられている。そのことに違反したり、都市の境界を侵犯したりすることは“ブリーチ行為”と言い、ブリーチ行為をすると“ブリーチ”と呼ばれる謎の組織によって“ブリーチされる”という。

ブリーチ(breach)って何?ブリーチはどこから現れるのか?
なぜ、両国の人々は、まるで相手の都市など存在しないかのようにふるまわなければならないのか?
隣り合っていながら、本当に、見えるものを「見ない」で、聞こえるものを「聞かない」で、生活していくことができるものなのか?
謎は深まり、この物語がどんな方向に向かっているのか想像がつかない。

大森望の解説によると、本書のアイデアについて作者のチャイナ・ミエヴィルは、
「最初は、同じロンドンの街で暮らす人間とネズミがまったく違う生活様式を持っているのと同じように、環境に対する接し方がぜんぜん違う複数の種族が同居している都会を描くことを考えていたが、人間同士の話で書いたほうが面白いと途中で考え直した」
と語っているそうです。
作家の発想って素晴らしい。

チャイナ・ミエヴィルは1972年生まれ。「SF、ファンタジー、ホラーをひっくるめた“ニュー・ウィアード”の作家を標榜する」らしい。
貧しくてどこか時代遅れな感じのする“ベジェル”。巨大なビル群のある経済的に発展したウル・コーマ”というふたつの都市の設定は、壁が崩壊する以前の東ベルリンと西ベルリンを想起させるが、作家自身は「現実の政治状況の寓意として読まれることに強く意を唱えている」という。

通畠義信・朋子 2人展-2013-  開催中です!

ギャラリーセージで開催中の「通畠義信・朋子 2人展」を観て来ました。
鉄のキャンドルスタンドと銅版画の作品展です。

10月29日(火)まで開催しています。(※木曜日は休館)

まずは、鉄の作家、通畠義信さんの作品を少し紹介します。

今回動物のキャンドルがいくつかありました。
猫、カエル、カラス、火の鳥。
それとエイリアンみたいな『フェアリアン』。

猫のキャンドルには、 ちょっと面白い仕掛けがありましたよ。
顔が2枚あってマグネットで着脱できるもの。昼の顔と夜の顔かな?
その日の気分で取り換え自由。
鉄ならではの仕掛けですね。

その他、サンタクロース、竹取物語を題材にしたもの、星をイメージした壁掛けなどなど。

左の作品はシルエットのまま静かにたたずむ猫。
タイトルは『猫火』。

下の作品は「四つのキャンドルのバランスが美しい『立ちのぼるコンポジション』。
立ち姿も美しいですが、壁に作る影も美しかった。(影の写真が撮れなかったのが残念です。)

tetu

当サイトでご紹介している通畠義信さんの作品はこちらから

 https://art-container.net/galleries/tetu/

次に通畠朋子さんの銅板画をご紹介。
最新作はサンタクロースならぬ『サンタクリーム』

当サイトではまだご紹介していない作品がありました。
ちょっとセクシーなウサギが主人公のシリーズもの。
それと服をテーマにした「クローズシリーズ」が2点。

前回の「2人展」の際もそうでしたが、額装された作品を撮るのは困難。
是非会場で、繊細でキュートな作品の数々をご覧ください。

当サイトでご紹介している通畠朋子さんの作品はこちらから。

ギャラリーセージ/http://www.gallerysage.jp/
〒890-0041  鹿児島市城西2丁目10-22
TEL 099-210-5802

 

「通畠義信・朋子2人展ー2013-」開催のお知らせ

2013年10月11日(金)~10月29日(火)
11:00~18:00 

※10/17(木)10/24(木)はお休みです。

通畠義信さんと通畠朋子さんの2人展開催のお知らせです。
鉄のキャンドルと銅版画を中心にした作品展です。
お二人のこれまでの作品は当サイトのギャラリーをご覧ください。

ギャリ―セージにて2度目の開催になります。
前回は2012年7月。その時の様子は「『2人展』行ってきました。」をご覧ください。

ギャラリーセージ(http://www.gallerysage.jp/)

「原発は要らない」ページを追加しました。

利用しているレンタルサーバーがハッカー攻撃にあったのを機会に(「サイバー攻撃に早まって・・」参照)、過去の投稿を見直しつつ、ブログのデータを復旧してきました。
私の不注意でメディアデータを消失させてしまったので、イメージはPCに残っている写真を探し、新たに撮れるものは撮り直し、ネットから取得できるものはコピーして、出来る限り作成しなおしました。
でもどうしても写真が見つからず、復旧できなかった投稿記事もあったので、データベースのバックアップを常に取っておくことは、本当に大事だと実感しました。それとPC上の写真データも、管理もきちんとしなければなりませんね。溜まる一方だからとすぐに削除してしまうのも考えものです。

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以前「東日本大震災関連情報」として作っていたページを「原発は要らない」と名前を改めて作成し直しました。「原発は要らない」ページは「東日本大震災」「福島第一原子力発電所事故」を忘れないための備忘録です。
2011年3月11日に発生した東日本大震災は、当然のことですが、国内外に大きな衝撃を与えました。
そして津波と連動して起きた福島の原発事故は、チェルノブイリと並ぶ、もしくはそれ以上の最悪レベルで、世界を震撼させました。

一連の天災と人災は、あまりに多くの人たちの命を奪い、人生を変えてしまいました。
被災した方々は、生活の全てを奪われ、2年以上経った現在でも約28万人の方が“仮住まい”での暮らしを余儀なくされています。
福島第一原子力発電所も今なお、汚染水漏れなど深刻な状況が続いています。解体までは40年はかかるという遠い道のりです。まだ、何も終わっていない。

直接被災した者でなくても、私にも、震災前と震災後で、その後の生き方や社会に対する意識の変化がありました。
大地震も大津波も原発事故も、再び起こりうることを想定した日本の未来を、今こそ真剣に考えていかなければならないのですが、国も企業もそうはなっていない現状ですね。

XAMPP をver.1.8.2 にアップグレードする

WordPressをカスタマイズするには、自分のPCにサーバー環境があった方が断然やりやすい。サーバー環境を構築してくれるXAMPPは、多くの人に利用されている、お勧めできるフリーソフトです。ザンプと読むらしい。

Apache(Webサーバ)、MySQL(SQLデータベースサーバ)とWebプログラミング言語であるPHPや同目的で使われる>Perlの4つの主要ソフトウェアとphpMyAdminなどの管理ツール、さらにSQLiteなど、いくつかの補助的なソフトウェアとライブラリモジュールが含まれている。(XAMPP – ウィキペディアより)

私が初めてXAMPPをインストールしたのは、2010年のこと。「ヘッダーやフッターを共有する」から始まる長い話」に書いたとおり、四苦八苦してようやくバージョンは1.7.3をインストールしました。
2011年には、ver,1.7.4にバージョンアップするつもりが「xampp最新版インストール覚書」に書いたように、結局ver,1.7.3のままで終わったという、情けない私。
そんなド素人の私でも、これまで毎日XAMPPを活用してきて、私のPCには必要不可欠なソフトウェアとなっています。
WordPressもどんどん進化しているし、そろそろ、XAMPPもバージョンアップしなければならない時ではないか?
というわけで、今回XAMPPを最新版ver.1.8.2にアップグレードすることにしました。

参考にさせていただいたサイトは「プログラミングブログ」の「XAMPP 1.8.0へのアップグレード手順メモ」です。

  1. 1.現在使用中のXAMPPのバックアップをとる。
  2. 2.XAMPPのサイトから最新バージョンをダウンロードする。
  3. 3.XAMPPのコントロールパネルを起動する。
  4. 4.XAMPPのセキュリテイの設定をする。
  5. 5.バックアップの復元
  6. ドリームウィバーのエラー修正

1.現在使用中のXAMPPのバックアップをとる。

現在使用中のXAMPPのフォルダ名を「XAMPP1.7.3」とリネームして、そのままCドライブ直下に保存しておきます。

2.XAMPPのサイトから最新バージョンをダウンロードする。

xampp-0

http://www.apachefriends.org/jp/xampp-windows.html#2671 ⇒https://www.apachefriends.org/jp/index.html にアクセスして、「XAMPP Windows版 1.8.2」のZIP アーカイブ をダウンロードしました。
ネット環境のせいばかりではないかもしれませんが、ウチは〝光"じゃないので、ダウンロードに60分くらいかかりました。
ダウンロードしたzipファイルを解凍して、「XAMPP」のコピーをCドライブの直下に置きます。

3.xamppのコントロールパネルを起動する。

「XAMPP」を開いてxampp-control.exeをダブルクリックし、実行します。

アメリカ国旗とドイツ国旗が表示されますが、アメリカ国旗にチェックが入っていることを確認して、「save」ボタンをクリックします。

コントロールパネルが立ち上がります。
(※旧式のコントロールパネルが利用できるというxampp-control-old.exeは、ver.1.8.2には見当たりませんでした。)

コントロールパネルで「Actions」の「Start」ボタンをクリックして、ApacheMySQLFileZillaを起動させます。この時、新しいプログラムへのアクセス許可を求めるウィルスセキュリテイのメッセージが出たので、「許可する」をクリックします。

http://localhost/xampp/にアクセスしてXAMPPページを開きます。

「日本語」をクリックして、XAMPPの〝ようこそージ”を開きます。

4.XAMPPのセキュリテイの設定をする。

左側のメニュー項目から「セキュリテイ」をクリックすると、下記のようなページが開きます。

ページに表示されているリンクhttp://localhost/security/xamppsecurity.phpにアクセスして、セキュリテイ設定ページを開きます。

MYSQL 項目: “ROOT” のパスワードを設定し、「パスワードを変更しました」ボタンをクリックします。

XAMPPのディレクトリ制御 (.htaccess)のユーザーとパスワードを設定し、「安全なXAMPPディレクトリを作成してください。」ボタンをクリックします。

※参考にさせていただいた「プログラミングブログ」の「XAMPP 1.8.0へのアップグレード手順メモ」では、ここで「外部からのアクセスを禁止する」ために、c:/xampp/apache/conf 内にある httpd.confを修正し、c:/xampp/php/php.iniでsafe_modeをOn に変更していますが、httpd.confファイルは、ver.1.7.3とver.1.8.2とでは書かれているコードが異なりますので、ver.1.7.3と同様には修正できないようです。試してみましたが、「アクセス権限がありません」という403エラーが出てしまい、ローカルのウェブサイトが開けませんでした。その辺の知識が無い私には手に余るので、修正するのはやめました。
私はルーターを使っているから、外部からのアクセスには、まあ安心かと思うのですが、これも自信薄。xamppのver.1.8.2で、外部からのアクセスを禁止する方法を紹介してくれるブログが見つかるのを待つことにします。

設定が完了したら、コントロールパネルでApacheMySQLを「stop」させ、再び「Start」ボタンをクリックして、再起動させます。

再びhttp://localhost/xampp/にアクセスすると、パスワード入力画面が表示されます。
セキュリティー設定の「XAMPPのディレクトリ制御 (.htaccess)」で設定した、ユーザー名とパスワードを入力して、XAMPPページを開きます。左側のメニュー項目からセキュリテイページを開き、ステータスが「安全」になっていることを確認します。

5.バックアップの復元

コントロールパネルでApache、MySQL、FileZilla、Mercury、などを「stop」ボタンで停止させます。

旧バージョンのXAMPP1.7.3フォルダから、以下のファイルをコピーして、最新バージョンのXAMPPフォルダにペーストします。

①バックアップしておいたxampp-1.7.3のhtdocsに置いてある自分のウェブサイトのフォルダを、アップグレードしたxamppのhtdocsにコピーします。

②バックアップしておいたxampp-1.7.3のMercuryMailから、アップグレードしたxamppのMercuryMailに上書きします。(※私の場合は必要なさそうな気がするが、、、)

③バックアップしておいたxampp-1.7.3のmysql/dataから、アップグレードしたxamppのmysql/dataに上書きします。

※「バックアップしておいたxampp-1.7.3のFileZillaFTPから、アップグレードしたxamppのFileZillaFTPに上書きする」を実行したところ下記図のように「匿名のユーザのFTPパスワードが『wampp』のままです。」として、ステータスが「要注意」になってしまいました。そこで上書きしたFileZillaFTPを削除して、ver.1.8.2のFileZillaFTPをコピーし直したら、FileZillaFTPのステータスも「安全」と表示されるようになりました。

コントロールパネルでApache、MySQL、FileZilla、Mercuryなどの「start」ボタンをクリックして起動させ、ローカルホストの自分のウェブサイトにアクセスして、正常に表示されることを確認します。

ドリームウィバーのエラー修復

どの段階で、何が災いしたのか分かりませんが、何度目かに開こうとしたDreamweaverが起動しなくなりました。画面はまったく真っ白の状態。
あれれ?さっきまで、なんてことなく開いたのに~と思っても、開かないものは開かない。

アドビサイトのDreamweaverヘルプに「ユーザー設定フォルダーを再作成する方法(Dreamweaver CS4/CS5/CS5.5/CS6)」という文書がありました。

  • ・Dreamweaver の起動時にエラーが表示される。
  • ・クラッシュまたは予期しない動作をする。

という場合の対処法です。手順は以下の通り。

Dreamweaver を終了します。
以下のフォルダーを開きます。

  • Windows XPの場合
    C:\Documents and Settings\<ユーザー名>\ApplicationData\Adobe\Dreamweaver <バージョン>\ja_JP\Configuration フォルダーを開き、Configurationの名前を ConfigurationOld に変更します。

上記のとおりにすると、新しいConfigurationフォルダが自動生成されます。
再度Dreamweaverを開くと正常に起動しました。なーんだ、簡単!と思ったのもつかの間、Dreamweaverを終了して、もう一度開こうとすると、今度はファイルのスキャンのようなものが始まり、それがなかなか終わらず、挙句に途中でフリーズしてしまう。
タスクマネジャーを立ち上げて見ると、プログラムが応答していない状態になっている。プログラムを強制終了して、もう一度Dreamweaverを開こうとすると、また、スキャンが始まり、フリーズしてしまい、またまた焦ってしまいました。
再々度Dreamweaverを開こうとすると、やっぱりファイルのスキャンなのか読み込みなのかが始まったので、今度は強制終了をせず、画面に表示されている「停止する」ボタンをクリックすると、あっけなくスキャンが停止され、Dreamweaverがするっと起動しました。何だ、これは?ってよく分かりませんが、ともかくその後エラーもなく、Dreamweaverは正常起動するようになりました。
XAMPP1.8.2はコントロールパネルの動きが、旧バージョンに比べてとてもスムーズです。

次回のアップグレードでは、もっとスマートに作業が完了できるようになっていたいものです。

2016.4.21【追記】ご注意ください!

xamppの最新バージョンは2016年4月現在、ver.5.6.19です。
xamppは2015年7月(ver.5.6.11)から、仕様がずいぶん変わってしまったようです。
上記方法で最新バージョンをアップデートしようとしたところ、ローカルでファイルの編集や表示はできるのですが、データベースが開けなくなってしましました。

これは新バージョンのせいなのか、私のデータベースが壊れているせいなのか(その可能性もある)、私にはよくわかりません。
結局最新バージョンをインストールし、下記ブログを参考にしてパスワードの設定をしました。
データベースも新規に作成しなおし、Wordpressも新規にインストールして、テーマや投稿のデータをバックアップから復元するという、結構な手間をかけました。

最新版をインストールしたい方は下記ブログを読んでからにしたほうがいいでしょう。

参考ブログ
「2015年7月からXAMPPの導入手順が分かりにくくなりました!対応の方法」
「【XAMPP】2015年10月から導入手順がまた難解に!対応の方法!securityが無い!」

サイバー攻撃に早まって・・

今週頭から夏風邪をひいて、ついに3日間寝込んでいました。発熱が続き一向に良くなる気配がないので、仕方なく今朝は病院に行き、1時間半の点滴。脱水症状と酸素不足だとか。
「夏風邪のウィルスに抗生物質は効かないんだけどね」と言いつつ医者は、二次感染を防ぐためだからと、抗生物質を出してくれましたが、これはちょっと不要な薬だなって思います。

それはともかく、私がウィルスに襲われて弱っている間に、私のブログは大変なことになっていました。 私が利用している「ロリポップ!レンタルサーバー」がサイバー攻撃され、WordPressの利用者に対し不正アクセス、データ改ざんが行われたとのこと。
私のブログも見事に文字化けし、管理画面もぐちゃぐちゃ。管理画面に不正侵入した証にブログタイトルが、「Hacked by Krad Xin」と書き直されています。
まったく弱り目に祟り目というか・・・。

私はサイトに複数個WordPressを設置していますが、今のところ、被害にあったのはそのうちの1個だけ。アドレスにwordpressの文字が入ったものだけでした。
被害が少ないうちにデーターベースのパスワードを変更しておこうとロリポップのデータベースを開こうとしたら、覚えのないパスワードに変えられていました。これもハッカーの仕業か?と焦りましたが、実はロリポップの方で、パスワードとwp-config.phpファイルの設定、及びパーミッションなどを書き換えているようです。

さて、この荒らされたブログをどう修復するか?
どこをどう改ざんされたか分からないブログを修復するよりは、この際、最初から作り直してついでにアドレスからwordpressの文字もなくしてしまおうと、私はブログをまるごと削除してしまいました。
データベースのバックアップがあるから大丈夫、と深く考えもせず、やってしまいました。
しかし、バックアップデータをデータベースにインポートしようと何度試みてももうまくいかない。
何が悪いのか、半端知識では理解できない。
残っているのは、画像無しのテキストデータだけ。

何故ブログを削除する前に、文字化けを修復することを考えなかったのか、悔やまれます。
文字化けは案外簡単に復旧できるようです。ロリポップサイトに、
2013/08/31 改ざんされたサイトの復旧方法について」というお知らせがあることに、あとから気づいて「しまった!早まった」と思いましたが、もう後の祭りです。
データ改ざんが文字化けとウィジェットのテキスト変更程度なら、あとはログイン名やパスワードを変更するだけで良かったかも。もちろん被害がそれだけでおさまっていればですが。
もしかしたら私がハッカーを買いかぶり過ぎていたのかも。もっとスゴイことされるんだって、ビビり過ぎだったかも知れません。

しかし、削除してしまったデータは戻らないので、当分はテキストデータを一つ一つ見直して、画像がPCに残っているものや新たに画像を取得できる投稿について順次アップして行こうと思います。これを機にブログをすっきり整理していければいいかなと。

今回の犯人は自分のFacebookで自分の仕事ぶりを随分自慢しているらしいです。ハッキングしたサイトのURLをリスト化しているというので見てみました。日本のサイトがターゲットにされたのは間違いないようです。 しかし、まあ、犯人のFacebookに対し、「いいね!」を押している人が多いのには呆れますね。

9月2日追記:
夜、ロリポップから「▽サイト改ざんへの対策をお願いいたします – ロリポップ!」http://lolipop.jp/security/というメールがありました。
データの改ざんパターンが多数報告されているそうで、「データ改ざんが文字化けとウィジェットのテキスト変更程度」というわけではなかったようです。やはりハッカーを甘く見てはいけないってことでしょうか。
指定ファイルを開いてみると、「webサイトが改ざんされてしまったら」、以下の作業が必要とのこと。

最後に 次の注書きがありました。

※お使いのパソコンにバックアップファイルがある場合は、一度サーバー上のファイルを削除した後にバックアップファイルをアップロード。その後、ディレクトリのパーミッションを「705」に変更することでも対応は可能です。

もっと早く教えて欲しかった!!!

映画「ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの」

8月17日の「ああるの映画と読書」で、紹介されていた映画を見てきました。
映画の内容については、「ああるの映画と読書」に詳しいので割愛しますが、アメリカのいくつかの美術館を旅してまわり、たくさんの現代アートを目にすることができる、ちょっぴり幸せな気分にさせてくれる映画です。

自分の気に入った作品を手に入れ、好きなものに囲まれて暮らしたい、という想いは、アート好きなら誰でも少なからず、胸の内に抱いている欲望の一つでしょう。
しかし、半世紀かけたとは言え、それが5,000点近い数になってしまうとは!
その量に圧倒されます。

スクリーンに映る数々の作品の中には、これもアートなの?現代アートって何でもOKなの?って疑問がかすめる場面もありました。しかし、どの作品もすべて、ボーゲル夫妻の共感を得た作品であり、共感者を得た作品は、それだけで存在価値があるのかもしれません。
一部のメジャーな作家を除いて、ほとんどの作品は私の知らない作家たちの、見たことのない作品でしたが、スクリーンの中を次々と流れるその作品からは、「既存の概念にとらわれない新しい美をみつけたい」「今までにない作品を生み出したい」という強い想いや、あるいは「ねえ、これってきれいでしょう?」という単純でささやかな想いなどがあふれてくるようで、そのどれもが共感者を求めているようで、自分でも可笑しいのですが、少し涙ぐんでしまいました。

ボーゲル夫妻が全米50州の美術館に50作品ずつ寄贈した、計2,500点の作品は、まとめてネットで見ることができます。下記のサイトを覗いてみてください。(※一部まだアップされていない作品もあります)

「Vogel 50×50」http://vogel5050.org/

さて、今回映画鑑賞したマルヤガーデンズ7F にある「ガーデンズシネマ」。次回作も興味深いので、紹介しておきます。
「世界が食べられなくなる日」http://www.uplink.co.jp/sekatabe/
8/23(金)~25(日)、8/31(土)~9/6(金)

「MOVIE+BOOK」をリニューアルしました

ああるさんに書いていただいている「MOVIE+BOOK」を、このたび、ブログソフトをcgiからWordpressに移行しました。
それに伴い、アドレスも変わりました。
新しいアドレスは、https://art-container.net/movook/です。

new-blog1

ああるさんは、プロフィールによると「アジア映画(もちろん日本を含む)にかたよりがち、万人にはお勧めできないややマニアック系に傾きがちな、映画と本についての感想文です。」とのスタンスで、2006年2月から250点あまりの投稿を続けて下さいました。

old-blog1

できることなら、全ての過去ログをwordpressに移行したいのですが、cgiのデータを一括してwordpressにインポートする方法が分からず、2013年6月までの投稿記事は、そのまま以前の「MOVIE+BOOK」に残すこととなりました。どうぞ、こちらの過去ログもご覧ください。

http://art-container.net/mbblog/diarypro/movie.cgi

(データの変換方法が見つかれば、いずれは一つのブログにまとめたいと思っています。)

「統計データはおもしろい」本川 裕

toukei

出版社: 技術評論社 (2010/10/26)

「国内、国外を問わずに、あらゆる角度から収集された社会データを基に、相関図を表し、そこから見えてくる事実とその裏に潜む現実を解説する書籍である。ときに国別の情報であったり、県別の情報であったり、あるいは男女別の情報であったりと、特に収集データには傾向や制限をもたせず、現代社会の側面を表しているような興味深いテーマを中心に選んでいる。社会データの奥深い解説のみならず、相関図として表す際のグラフの見せ方についても解説している。
(本書概要より)」


 以前読んだ、「絶望の国の幸福な若者たち/古市憲寿」の中で、本書のデータが引用されていて興味を持った本です。
著者の本川裕氏は「社会実情データ図録」(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/)というウェブサイトを主宰しています。このサイトは統計グラフとコメントで構成されていて、掲載されている図録も900~1000点という膨大なデータ量。そしてなんと、月間100万前後のアクセスがあるサイトだそうです。
その「社会実情データ図録」をもとに編集、まとめられたものが本書です。
「社会通念に囚われず、種々の社会現象について、データそのものが語っているように見える法則性に関し、オリジナルな仮説を示し、真実を見極めようとする人々に検討材料を提供すること」を目標に掲げています。

「少子化は公的支出で防げるか?」「日本の貧困度は高いのか?」「豊かになるほど経済格差は広がるか?」「安全なのに”不安”な日本、治安が悪くても”平気”な国」「日本の食料自給率はどれくらい低いのか?」「あなたは醤油派か、ソース派か?」などなど、様々な39のテーマで相関図が表示されています。
国際的データによる相関図では、日本という国の特異性が浮き彫りになるものが多く、興味深いものでした。                                                                一例を挙げると、「米国に対する各国国民の評価」というデータ。
調査結果は日本が16%、韓国が19%、ほぼ同程度の割合でアメリカに対しプラス評価です。
しかし日本は「どちらとも言えない」「分からない」「無回答」といった「あいまい回答比率」が、調査対象28ケ国の中で並はずれて、極端に、高い。正反対に韓国は「あいまい回答比率」が、各国の中で一番低い。
「白黒はっきりさせないと気が済まない韓国人と、白黒をはっきりさせないで物事に対処する日本人という国民性の違い」がこんなところからも見えてきて面白い。

日頃、私たちがニュースや情報番組なんかで耳にする統計データというものは、それを利用する人にとって都合のいい数字だけが取り上げられ、都合のいい解釈を付けて、世の中に流されているものだと、私は考えているので、統計の生のデータを自分の目で確認することは、とても大事だと思います。

擦り傷治療と中桐雅夫の詩

昨年の話で恐縮ですが、暮れも押し迫ったある朝、私は路上で転倒。左足打撲と膝に大きな擦り傷をこしらえました。
出勤ラッシュの車が渋滞している真っただ中での出来事で、派手に転んで血はダラダラ。
恥ずかしさで、その場から逃げるように立ち去ったのは、言うまでもありません。
まったく!いいトシした大人が、なんてザマ!と我が身に罵声を浴びせながらも、こんな大きな擦り傷をこしらえるのは久しぶりだなあと、ちょっと懐かしい気分がしました。

子供の頃はよく転んだものでした。なんせ運動能力が劣る子供だったので、何度も転んでは足の両膝を擦りむき、今でも痕が残っているのです。
大人になっても能力は向上せず、3年前にも大転倒した経験があります。その時は擦り傷はなく、全治2ケ月の打撲のみ。しかも周囲に他人のいない場所だったので、羞恥心もなし。
そう、誰も見てなきゃ、ちょっと転ぶくらい、どうってこともない話なんですよねえ。

しかしまあ、転んでもただでは起きないのが大人のたしなみです。せっかくの機会だから擦り傷の治療法についてネットで検索してみました。すると、今までの私の常識を覆す意外な治療法が出てきました。

これまで、傷の手当てと言えば、傷口を水で洗ったのち消毒液でしっかり消毒し、ガーゼ等を当てて傷口を保護。かさぶたが出来るのを待つ、というものでした。
実際、消毒液を買いに行った薬局でも同様の説明を受け、消毒液と傷当てパッドとステロイド系軟膏を勧められて購入しました。
しかし従来の傷当てパッドって取り替えるときに、痛いんですよねえ。かさぶたができるときはモゾモゾと痒いし、うっかり剥がれるとまた出血して、何度でも痛い思いをしますね。
それが私の常識だったのですが、ネットによると、消毒しない、かさぶたをつくらない、痛くない、治りが早い、傷あとが残りにくい、「閉鎖湿潤ラップ療法」という治療法があるそうです。
これには食品用ラップを使うというから驚きです。

「正しいケガ(傷)の治し方 ~消毒をしないうるおい湿潤治療(ラップ療法)~」http://homepage2.nifty.com/treknz/wound_care.html

上記のサイトによると、「閉鎖湿潤ラップ療法(うるおい療法)のポイントは、消毒薬は決して使わないこと」とあります。その理由として
「消毒薬は要は細菌(細胞)を殺す”毒”であって、当然人間の正常な細胞に対しても毒性があります。傷を消毒するということは、傷を治そうと活躍している人間の細胞をも殺すことになり、かえって傷の治りが遅くなります。消毒をすると傷が滲みて痛いのはまさに細胞が悲鳴を上げている証拠。はっきり言ってキズの消毒なんて自傷行為とおなじです」とのこと。

そういえば以前読んだ、立花隆の「がん 生と死の謎に挑む/文藝春秋」にも、こんな記述がありました。
「通常、傷口ができると、体から盛んに救援を求める信号物資が放出されます。この物質を感知するとマクロファージなどの免疫細胞が集まります。マクロファージは細胞の移動や成長を促す物質を放出します。こうした物質に刺激を受けて皮膚の細胞が移動を開始し、傷口を修復します」

傷を治すのはヒトの免疫細胞の力。確かに消毒は必要ないかもと思い「湿潤治療(ラップ療法)」を試してみることにしました。

治療手順は次のとおり

  1. 傷を水でよく洗う。消毒はしない!
  2. 傷を被うように少し大きめのラップをあてて、縁をテープで留める。可能ならどこかに隙間を残しておく。
  3. 翌日から毎日傷を水洗いし、ラップを交換。夏場など発汗の多い季節は日に1-2回程度繰り返す
    (「正しいケガ(傷)の治し方 ~消毒をしないうるおい湿潤治療(ラップ療法)~参照)

いったんは消毒をしてガーゼの傷当てパッドを当てていたのですが、さっそくパッドを外して(痛かった)、傷口を水洗いし、軽く水気を取ってラップを、テープが無かったため、膝にひと巻きました。
その上からレギンスを着用。
ラップをすると傷口からドロドロの体液が浸み出してくるのが分かります。これは結構匂います。人に気づかれるることはなかったけど、このままで大丈夫なのかと不安になるくらい。
シャワーで傷口を水洗いしてドロドロを洗い流す。水気を取る。ラップを取り換える。それを毎日、浸出液がなくなるまで2週間余り、繰り返してみました。
傷口を洗うたびに、周囲から皮膚がきれいになって、傷の範囲が小さくなっていくのを実感できます。
途中からラップはやめて、市販されているハイドロウェットという医療パッドを使用しました。膝にも楽に貼れて剥がれない。手間いらずで便利な物です。使用上の注意を読むと、「浸出液の少ない傷に使用すると疼痛を引き起こすことがあります。このような場合には、水道水等で事前に傷口を十分に湿らせて使用してください」とありますので、そのへんは注意が必要です。

擦り傷範囲が大きかったせいか、傷が1cm大くらいになるまで1か月ほどかかりました。
傷口を水洗いする際、まったく痛みがない。ラップやパッドを取り換える際にも、もちろん痛みはない。かさぶたができないから痒みや突っ張りもない。最初から最後まで傷の痛みを感じないですむところが何よりもよかったです。
もちろん傷の状態、怪我の原因によっては病院に行くべきだったり、薬が必要だったりしますが、通常の擦り傷ならこのラップ療法はおすすめです。

もっとも、この治療法、私が知らなかっただけで、もうすでに世間では常識なのかもしれませんね。遅まきながら、ハイドロコロイド材の救急絆創膏のコマーシャルが、テレビで流れていることにも気が付きました。

ところで、「擦り傷」という言葉から、中桐雅夫の詩を思い出しました。確か、擦り傷ができたっていう詩があったなあと古いノートを開いてみると、それは「誘拐」というタイトルの詩でした。擦り傷ではなく、かすり傷でしたが。

「誘拐」

中桐雅夫 「夢に夢みて」より

心の子供がかどわかされて
おれにはつらく激しい日々が続いている
二月の夜の二時 ひとり壁に向かって飲む
ウィスキーはよもぎのように苦い。

ふと気がつくと
右手の甲にかすり傷ができて
薄い血がにじんでいた

いつ怪我したのか わからない寂しさ。

五年たったら英雄の死も忘れられる
十年たったら戦争もなかったのとおなじだ
おれももっと早く記憶を棄てるかもしれん。

人さらいよ 骨の細い哀れな子供を
どこかで大事に育ててくれ
おれも生きてゆくだけは生きてゆくから。

身体の傷ならラップでうるおい湿潤治療、心の擦り傷にはお酒でうるおい治療、なんて。今読むと、ちょっと茶化したくなる”70年代の男の香り”がします。

「ジェノサイド」高野 和明

出版:角川書店
2011年3月発行

このミステリーがすごい!2012年版」国内編第1位
「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門 第1位
第2回山田風太郎賞受賞
35万部突破!ベストセラー爆走中!!

と、帯に華々しい惹句が並び、その人気度を誇示しているのが、本書「ジェノサイド」です。
さらに
「読み始めたら眠れなくて、朝4時まで読んでしまいました。/谷原章介」とか、
「この物語は、人類の行方を予言している/中江有里」とか
「己の血に誇りを持ち、己の知をもって未来と世界を築いていく。日本人にはそれができると信じている。/杏」
「超面白かったです!『アバタ―』を3本分見たくらいの達成感があります!/鈴木おさむ」
など、有名人のレビューが並べられ、読者の興奮度と出版社の意気込みが伝わってきます。

この手の売り込みに乗せられて、読んでみたらがっかりということもままありますよね。
しかし、当サイトの「映画と読書」でも、ああるさんが「壮大なスケールで、すごい。」と評していたので、文庫化されるのを待っていられなくなり、単行本をブックオフで手に入れました。

「ミステリーは文庫で!」のマイルールを破って読んだ本書ですが、面白かった!大画面3Dサラウンド映画を観ているようでした。アフリカと日本とホワイトハウスを行ったり来たり。
とは言え、内容的には現在私が生きているこの世界の、ダークな側面を次から次へと見せられるものであり、面白がってばかりはいられないのだけれど。

ネット検索依存症の私は、気になるワードを検索しながら、この本を読みました。
私が調べたのは以下のワード。

  • ジェノサイド
  • ハイズマン・レポート
  • シリア 拷問施設
  • 肺胞上皮細胞硬化症
  • 単一遺伝子疾患
  • 第一次アフリカ大戦
  • ルワンダの大虐殺
  • 変異型GPR769
  • 世界終末時計
  • ピグミー
  • 素因数分解 RSA暗号
  • 人類の進化
  • 幼形成熟
  • 全世界盗聴システム エシュロン
  • ヒト加速領域Ⅰ
  • FOXP2
  • ツングースカ大爆発
  • 韓国語 情 ジョン
  • ビラ人
  • アロステリック
  • 武装無人偵察機プレデター
  • 「ヒトと進化」
  • 「ウィルス進化論」

本書の中では、「全世界に普及しているアメリカ製のコンピュータのOS全品に、合衆国の諜報機関に通じるバックドアが仕込まれている」というトンデモナイ話が出てくるのですが、先週、元CIA職員の内部告発がニュースで流れ、トンデモナイ話と思ったものが、俄に信憑性を帯びてきました。
内部告発は、「NSA(米情報機関の国家安全保障局)がPRISM(プリズム)という暗号名のインターネット監視システムによって、マイクロソフトやヤフー、グーグル、フェイスブックなどのサーバーからユーザーの電子メールや写真、利用記録などの情報を収集していた。さらに、バラク・オバマ大統領がアメリカのサイバー攻撃の『標的』となる国外の人物をリストアップするようNSAに要請していた」(「グーグルやフェイスブックの個人情報を収集して監視する米政府の秘密が明るみに」参照)というもの。

いつ誰に狙われるか分からないからと、盗聴やハッキングによって他人の個人情報を盗み出し、常に行動を監視し続けるという行為は、個人がやったら刑務所行きか精神鑑定もの。
国家レベルでやればテロ対策という大義名分が与えられます。
「安全保障」のためには「言論の自由」を犠牲にするのもやむ得ない、という世論の声も大きいようです。
日本も時勢に乗り遅れまいと、「国家安全保障会議(NSC:National SecurityCouncil)が創設される」ことになるそうです。(「“スパイ天国”日本に国家安全保障会議設置 CIA機能もない、体裁だけの機関」参照)

世界を盗聴、監視し続ければ、果たして世界は平和になるのか、疑問に思います。
むしろ、世界終末時計の針を進めるだけなのでは。
いえ、そもそも現人類の権力者たちは、平和なんて望んでいないのでは。

「過去20万年間に亘って殺し合いを繰り返してきた人類は、常に他集団からの侵略に怯え、疑心暗鬼が被害妄想寸前の状態で維持され、国家なる防衛体制を作り上げて現在に至っている。この異常な心理状態は、人類が遍(あまね)く共有しているために異常でなく正常と見做される。これが〝人間という状態”だ。
そして、完全なる平和が達成されないのは、他者が危険であるという確固たる証拠を、互いが己の内面に見ているからだ。人は皆、他者を傷つけてでも食料や資源や領土を奪い取りたいのだ。その本性を敵に投影して恐怖し、攻撃しようとしているのだ。」(「ジェノサイド」から抜粋)


追記:
元CIA職員の内部告発については、2014年に『「暴露」スノーデンが私に託したファイル/グレン・グリーンウォルド』という本が出ています。

Yahoo!BBのモデムを交換するなら

5月25日土曜日の朝突然、インターネットが繋がらなくなってしまいました。
こういう場合の対処法として、PCやモデムの再起動をすればたいてい解決するものですが、今回は無理。モデムの[警告]ランプが点灯しているので、ヤフーのテクニカルサポートセンターに電話をしました。0800-2222-820(無料)に。

音声ガイドに従って進んでいくと、ただいま電話がたいへん混み合っています。このままお待ちになるか、しばらく経ってからおかけ直しくだい、と決まり文句が流れ、そのまま待っていると、「インターネットモデムの通信状況をお調べします」という音声が唐突に入り、「通信不通なのでモデムの交換を致します。ありがとうございました」カチャ・・・・と切れてしまいました。

新しいモデムを送ってきてくれるらしい。ありがたい。でもいつ届くの?
最後まで人間のナマの声をきくことがなかったので、モデムの故障の原因とか、配送日とか、分からないのでした。

翌日、ヤフーのインフォメーションセンター0800-1111-820(無料)に電話すると、今度は人間スタッフに繋がりました。
いつ新しいモデムが届く予定なのかを尋ねると、そこから他の窓口に回されて、「自動音声でモデム交換を申し込まれた場合(注:私が自発的に申し込んだわけではない!)、4日~5日かかります」といわれました。「直接窓口に申し込んでいただければ、配達日の指定もできたのですが、、、」とのこと。
どうやら、前日テクニカルサポートセンターに電話した際、私はどこかで順路を間違えてしまったらしい。もっと辛抱強く深く進んでいけば、きっとナマの人間に出会えて、「私はネット検索依存症なので、4,5日も待てません。」と訴えることができたはず。情のあるナマの人間なら「それはお困りですね。それでは2、3日ほどでお届けしましょう。」ということになったかもしれないのに。

ヤフーのモデムを交換するなら、音声ガイドに注意深く耳を傾け、人間スタッフのいる窓口まで進むことをお勧めします。

鹿児島弁「白雪姫」!笑えます!

今日、職場で休憩中に、鹿児島弁の「白雪姫」を鹿児島弁の上手い人が読んで聞かせてくれました。みんな大爆笑。
ネットで検索すると、いろんな人がブログで紹介しているようです。オリジナルがどれなのか分からなかったので「おんじょといの小屋」というサイトから紹介させていただきます。「おんじょといの小屋」では、音声も聴けますよ。

「鹿児島弁白雪姫」

おきさっどんが
「かがんよかがん、世界でいっばんみごちとはだいやろかい」
ち、たんぬれば、かねちゃ
「そあ、おはんがいっばんよかおごじゃっとよ」
ちゆぅ魔法のかがんに、かねっのっごっ たんねたなあ
「そや、白雪姫やらせんどかい」
ち、かがんがゆたなあ
「なんちな!?」
お妃っどんがはらけっかぎぃはらけっせえ、森んなけ小人んしと仲ゆ住んじょらった白雪姫がとこいっせえ、毒の入ったリンゴをば持っ行かったげな。

「リンゴは要いやはんどか~い」

ち魔女ん真似をしたお妃っどんがさるっごったなあ、そけ白雪姫げえがあっせえ、庭の草取いをしごった白雪姫に
「リンゴはかまんや?」
ちゆわったげな。
「まこち、どいうんめかろそなリンゴやろかい」
ち白雪姫はそんリンゴをもろっかんだなあ、かんだいき ひっくかあらった。
小人んしが
「がっついこえなこっつあねかった。け死んやったとけ?
じゃったれば、今夜が本通夜で明日そしっじゃろなあ。
こげん良かおごを、ほんのこちあったらしこつしたなあ」
ちほろめっごったなあ、そけうんめ乗らった王子どんが通おいかからっせえ、
「うんにゃ、んにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃ!まこちぐらしかこつしたもんじゃ。おはんなないごてリンゴをかんだとお」
ちゆっせえ起そかいちしたなあ、白雪姫ん口っかいリンゴが飛っ出っ来っせえ、白雪姫が
「たひかったがこあ!あんねこっでけ死んとこやったが!」
ちゆたげなお
「おんじょといの小屋」から引用

他には「鹿児島弁、浦島太郎」もあります。これも爆笑ものです。興味のある方は検索してみてください。

「後ろ向きの歌」は後ろ向きじゃない

先月の話ですが、オープニングテーマの「後ろ向きの歌」が学校で流行っているんだよ、と小学生にお勧めされ、「泣くなはらちゃん」というドラマの最終回を観ました。
「後ろ向きの歌」は本当のタイトルを「私の世界」といい、「かもめ児童合唱団」が、かわいい歌声で歌っています。着うた配信サイトで1位になったりして、結構当時は評判になったらしいですが、世の中は常に前向きに進んでいくので、ドラマが終わるとまったく耳にすることもなくなりました。

「私の世界」 ♪  作詞:岡田惠和、作曲・編曲:井上鑑
世界じゅうの敵に降参さ 戦う意思はない
世界じゅうの人の幸せを 祈ります
世界じゅうの誰の邪魔もしません 静かにしています
世界の中の小さな場所だけ あればいい
おかしいですか? 人はそれぞれ違うでしょ? でしょでしょ?
だからお願いかかわらないで そっとしといてくださいな
だからお願いかかわらないで 私のことはほっといて

確かに「前向き」「積極的」「ポジティブ」とは言えない歌詞ですが、「前向き」でなければ「後ろ向き」と言うわけではない。
私にとっては「ニュートラル」な立ち位置の歌に思えます。
人の思惑に絡め捕られることなく、自力で生きたいと願っているだけ。
この位置から、時には前に行ってみたり後ろに揺れてしまったり、というのが、おおかたの人の日々の生活じゃないかなあと思うのです。

「前」か「後」の二方向以外に、世の中には、「上」か「下」かの方向も存在します。
たいていの人は「上」に行くことを熱望するか、心ひそかに願う。
「下」に行きたいと望む人はまずいないでしょう。
「上」には何があるんだろう?って時々考えます。たぶん、富とか名声とか権力とか、そういうものなんでしょうか?上ったことがないので分かりません。
ただ分かるのは、前向きであれば上に行けるというものではない、ってこと。
上に行くためには、たぶん、スティーブ・ジョブズみたいに「夢の実現」とか「仕事へのロマン」とか「世界を変える野望」とかを声高らかに宣言する必要があるでしょう。何よりも上に行きたいという強い熱意が必要だし、他人を自分の人生に引き込む才能が欠かせないと思います。
そういう人にはきっと、世界中の空から垂らされているに違いない、透明な蜘蛛の糸のような何かが見えるのかもしれないと思ったりします。

蛇足ながら、「後ろ向き」関連でみつけたカフカの名言を。
カフカは大好きな作家なので、こういう発言には、思わずニヤリとしてしまいます。

「将来にむかって歩くことは、ぼくにはできません。将来にむかってつまずくこと、これはできます。いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。」

「カフカの迷言がネガティブすぎて笑える」より。

通畠家にお邪魔しました。

通畠家には10年ほど前にお邪魔して以来、今回が2度目の訪問になります。
前回は2時間ほどかけて、車で行きましたが、その後、九州新幹線が開通し、今では鹿児島中央駅から出水駅まで25分程度に短縮されました。
時間的にはとても近くなりましたが、世の中のインフラが整っていくのと反比例して、私が遠出をする機会は、年々、少なくなっていきます。皮肉なものです。

通畠家は10年前に引っ越しをしており、私がこの家を訪れるのは初めてです。
家の中にも外にも、ご夫妻の作品がいっぱい。アートにあふれたお宅です。
まずは、前庭に置かれた二つの大きなオブジェが楽しい。

玄関を入ると、紙素材のアートが並んでいました。
こちらは通畠朋子さんの作品。

左上は通畠朋子さんの作品。
左下の絵は通畠義信氏の作品。

オレンジと紺色の扉も氏の作品です。どうしても開けてみたくなります。
通畠義信氏は鉄や石。夫人は紙や布。
アトリエの中は夫妻の作品が無造作に、置かれています。

ひらめきがあると、即座に削れる素材を使うことが多いそうです。
アトリエの中、発砲スチロールのオブジェもたくさんありました。

 河童の操り人形。こういうお茶目な作品もあり。

(上)人見知りな愛娘〝りんごちゃん”

(左)発砲スチロールの腕で何か?を指さす通畠氏。

 

(下)裏庭からは、出水平野の田畑の広がりが見渡せる。時間をかけて錆びていく、鉄のオブジェのある風景。


通畠氏の車に置かれたオモチャ。ゴジラに釘。ヘリコプターはカメレオンに変身させて。

本日から、出水市在住のものづくりたちによる、「いずみ ものづくり展」が、開催されます。
通畠夫妻も出品します。
「鉄のテツ学」展と合わせて、こちらも是非ご覧になって下さい。

【出品者】
《陶芸》宮上誠・永島 としゆき
《染色・ガーゼ服》本田すみ子・隅本和代
《鉄・石・銅版画》通畠義信・通畠朋子
《木工》平田健作・谷山陽啓

「第5回 いずみ ものづくり展」
2013年3月20日~3月26日 10:00~17:00
出水市クレインパークにて
(期間中 無休・・・最終日は16:00まで)

「鉄のテツ学」展観てきました(3)

オリジナル燭台
彫刻作品、それも私のもののように「白い、やさしい、かわいらしい」が表現の枠内に存在しないものは、なおさら、ほとんど売れるものではありません。何か売れそうなものをと思って、キャンドルスタンド展を何回かやっていますが、やっぱりやさしく親しみやすいものがつくれないので、今後も売れる可能性は薄いと思われます。

写真館のための唐草燭台
写真館のための椅子装飾金物
福岡での工房勤め時代には、仕事として作っていた装飾金物。本来なら、本展での展示は「芸術」には頼らず、このような技をみせるものであるべきだったと思いますが、あまりにも数が少なく、むしろこの二点があってよかったと思うことです。

「月夜」—————– 右「山に月」

「黒と白の対峙」
2000年代に入り、鉄素材にこだわらないという意識のもとに鉄を使った作品が、『黒と白の対峙』や『月夜』といった作品です。石と組み合わせたり、石の形をつくったりして、なぜか風景彫刻の形になりました。

鉄と石
学生時代は、ただただ石を彫ることが好きで、後の1994年に初めて、仕事として石のモニュメントをつくりました。大きな石彫は、仕事がなければ作れない状態なので、商品を少しずつ作り続けており、構想もまだまだあります。
鉄彫刻と石彫とは、いろんな面で違いがありますが、私にとっては違和感がありません。素材の違いを楽しめば、共通するものを見つけることができます。

羽根のアイデア 2001

出水市歴史民俗資料館では「写真撮影OK」だったので、私は「作品を全部撮るぞ」と調子に乗って撮り続けたものですが、帰ってきて確認すると撮り残しがだいぶありました。
仕方ありません。ここにアップされていない作品や作家のコメントについては、ぜひ会場で観ていただきたいと思います。
下の3点は新聞のコラムに添えて描かれたもの。

まだまだ、続きます。
次回は、お宅訪問編です。後日、アートにあふれた通畠家の写真をアップしたいと思います。

『鉄のテツ学』展観てきました!(2)

無常の地球儀(1991年)私が「理科室シリーズ」と呼ぶ小品群のうちの一点。このシリーズ作品は、自分でも気に入っていますが、それだけに人気もあり、友人知人関係に買ってもらったり、預かってもらったりしており、私の手元には一点もありません。第二弾も考えてみたいシリーズです。

Soul boat-月の舟ー(1999年)彫刻は構築物であり、「骨格」が、その基軸であると考えます。多様な現代美術が存在し、私もさまざまな試みをして来ましたが、つまるところ、私の彫刻の概念は、敢えて限定的です。1990年代に入り、『無常の地球儀』に始まる「骨格そのもの」の作品が生まれて来ました。それからもうひとつ転換して「外骨格」の概念にたどり着きました。それが舟の形として具体化し、「魂の入れもの」という意味で、1995年に「Soul boatシリーズ」が始まりました。

Soul boat ’96

Soul boat-海の呼び声ー(1997年 コールテン鋼、全長450cm)
ハウステンボス光のギャラリー金賞受賞
2000年、サンアリーナせんだい(薩摩川内市)に展示

「星月夜ー海の呼び声ー」(1995年、黒御影石)
’95日向現代彫刻展大賞 日向市御鉾ケ浦公園に設置

この続きはまた、のちほど。

『鉄のテツ学』展観てきました!(1)

昨日、出水市歴史民俗資料館にて、通畠義信氏「鉄のテツ学」展~鉄を素材とした空間造形の世界~を観てきました。
出水市歴史民俗資料館は出水市立中央図書館の2階にあり、その名の通り歴史的な民俗資料、(旧石器時代の遺跡物とか、先人たちの使用した生活用具や特攻隊関連資料など)を展示している施設です。今回のように現存する(!)作家の作品を展示するのは異例のことのようです。
普段は2階までは訪れる人のほとんどいない施設らしく、案内係のきれいな女性が、この特別展のおかげで「来館者が増えました」とニコニコされていました。

通畠氏の作品の性質上、展示されているのは移動可能な小品が主で、野外設置作品はその模型や写真の展示になります。
小品が多いとはいえ、学生時代に遡った作品から近年まで、私は初めて目にする作品も多く、それぞれの作品の素晴らしさに圧倒され、改めて「通畠氏って凄い芸術家なんだなあ」と感動しました。
何しろ普段の通畠氏は、あまり物事にこだわらない、来るもの拒まず、寛容でひょうひょうとした人物。オレは芸術家だぞ!という自己アピールもせず、芸術家にありがちな(と私が思うところの)奇矯な言動や気難しさもなく、私などにも心安く接してくれます。でも本当は私が考えている以上に偉大な人物なのだと、今回認識を更新しました。

前置きが長くなりました。そろそろ会場で撮ってきた写真を、一部ですが、アップしていきます。作品に対する通畠氏本人のコメントがファイリングされて置いてありましたので、合わせて紹介していきたいと思います。

蝗(こう)(1977年)学生時代に作り始め、卒業後に完成し、福岡県美展でいきなり受賞した、私の鉄彫刻の原点といえる作品です。いきなり受賞はいただけません。二匹目のバッタ(?)を狙ってしまいます。ここにあった本質的要素が、形を変えて現れてくるのは、ずっと後のことでした。

歩く猫(1979年)
くずれかけた廃屋の中で見つけた猫のミイラのヴィジョンが、普段掃き集めて捨てていた、鉄クズを呼び寄せて立ち上がり、歩き始めました。

一番手前にあるのが、「柱’84-PASSAGE-(1984年)」
不定形の暗雲に中心を貫かれた三本の柱が、波うち、ゆらぎ始めています。「9.11 同時多発テロを受けて制作しました」と言っても信じてもらえるかもしれませんが、実は1984年の作品。
不安や危機感、そして不満は、どの時代にもあるものであり、当時の私の「柱シリーズ」のテーマが、そのようなものであったということです。「柱シリーズ」は三部作でしたが、まともな形で現存しているのは、この『柱’84』だけです。

ペガサス 1993伊佐市 速水荘 設置

龍座宮 (1990年、鉄、コンクリート)

はばたき式UFO開発計画(1992年)

時の巣(2000年)モニュメント等、大きな彫刻のコンクールの場合は、模型による審査が一般的です。この他にも、いくつも作ってきましたが、私の鉄の作品は、まったく採用されません。石やブロンズにない形の鉄のモニュメントを実制作させてもらえたらと思ってきました。「記念碑」という意味でのモニュメントではありませんが、唯一『時の巣』(霧島アートの森)の場合は、内定指名の上で作ったので、実制作が実現しました。

続きは、またのちほどアップします。

通畠義信「鉄のテツ学」展のお知らせ

通畠義信の彫刻「鉄のテツ学」展
会期:平成25年2月9日(土)~3月23日(土)
会場:出水市歴史民俗資料館

当サイトで紹介しています、通畠義信氏の作品展が開催されます。
会場となる出水市歴史民俗資料館の「歴民館だより」によると、出水は刀鍛冶や刀装身具制作の「鉄の職人」を輩出した土地柄だそうです。地元作家である通畠義信氏の作品を紹介することにより、「現在に息づく『鉄の技』そして『鉄の芸術』を紹介したい」とのこと。
今ではなかなか目にすることのできない、氏の過去の作品が展示されますので、ぜひ、この機会に『鉄の芸術』をお楽しみください!!

出水市歴史民俗資料館
住所: 〒899-0205 鹿児島県出水市本町3−14
電話:0996-63-0256

「ららら科學の子」矢作俊彦

出版社: 文春文庫(2006年10月)
第17回(2004年) 三島由紀夫賞受賞

タイトルの“ららら科學の子”は、ご存知「鉄腕アトム」のテーマソングのワンフレーズですが、このタイトルからは想像しにくい内容の作品です。

1968年、20歳だった主人公は学生運動による殺人未遂に問われ、中国に密航した。文化大革命、下放を経て30年ぶりに帰国した彼は、まるで浦島太郎。未来にタイムスリップしたかのような現在の日本を、違和感を持って見つめる。
彼が変えたいと思った30年前の日本と、30年間過ごした中国の生活と、50歳となった現在の自分への想いが交錯する中、幼くして別れた妹の行方を探す、といったストーリー。
1960年代の空気を知っている者にとっては、当時と現在を引き比べ、ノスタルジックな気分にさせられる1冊です。

著者の矢作俊彦(やはぎとしひこ)は1950年生まれというから、全共闘、文化大革命、天安門事件など、まさしく著者自身のリアルな時代感覚で書かれている作品だろうと思います。そして50歳という年齢に対する想いもまた。

実は、私が矢作俊彦の本を読むのは、これで3冊目です。
そして、すんなりスムーズに読み終えたのは、この作品だけ。

最初に読んだ「THE WRONG GOODBYE―ロング・グッドバイ 」(角川文庫 /2007年)は、私好みのハードボイルドタッチであるにも関わらず、なかなかページを読み進めることができなかった。
矢作ワールドに不慣れだったせいもあるけど、舞台が横須賀中心で、基地との関わりや街の背景にある程度知識が必要で、知識も土地勘もない私には、ちょっと入り込みにくいところがありました。
途中で何度も他の本に心を移し、それを読み終わると「THE WRONG GOODBYE」に戻って続きを読み、登山のように重い足取りで半年くらいかけて最終ページにたどり着きました。
読むのを完全に放棄しなかったのは、主人公である神奈川県警の刑事・二村永爾が魅力的だったのと、物語の結末が知りたかったから。しかし、あまりに時間をかけ過ぎたため、少々疲労感が残った作品でした。

2冊目は「あ・じゃ・ぱん!(上・下)」 (角川文庫/2009年) (第8回(1998年) Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞)
第二次世界大戦後、日本はベルリンのように東西を隔てる壁によって、東日本と西日本に分断される。東日本は東京を首都とする共産主義国家。西日本は大阪を首都とする資本主義国家で標準語は関西弁という、大阪市長が読んだら喜びそうな設定です。
戦後日本の壮大な歴史パロディ。
これは面白そう!と上下まとめ買いしたのが、8ヶ月以上前の話。
この本もスルスルとは読むことができず、ようやく上巻の三分の二程度まで来ましたが、これ以上読み進めることが億劫になり、ついにギブアップ。
歴史パロディだからオリジナルの歴史を正確に知らなければ、偽歴史の面白さが分かりません。いえ、昭和史など知らなくても、ただ矢作ワールドを楽しめばいいのかも知れませんが、実在の人物や実際に起こった歴史的事件と偽歴史が混合されているので、読んでいるうちに微妙な部分で事実か虚構か判別がつかないところが、私にはちょっと面倒な気分でした。
歴史だけでなく、いろんな文学の引用、というかパロディも散りばめられているらしいので、戦後の日本史に詳しい人、文学作品を多く読んでいる人には、きっと楽しめる作品だろうなあと思います。

それにしても「THE WRONG GOODBYE」に疲れ、「あ・じゃ・ぱん!」でギブアップしながらも、私は何故懲りずに3冊目を買ってしまったのか?
自分でも分かりません。
でも、いずれまた矢作作品に手を出してしまいそうな予感がしています。