現代詩花椿賞「永遠に来ないバス」小池昌代


もうじき家を引っ越すことになり、毎日が仕分け作業です。
家具はたいして多くないけど、こちゃこちゃ細かい雑多なもので家中が構成されており、それらの全ての品々になにがしかの思い出があり、「いる、いらない作業」はスムーズにはいきません。

そして誰でも経験あることだと思いますが、本や雑誌の整理など始めるとついつい読みふけって、作業は中断。すっかり辺りが暗くなっても読書に夢中になっちゃたりして。

古い雑誌と雑誌の間に「花椿」が2冊挟まっていました。
「花椿」とは資生堂が発行している40ページほどの小冊子です。資生堂のwebサイトによると創刊は1937(昭和12)年!だそうです。

創刊以来、写真やグラフィック等のビジュアルはもちろん、エッセイや小説等の読み物を通して、ひとがこころ豊かに、美しく生きるためのヒントをお届けしてきました。
2007(平成19)年7月号の創刊70周年を機に、「美」と「知」をさらに深く追求するとともに、読者からの「もっと見たい」「もっと読みたい」という声に応えて、リニューアルを行いました。
奇数月号にはファッション、ビューティー、アート、カルチャーなどの情報をカラフルなビジュアルで見せる『みる花椿』を、偶数月号には小説、批評、コラムなどさまざまな読み物を中心とした『よむ花椿』を交互に発行しています。(資生堂のwebサイトから)

以前は化粧品店の店頭に積まれて置いてあり、ご自由にお取りください、って感じだったので、化粧品は買わないくせに「花椿」を見つけると必ず持って帰っていました。
表紙から最後のページまで、美しい写真やイラストで見せる、読ませる、おしゃれ情報満載。しかも著名人の文章も掲載されていて、これがフリーペーパーとは驚きです!
まあ、でも実際は無料ではありません。ちゃんと値段があります。手元にある1997年№570号には定価100円(税込)と表示されています。
100円でも安過ぎますが、販売促進グッズ扱いなんでしょうね。今はどうなんでしょう?今もタダでもらえるものなのでしょうか。化粧品店に縁遠くなったせいか、歩いていて「花椿」を見かけるってことがなくなりました。

さて、本題。
1997年№570号の「花椿」は第15回現代詩花椿賞の発表号でした。
この冊子をいらないボックスに入れる前に、受賞作品『永遠に来ないバス』(小池昌代)を転載しておきます。

永遠に来ないバス
小池昌代

朝、バスを待っていた
つつじが咲いている
都営バスはなかなか来ないのだ
三人、四人と待つひとが増えていく
五月のバスはなかなか来ないのだ
首をかなたへ一様に折り曲げて
四人、五人、八時二〇分
するとようやくやってくるだろう
橋の向こうからみどりのきれはしが
どんどんふくらんでバスになって走ってくる
待ち続けたきつい目をほっとほどいて
五人、六人が停留所へ寄る
六人、七人、首をたれて乗車する
待ち続けたものが来ることはふしぎだ
来ないものを待つことがわたしの仕事だから
乗車したあとにふと気がつくのだ
歩み寄らずに乗り遅れた女が
停留所で、まだ一人、待っているだろう
橋の向こうからせり上がってくる
それは、いつか、希望のようなものだった
泥のついたスカートが風にまくれあがり
見送るうちに陽は曇ったり晴れたり
そして今日の朝も空に向かって
埃っぽい町の煙突はのび
そこからひきさかれて
ただ、明るい次の駅に
わたしたちが
おとなしく
はこばれていく

 

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現代詩花椿賞「永遠に来ないバス」小池昌代」への2件のフィードバック

  1. atcon

    あの大工のおじさんに不動産屋さんを紹介してもらって、実家から半径4km以内に見つけてもらいました。10月中旬に引っ越しする予定です。詳細はいずれ。

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