「古来稀なる二人展」お邪魔しました。

皮革染色の山田利喜子さんと、藍染布の末吉昌子さんの「二人展」にお邪魔しました。

中学同級生のお二人が、時を経て再会。革と布、扱う素材は異なりますが、「染め」繋がりで二人展をしましょう、ということになったそうです。

山田利喜子さんの作品は、革のバッグ、着物地と皮のパッチワークの巾着、ベレー帽、ランプシェード、レザー タペストリー、そのほか茶筒などの小物と多種多様。

末吉昌子さんは藍染めの大きなタペストリーを中心に、紬や絣のパッチワーク、刺し子のコースター、オブジェなど。

藍色、紺青色、空色、、、見ているだけで心が落ち着く色です。

「古来稀なる二人展」
2022.4.24(日)~5.1.(日)まで 11:00~17:30

於:「ギャラリーときどき」

「人新世の『資本論』/斎藤幸平」80%読んでからの読書感想

人新世の「資本論」(ひとしんせいの しほんろん)

著者:斎藤幸平
発行:集英社新書/2020年
‎ 新書:384ページ

「新書大賞2021」受賞作

日本は経済大国第3位

日本は経済大国と言われています。

2021年の名目GDP(国内総生産)は世界第3位だったらしい。(「【2021年】最新世界GDP(国内総生産)ランキング 2050年の予測も紹介」参照)

世界第3位の経済大国!と言われてもなんか実感が湧かない。

名目GDPを人口で割った一人当たりの名目GDPで見ると、日本は世界第25位。
生産性の低い働き方で、65歳以上の高齢者も動員して、隠居なんかしようと思うな、身体が動く限り働け、年金を当てにするんじゃない、という掛け声の下に総出で働いて、世界第3位の経済大国です。

年金が当てにならなくても、NISA(ニーサ)がある。iDeCo(イデコ)がある。これで老後は安心。とか言っている政府。いったい誰に向けて言っているのでしょう。昨年、最低賃金がやっと時給821円になった鹿児島市民の身にもなって欲しい。

という市民感情を抱えつつ、話題の本『人新世の「資本論」』を購入しました。
本書は、2021年に新書大賞第1位に選ばれた経済書。それが35歳の若き哲学者が書いたということでも話題になりました。新書としては異例の売り上げとなっているそうです。
私も「哲学者が書いた経済書」という組み合わせに惹かれました。

読み始めたのは昨年の秋頃だったか、、、、
前半はグイグイ読んでいたのだけど、後半からちょっと読むスピードが鈍って年を越し、ついに4月。280ページ目から後書きのページにワープして、全体の80%ほど読んだところで勝手ながら読了としました。

『人新世の「資本論」』を読んで

本書前半部分、資本主義と地球環境問題との関連性を事細かく深く掘り下げているところは、共感を持って読み進みました。

「世界の富裕層トップ10%が排出する二酸化炭素は、その「裕福な生活様式」によって全排出量の半分を占めている」こと。
「先進国」と呼ばれる国が、「どこか遠く」の人々や自然環境に負荷を転嫁し、豊かな生活のため経済成長を続けていること。
「どこか遠く」の国では、資源と労働力を収奪され人々が貧困の中にいること。
二酸化炭素排出量は増大し続けているし、気候変動の深刻さも先送りしてはいけない。
知らなければいけない問題がたくさんあります。
でも、レジ袋を削減して温暖化対策をしていると思い込むことで、現実の危機から目を背けている私たちがいる。

「経済成長を支えてきた大量生産・大量消費そのものを根本的に見直さなくてはならない。」と著者はいいます。そのためには、資本主義に代わる新しい社会システムをつくるべきだと。
地球環境問題は、個人で取り組めば何とかなるというレベルのものではなくなっているのです。

本書の後半には、著者が考えるポスト資本主義の世界観が具体的に書かれているのですが、ここは読む人によって意見が分かれるところかもしれません。

著者が提唱する「脱成長コミュニズム」という社会。
電力や水道や教育、医療、インターネット、あらゆる生産手段そのものを「<市民>営化」する。
社長や株主の「私有」でなく「国営企業」でもなく労働者たち自身による「社会的所有」とする。
市場にも、国家にも依存しない形で、お互いに共同管理のネットワークを広げていくプラットフォームを作る。
過剰な生産はしない、脱成長で地球環境を守っていく、というものです。

著者は「脱成長コミュニズム」社会で人は、自分らしく働ける、安定した豊かな生活と人間らしい自由時間を手に入れることができる、持続可能で公正な社会が実現できるーーと言います。
あまりにもユートピアとして語り過ぎではないでしょうか。何だか、ニュータウン入居者募集のパンフレットを見ているようで、逆に懐疑的になってしまいます。ま、私がひねくれ過ぎかもしれないし、どんな新しいシステムもやってみなければ分からないことではありますが、、、

ともあれ、本書は、先送りできない地球と世界の問題を提示していて、このままの社会システムを続けていていいのか?と問いかけてくる一冊であることは間違いないです。

余談ですが、

世界の超富裕層1%、資産の37%独占 コロナで格差拡大(日本経済新聞 参照)を読むと、世界の上位1%の超富裕層の資産は2021年、世界全体の個人資産の37.8%を占めるまでになったらしいです。

世界の1%、、、、ざっと計算して約7,875万人。結構いますね。


「古来稀なる二人展」開催のお知らせ

「古来稀なる二人展」

2022.4.24(日)~5.1.(日) 11:00~17:30

久々に「ギャラリーときどき」で個展開催のお知らせです。
皮革染色工芸の山田利喜子さんと藍染布の末吉昌子さんの二人展。
お二人は中学生の時の同級生だそうです。
展覧会名は「フルキマレナルフタリテン」って読むのでしょうか?いや、素直に「コキマレナルフタリテン」かな?
お邪魔した時に答えを聞いてみたいと思います。

量子コンピュータ、興味ありますか?おすすめの理系YouTube

以前、読んだサイモン・シンの「暗号解読(上・下)」の最終章に、
「量子コンピュータが実用化されれば、今使っている暗号は難なく破られ、新たな量子暗号を開発する必要があるだろう」
と書かれていて、量子コンピュータって何?いや、その前に量子って何?と関心を持ちました。
ブックオフにて学者によって書かれた新書を入手し読んでみましたが、まったく文章が頭に入ってこず、途中で投げ出していつしか7年経ちました。

最近ネットで、量子コンピュータ関連の記事を目にすることが多くなっています。2030年代には実用化されるとか、現在私たちがPCで使っているRSA暗号は使えなくなる、とか。
そうなると、どうなるの?

暗号については提供するサーバー側の問題だから、末端のユーザーである私が心配する必要はないですよね?とは思けど、古い技術から新しい技術に移行する際には、予想してないような混乱が起きるものだし、便乗詐欺も横行するかも。10年なんてもうすぐそこ、って感じがする。
この際「量子コンピュータ」「量子」について学んでみたいと、YouTubeであれこれ視聴して聴き比べてみました。
その結果、まったく理系に疎い私が面白いと思った動画を下記に紹介します。

エンタメとしても楽しめる理系YouTube

20分弱にコンパクトでテンポよくまとめていて、耳に入りやすい動画でした。視聴している側が疑問に感じるところもちゃんと抑えていて、とても丁寧に作られているなあと思います。
まずはざっくり理解してから、分からない部分は別の動画を探してみる、といった感じで理解を深めていきたいものです。
とりあえずは、量子コンピュータを使って便利な社会が作られるまでに、まだまだ数十年はかかりそうな感じですね。

私のように数学も苦手だと、数字とか計算とか、ほんっとに「嫌いだーーー!!」と叫びたくなるRSA暗号の仕組みが紹介されています。
おっしーの最先端テクノロジー and サイエンス」に上がっている動画は、どれも興味深いタイトルばかりで、私が疑問に思っていたことにぴったり刺さるというか、ついつい夢中になって全部見てしまいました。
たいていの動画は10分程度にまとめられています。


こちらも10分~30分程度にまとめられています。物理に特化したコンテンツですが、「難しい理論や方程式が理解できなくても物理は楽しい!」をコンセプトにされていて、数式はあまり出てきません。
物理の話を楽しそうに話すのもとさんのキャラクターのおかげで、聴いているこちらも楽しく聴けます。
物事を知らない人にも分かるように教えることができて、しかも楽しませることができる人って凄いなあって思います。
学校の先生が皆こんな感じだったらなあ、、、、、、、。
いやいや、高校や大学の受験を目標に授業していた先生たちに言わせれば、「出来の悪い生徒を楽しませる余裕はないよ!」「数式も必要だから覚えろ!」って感じかもしれませんが。

量子コンピュータ研究者のYouTube

本格的にがっつり勉強したい、数式が出てきても平気という人には、大阪大学基礎工学研究科 藤井研究室の配信動画がおすすめです。おそらく本気の人は既にこういう動画を観ていると思いますが。

「量子コンピューティング」2回~14回の配信は、私にとっては、数式、方程式、使ったことのない単位、耳慣れない用語などで構成されている動画でしかなく、、、。なので第2回を聞き流しただけで継続視聴を諦めました。
この配信を14回まで完全視聴できて理解できる人、きっとそういう人たちに人類の未来は託されているんだろうなあ、なんてことを思わずにはいられませんでした。

前編・中編・後編の3部構成になっている「阪大教授が解説する量子力学と量子コンピュータ」は、図解入りで比較的分かり易く、一般人向けの動画になっています。
自宅で手作りできる量子干渉実験装置の作り方なども紹介されています。


以上、量子コンピュータ関連のYouTubeサイトを3つ紹介しました。
実際はもっとたくさんのサイトを視聴したのですが、いくら数多く視聴してみても、「量子の重ね合わせ」って何とも理解しにくくて、もやもやが残ります。
「量子の重ね合わせ」は見えないところで起こっていて、観測すると消えちゃう。
誰も見たことないけど、実験の結果から「量子の重ね合わせ」が在ると分かっている。
量子は「粒子でもあり波動でもある」と考える人もいれば、「粒子でも波でもない何かである」と考える人もいて、実のところよくは分かっていない。
とにかく量子とはそういうもんだと受け容れてください、ということなので受け入れるしかないのですが、、、そんなもやもやした量子で私たち人間も、世界も造られているって話ですね。

「線は、僕を描く/砥上裕將」私の知らない水墨画の世界

「線は、僕を描く」

著 者: 砥上 裕將 (とがみ ひろまさ)
出版社 ‏ : ‎ 講談社
発売日 ‏ : ‎ 2019/6/27
単行本 ‏ : ‎ 322ページ

第59回メフィスト賞受賞
2020年本屋大賞第3位!
「ブランチBOOK大賞2019」受賞!
「未来屋小説大賞」第3位
「キノベス!2020」第6位

先月、姉から薦められて読んだ本です。
メディアで話題になったということで、図書館でも貸し出し中が続いていて、年明けにようやく借りることができました。

著者の砥上 裕將(とがみひろまさ)さんは、1984年生まれの水墨画家。
水墨画の絵師さんが書いた小説というのは、とても珍しい。というより、水墨画というジャンル自体、現代では馴染みが薄いように思います。
ウィキペディアによると日本における水墨画の全盛期は室町時代だったらしい。全盛期は過ぎたとはいえ、現在に至るまでその技術・技法は伝統文化として継承されているようです。
私は美術の教科書で目にした程度の知識しかなく、学校で習った覚えもないので、未知の世界への好奇心を持って読み始めました。

粗方のストーリーを書くと、

主人公の青山霜介は高校生の頃事故で両親を亡くし、突然独りぼっちになってしまった。それ以来、大学生になった今も自分の心の内側にガラスの部屋を創りあげ、その中に自身を閉じ込めている。
ある日偶々水墨画の大家篠田湖山と出会い、半ば強引に弟子にさせられてしまう。そうして水墨画の修行が始まり、虚無の中にいた彼の生活が少しずつ変化していく。

といったところ。表現することで喪失感から立ち直っていく再生の物語という、どちらかというとありがちな構図なのですが、本書の読みどころはそこではない。
いや、そこだよ!っていう感想の声も多いと思いますが、私は絵師による指導と修練、その丁寧な描写に惹きこまれました。
いわば水墨画の指南書として、この本を読みました。

一本の線に水墨画特有の型があり、何度も何枚も描き続けてその技術・技法を習得していく。
一度描いてしまった線は消すことができない。描くスピードにも墨にも筆に含んだ水分にも、否応なしに左右されてしまう。
作品はいつだって下書き無しの一発勝負。「勇気がないと線なんて引けない」と言う。
一本の線を描くことさえどんなに難しいか、緊張感を持って伝わってくる。そんな水墨画の世界を描いた物語です。

講談社のウェブサイトに本書の紹介ページがあるので、興味のある方はそちらをご覧ください。水墨画に必要な道具や用語、著者からのメッセージなども掲載されています。

https://senboku.kodansha.co.jp/

実技の動画。必見です。

 instagram.com/yokotanji/

本書の表紙は、イラストレーター丹地陽子さんのイラストです。私はこの方のイラストも大好きで、時々インスタを覗いたりしています。