エスカレーター恐怖症だった頃の話

2024年11月12日   コメントを残す

エスカレーター恐怖症

もう10年以上前のことです。

夫が亡くなる3ヵ月くらい前だっただろうか。
ある日突然、何の前触れもなく私はエスカレーター恐怖症になった。

エスカレーターの前に来ると恐怖に駆られ、動悸が激しく脂汗をかき、足がすくむようになった。
ちょっと前までは普通に乗れていたエスカレーターを前にして、たったの一歩が踏み出せなくなった。
最初は上りのエスカレーターだけだった。上りのエスカレーターがまるで切り立った急な崖のように思えた。
そのうち下りも乗れなくなった。下りは深い谷底を覗き込むようで恐ろしかった。

エスカレーターに乗れなくても階段やエレベーターを使えば、特に生活に支障はない。
たぶん社会生活では、エスカレーターよりエレベーターに乗れないことの方がずっと困るはずだ。
時々、エスカレーターの前で頑張って乗ろうとして足がすくんで動けなくなっている私を、奇異な目で見て通る人がいるくらいで、さして問題はなかった。

しだいにエスカレーターを避けるようになって1年半ほど経った頃、用事があって福岡に行った。繁華街にある大きな商業施設で人波に押し流されるまま、うっかりエスカレーターに乗ってしまった。
それは鹿児島では見たことのない恐ろしく長いエスカレーターだった。
足がすくみ激しい動悸にしゃがみ込みたい衝動に襲われる。脂汗をかきながら両手で手摺りにしがみつき「私が不安症なだけなのだ。みんな平気で乗っているのだから。大丈夫だから。」と自分に言い聞かせ恐怖と闘った。足元だけを見るようにして、何とか最後まで乗り切った。というか途中で逃げられない状況だからこその恐怖なのだが、、、
しかし、それが荒療治になったのか、その後だんだんエスカレーターに乗れるようになった。

限局性恐怖症

「エスカレーター恐怖症」で検索したら、MSDマニュアル家庭版というサイトに『限局性恐怖症』として詳しい解説があった。動物恐怖症や高所恐怖症、雷鳴恐怖症など割と多いらしい。
私の症状は全く下記に書かれている通りのものだった。

限局性恐怖症とは、特定の状況、環境、または対象に対して、非現実的で激しい不安や恐怖感が持続する状態です。

恐怖症によって不安が引き起こされ、特定の活動や状況を避けるようになるため、日常生活に支障をきたすことがあります。
通常は症状から明らかに診断がつきます。治療は通常、曝露療法を行います。

限局性恐怖症がある人ではしばしば2つ以上の恐怖症が認められます。限局性恐怖症がある人は、不安や恐怖感を引き起こしそうな特定の状況や対象を避けるか、多大な苦痛を感じながらその状態に耐え、ときにパニック発作を起こすことがあります。しかし、そうした不安が過剰であるという自覚があり、自分に何らかの問題があることは気づいています。

    限局性恐怖症

今は乗れなかった日々のことが嘘のように、平気でエスカレーターを利用している。
上りのエスカレーターの前に立ち、何故あの頃これが急な崖のように見えたのだろうかと不思議に思ったりする。
目に見えない不安が物理的な現象を引き起こす、人間の不思議さ。

私の友人には、ある日突然、他人の前になると手が震えて文字が書けなくなってしまった人がいる。
政治家か誰かが宣誓書に署名をする手が震えていた、という映像をテレビで観たのがきっかけだったという。
彼女が携帯を買い替えに行きたいと言うので付き合って、手続きを代筆した。私よりもずっと大変な恐怖症を抱えているんだなあと思った。

今でも、両手を下げてエスカレーターの真ん中に立っている人を見ると、すごいなあと憧れの目で見る。まるで何の不安もない人のようにも思える。
でもひょっとしたら、その人はヘビ恐怖症かも知れない。あるいは雷鳴恐怖症かも知れない。
恐怖症は外からは見えないものなのだ。

『クリスマスシーズンのハンドクラフト4人展』のお知らせ

2024年11月03日   2件の返信

Xmasシーズンのハンドクラフト四人展

令和6年11月24日(日)~12月1日(日)
場所:「我が家de個展 ギャラリーときどき」にて

※画像をクリックすると拡大します。再度クリックで元に戻ります。

2年半ぶりの「我が家展」、楽しみです。

四人展のお知らせハガキをデータで頂いて、すぐさまアップしてしまいました。
でも、クリスマスまであと1ヵ月半余りもありようで、、、、ちょっとフライング気味でした。クリスマスが近づいたら再度アップします。

ピンタレストで流れてきた、ちょっと温まった画像13選

2024年10月22日   2件の返信

イラストACにイラスト投稿を始めてから、画像コレクションサービスサイト「Pinterest」を眺めて刺激を受けることが多くなりました。
たいていはお洒落なイラストや写真をひたすら眺めて、気に入った画像をコレクションしていますが、たまに、クスっと笑えるなあ~とか、上手いこと言うなあ~的な言葉センスの画像が流れてくると、ちょっと心が温まります。
私がピン止めした画像13選を紹介します。笑いのツボは人それぞれですが、自分のツボが分かるのも面白いです。

      ※画像をクリックすると拡大します。再度クリックで元に戻ります。

https://jp.pinterest.com/pin/592786369710733112/

切ない親心をささやく陰の声は、たぶんこの子に届かないだろうけど、、、じんわり沁みる画像です。

https://jp.pinterest.com/pin/592786369737646904/

上の画像とは比べものにならない、見ているだけで肩の力が抜ける画力(?)に惹きつけられます。

https://jp.pinterest.com/pin/592786369737670262/

「帰宅部」のポスターはいろんな種類の画像が流れて来ます。
中でも気に入っているのがこれです。
ヒトの帰る場所は、何と言っても生命誕生の海。さすが、2009年度全国大会準優勝の実力です。

https://jp.pinterest.com/pin/592786369711733302/

なんと説得力のあるポップでしょう。
「後悔はしていられません。
悔やんでいる間にも、賞味期限はせまってくるのだから」って。
人生の賞味期限についても考えてしまうこの頃です。

https://jp.pinterest.com/pin/592786369737694051/

そうきたか!って思わず笑っちゃいました。

https://jp.pinterest.com/pin/592786369737706401/

この寝起き顔の可愛いさといったら!愛おしい。

https://jp.pinterest.com/pin/592786369711921239/

朝起きの苦手な私には、ただただ共感しかないフレーズ。

https://jp.pinterest.com/pin/592786369710732160/

ピュアなヒヨコさんの後ろ姿を見たら、フライド・チキンも焼き鳥も大好きな者として、なんとも申し訳ない、、、、

https://jp.pinterest.com/pin/592786369684920424/

優しい上司と理解力抜群の部下。いいなあ。

https://jp.pinterest.com/pin/592786369682791385/

「生きる」について、なるほど!って納得のラインナップです。
最後の「役所」がリアルで怖い。

https://jp.pinterest.com/pin/592786369682791419/

以前、テレビアニメ「秘密結社鷹の爪」を好きでよく見ていたので、すごく共感できる考察です。

https://jp.pinterest.com/pin/592786369737707285/

こういう人になりたかった。

「猫を抱いて象と泳ぐ/小川洋子」少年の奇妙な人生を読む

2024年08月19日   コメントを残す

「猫を抱いて象と泳ぐ」

著者:小川 洋子
発行:2011年 文春文庫

数ヶ月前TTさんから、「狂気を感じる作品を書く作家」としておすすめされたのが、著者、小川洋子さんです。
私は遠い昔『博士の愛した数式』を1冊読んだきりだと話すと、「それ以後の作品で、、まずは短編集が読み易いかも」と教えていただき、さっそくAmazonに出向き本書を購入しました。

『猫を抱いて象と泳ぐ』というミステリアスなタイトルと表紙に惹かれ、いわゆるジャケ買いをしたので、本が届いて初めて本書が短編集ではないことに気づきました。まずは短編から、と勧められていたのに、、、400ページ近い長編小説を手にし、これはハードルが高過ぎやしないか?と心配しましたが、大丈夫でした。淡々とした語り口ながら繊細な描写で読み易く、まったく予測のつかない奇妙な物語にスルリと惹きこまれていきました。

デパートの屋上で飼われていた象のインディラは、大きくなり過ぎて永久に空中に取り残された。
うっかり壁と壁の隙間に挟まった少女は、隙間から出られなくなりミイラになってしまった。
廃車となった回送バスに住むマスターは太り過ぎて、最後はバスの乗降口から出ることができなかった。
「大きくなること、それは悲劇である」と知った少年は、大きくなることを恐れ、11歳の身体のまま成長を止めてしまう。そしてチェス盤の下に身を屈めてチェスを指し続ける。美しい駒の動きで美しい詩のような棋譜を生み出すために。

などなど常軌を逸したエピソードの数々がとても静かなトーンで、当たり前のことのように語られていて、何だか異世界の住人たちの物語のようにも感じられます。
チェスは知らなくてもチェス盤のあの白黒の格子模様を思い浮かべることができれば、その世界観を味わうことができる物語です。

本書を読んで思い出したのですが、私は子どもの頃(たぶん小学生の頃)大きくなることの恐怖を、夢で繰り返し見たことがあります。
夢の中で一個の物がどんどん大きく膨らんでいって、それは平仮名の「あ」だったり漢字とか図形だったり。夢の中の画面いっぱいに膨らんで、自分の内側から押しつぶされそうになる感じとでもいうか。
一時期、繰り返し見て、とても怖かった。忘れられない夢の一つです。もしかしたら成長期の子どもが見る夢あるある、なのか?それとも勉強への恐怖だったのか?今となっては分からない。


「動き出す浮世絵展」プロジェクションマッピングありの体験型アート

2024年08月13日   コメントを残す

今、黎明館で開催されている「動きだす浮世絵展」観てきました。

「動き出す浮世絵展」

2024.7.19-9.1 9:00-18:00 黎明館にて

「動き出す浮世絵展鹿児島」:https://www.ukiyoeimmersiveart.com/kagoshima

江戸時代の風俗画「浮世絵」。
葛飾北斎、歌川国芳、歌川広重、喜多川歌麿、東洲斎写楽、歌川国貞など、名を知られた浮世絵師の作品300点以上をもとに、3DCGアニメーションやプロジェクションマッピングを駆使して現代アートとして作り上げた展覧会となっています。
名古屋・ミラノ・鹿児島の3箇所のみで開催!貴重過ぎる。

プロジェクションマッピングの部屋では全身に浮世絵を浴びることもできて、なかなか楽しいです。
9月1日まで開催していますので、夏休みの子供たちにお勧めしたい屋内イベントです。
嬉しいことに会場内は全て写真・動画の撮影がOKです。

8月21日、29日にはミュージアムトークも開催されるようです。(https://events.mbc.co.jp/#about参照

江戸時代「絵師」と呼ばれた風俗画アーティストたちですが、最近は漫画やアニメ、ゲーム、ライトノベルなどのイラストを描く人たちのことも「絵師」と呼んだりしますね。

江戸時代の「浮世絵」も現代の漫画やアニメなども、日本独特のポップカルチャーとして日本のみならず海外の人たちをも魅了しつづけています。そんなことをふっと思って嬉しくなったイベントでした。